ポルノグラフィティ 岡野昭仁、新旧楽曲のカバーで魅せた“ボーカリスト”としての力 辻村有記と共作のソロ楽曲も披露

ポルノ岡野昭仁、“ボーカリスト”としての力

 岡野昭仁(ポルノグラフィティ)が4月11日、自身初の配信ライヴ『DISPATCHERS』を開催した。

 これは、岡野のソロプロジェクト「歌を抱えて、歩いていく」の一環として行われたもの。スペースシャワーTVと連携し、YouTubeなどで公開されている音楽番組『DISPATCHERS』をタイトルに冠したこの配信ライヴは、Twitterトレンドでも1位を獲得するなど大きな話題となった。本稿ではその模様をレポートする。

 配信開始時間になると、プライベートスタジオでカメラのスイッチをオンにし、配信画面の前に座る岡野の姿が。画面が切り替わると、東京キネマ倶楽部のステージが映し出される。アコースティックギターを手に、ルーパーを用いてリズムやギターリフ、コーラスを重ね、岡野ただひとりが鳴らした音だけを用いて披露したのは「ROLL」。ポルノグラフィティの名バラードを、原曲や普段のライブとは異なる新しい解釈、新しいアレンジで披露する。演奏が終わり、岡野が「『DISPATCHERS』! 始まりました! 楽しんでいきましょう!」とタイトルコール。有観客でのライヴさながらの熱量が画面越しにもビリビリと伝わってくる。

 MCでは、今回の配信ライブは非常にチャレンジングな取り組みであり、ライヴを終える頃には大きな成果を得られるのではないかと意気込む。2曲目に披露したのは「Zombies are standing out」。ポルノグラフィティではハードロックなアレンジで演奏される楽曲だが、アコースティックギターの弾き語りスタイルでは刹那的な感覚を覚える。制作時の裏話を経て披露した「愛なき…」では繰り返されるギターストロークが一層この曲の説得力を増幅させる。

 ポルノグラフィティのサポートミュージシャンとしてもゆかりのあるtasukuをステージに招き入れると、「ここからは日本の音楽シーンを辿れるようなカバー曲を」と語り、披露するのはKing Gnuの「白日」。思えば番組『DISPATCHERS』では、『King Gnu 井口理のオールナイトニッポン0(ZERO)』に岡野が乱入した模様を放送し大きな話題を呼んだ。その際に井口と共に披露した「アゲハ蝶」が記憶に新しいリスナーも多いだろうが、今回の「白日」で井口への「カバー返し」が叶った形に。続いて披露したのは藤井風の「優しさ」。King Gnuに続き、2021年の音楽シーンをときめく新世代のミュージシャン達の才能溢れる楽曲を真摯に受け止め、自身の活動に取り入れるミュージシャン・岡野昭仁のアンテナの張り方にただただ驚くばかりだ。

 一転して往年の名曲カバーとして披露したのは山崎まさよしの「One more time,One more chance」。以前岡野が『オールナイトニッポン』のパーソナリティを担当していた頃に恒例となっていた弾き語りでも披露していたこの曲。今回は岡野の弾き語りに寄り添うようにtasukuのギターが加わり、当時ラジオで披露したバージョンとはまた異なるサウンドに仕上がった。

 場面は転換し、陽が降りしきる野外に。満開の桜の下、岡野ひとりの弾き語りで披露されたのはスピッツの「空も飛べるはず」。飛ぶ鳥の鳴き声が微かに聞こえる中、岡野の力強さと繊細さを併せ持つ歌声が空に溶けていくように響く。さらに場所を変え、緑いっぱいの小路で披露されたのはポルノグラフィティ「Aokage」。岡野の故郷である広島・因島を想起させる淑やかなひと時が流れる。

 映像は一転して煌めく夜景を望む夜の渋谷へ。24年前に上京した頃を振り返りながら、浜田省吾、水谷公生、春嵐による音楽プロジェクト「Fairlife」に岡野が参加した楽曲「旅せよ若人」を披露。自身が上京したあの頃のように、すべてを投げ打っても飛び出してみよう、と岡野から新生活を迎える若人へのエールが渋谷の夜空に響く。玉置浩二とプライベートで食事をし、ワインを飲んだというエピソードトークから披露されたのは「ワインレッドの心」。玉置の歌に感銘を受けたと話しつつも、自身もそんな歌心のある歌を歌いたいという思いをひしひしと感じる、真紅の照明の中で情感たっぷりのパフォーマンスを届けてみせた。

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