JABBA DA FOOTBALL CLUB×NAOTO(ORANGE RANGE)対談 「*~アスタリスク~」で共有された時代を超えるメッセージ

JABBA DA FOOTBALL CLUB×NAOTO対談

 ラップグループ・JABBA DA FOOTBALL CLUB(以下、JABBA)がメジャー1stアルバム『JABBA DA FOOTBALL CLUB』を3月10日にリリースする。「*〜アスタリスク〜」(ORANGE RANGE) 、「全力少年」(スキマスイッチ)、「Funny Bunny」(the pillows)、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」(サンボマスター)のサンプリングカバーを含む本作は、JABBAのメンバーが青春時代から傾倒してきた音楽・カルチャーの影響が色濃く反映された作品となっている。

 リアルサウンドでは、JABBAのリーダー・NOLOVと、本作に収録された「*〜アスタリスク〜」のプロデュースを担当したNAOTO(ORANGE RANGE)の対談が実現。JABBAによる「*〜アスタリスク〜」の制作を軸に、お互いのグループ論、音楽観を語り合ってもらった。(森朋之)

「今になって『*〜アスタリスク〜』のメッセージがわかってきた」(NOLOV)

ーーまずはJABBA DA FOOTBALL CLUBとNAOTOさんの交流について教えてもらえますか?

NOLOV:デビューシングルのカップリング曲でNAOTOさんにリミックス(「i&i Remixed by naotohiroyama (ORANGE RANGE/delofamilia)」)をお願いしたんです。実現したらやべーなって思ってダメ元で。そしたら、快く受けてくださって! それで実際に初めてNAOTOさんとお会いしたのは、2019年の『FUJI ROCK FESTIVAL』です。ORANGE RANGEのライブが終わったあと、ばったりお会いしたのでご挨拶して。その時はNAOTOさんに「気合い入り過ぎてて、キツいね(笑)」って言われましたけど(笑)。

NAOTO:ハハハハ(笑)。

NOLOV:そのあと、ツアーにも遊びに行かせてもらいました。そんな流れもあって、今回のアルバムコンセプトを決めていくなかで、「1曲、NAOTOさんにプロデュースをお願いしたいです」と。

NAOTO:JABBAの存在はリミックスの依頼を受けたときに初めて知ったんですけど、過去の作品を聴いてみたらすごく僕が好きなタイプのアーティストで。ヒップホップやラップはもちろん好きだし、メンバーから滲み出る男の子っぽさというか、馬鹿加減というか……わかります(笑)?

NOLOV:ハハハハ!

NAOTO:そういう雰囲気って大切だと思っているんですよ。ORANGE RANGEにもそういう一面があるし、類は友を呼ぶというか(笑)。リミックスもそうだったし、今回のオファーも「ぜひ」という感じでした。

ーーなるほど。JABBAのメンバーは全員、ORANGE RANGEのファンだとか。

NOLOV:そうですね。僕は2コ上の兄貴に教えてもらいました。なんかちょっとエロくて! かっこよくて! ちょうどスニーカーを履きだした頃ですね。それまで“瞬足”だったのが「ちょっとオールスターとかスーパースター履いてみるべ」みたいな時期にORANGE RANGEを知りました。

ーー思春期の訪れとともにORANGE RANGEと出会ったと(笑)。今回「*〜アスタリスク〜」を選んだのはどうして?

NOLOV:自分たちの好き!って曲を選ぶと偏っちゃうし、多くの人に聴いてもらいたいと思ったので、JABBAチームで相談して決めました。何より「NAOTOさんと一緒に楽曲を制作する」ってことが一番大事でした。というのも、僕たちとても煮詰まっていて(笑)。「この曲は絶対にいい」と思った曲がことごとくリリースに至らなくて。作っても作っても抜けられないループに入り、どんどんどうしたらいいかわからなくなっていました。その状況を打破すべく、一流の人と一緒に作らせてもらうことで、自分たちに足りない所を感じたくて。本気で身を投じないと、実際にやってみないとわからないものがあると思うので。

ーープロデューサーとして「*〜アスタリスク〜」を一緒に作ってほしい、というオファーが来たとき、NAOTOさんはどう思いました?

NAOTO:JABBAの既存の曲のなかに「*〜アスタリスク〜」のような曲はなかったし、新しいことが出来るのはいいなと思いましたね。実際の制作は、プロデューサーという言い方が大袈裟なくらい、共同でやっていた感覚なんですよ。メンバーのみなさんに「思いついたことがあったら言ってください。アイデアがあればあるほど僕もやりやすいんで」という話をして。僕が作ったトラックにメンバーがラップを乗せて、それに触発されて音を調整したり。そんなキャッチボールを続けてるうちに完成しました。

ーー良い相乗効果が生まれたと。

NAOTO:はい。Aメロは4つ打ちなんですけど、それも普段、自分ではあまりやらないことなんですよ。楽曲の流れもきれいにつながって、「これはいいな」と。僕は結構流れをぶった切るタイプなんで(笑)。あとは、やはりメンバーのラップですね。「この人はこういう声なのか」というのがわかってくると、後ろの音も作りやすくなるというか。

NOLOV:すごく楽しくやり取りさせてもらいました。NAOTOさんから送られてきた音源に対して、「どう返すか?」をみんなで話し合って、ヴァースの順番を入れ替えたり。グループ内の音楽に関する会話も増えて。もはやセラピーに近い感じもありました(笑)。

*~アスタリスク~ - JABBA DA FOOTBALL CLUB

ーー「*〜アスタリスク〜」の制作を通して、メンバー同士の関係が変化した?

NOLOV:そうですね。今までは僕とBAOBABが中心になって曲を作っていたので、4人で音の話をすることは少なかったと思います。でも、「*〜アスタリスク〜」を作っていたときは、ROVINとJUQIも見たことがないようなパワーを出してきたんですよ。いやいや! もっと早く出してよ!って感じなんですけど(笑)。

NAOTO:(笑)。良かったです。せっかく一緒にやるんだったら、お互いに刺激があったほうがいいと思うんで。

ーーJABBAは4MC、ORENGE RANGEは3MCなので、理解できる部分も多かったのでは?

NAOTO:そうですね。自分たちの正攻法みたいなものを当てはめてみることもありました。JABBAのメンバーもすごくキャラが立っているので、それに沿って作るということが最優先だったんですよ。まずはキャラを掴むのが大事でした。ホントだったら一度飲みに行って話が出来たら良かったんですけど、いまはそれが難しいじゃないですか。なので曲を聴いたり、MVを観て、「この人はこういう感じかな」って想像してました。

NOLOV:それ、気になりますね(笑)。どんなふうに見えてたんですか?

NAOTO:ラスベガスで撮ってる「i&i」のMV、あるでしょ? あれを観て「NOLOVくんはおちゃらけた人かな」とか。

NOLOV:ハハハハ!

NAOTO:ムードメイカーであり、切り込み隊長でもある。ホテルの部屋のシーンとかを観たりして、そんな感じなのかなと(笑)。メンバー全員、ちゃんとキャラが立ってるし、それぞれのバックボーンやアイデンティティみたいなものを汲み取りながら作った方が楽しいですからね。

ーーJABBAのメンバーも、自分たちのキャラや良い部分を見つめ直すきっかけになったのでは?

NOLOV:そうですね。それぞれの良いところをどうラップに落とし込めばいいか、悩んでました。自分の得意なところ、みんなが「そこが良いよ」と言うところと、自分がやりたいことって、ちょっとズレてたりするんですよね。色々なものに影響を受けて、どうしても背伸びしちゃうというか。

ーーなるほど。

NOLOV:でも「*〜アスタリスク〜」のときは、全員がすげえ素直に良いところを出してきて。そんなの初めてだったんでする。デモのREC時点で、みんなのバースを一聴して素直に「めっちゃ良いね!」って。なおかつ、新しい可能性も感じて。短くリレーしていく構成ですけど、それぞれがMCとしての強さを発揮できていると思います。

ーーオリジナル曲ではなくて、全員が好きな「*〜アスタリスク〜」だったから、もともと持っているものを素直に発揮できたのかも。

NOLOV:それは間違いないですね。あと、今回の制作を通して、「*〜アスタリスク〜」という楽曲の捉え方も変わりました。ガキの頃はただ「カッコいい」だけだったんですけど、今になって曲のメッセージがわかってきたんですよね。「自分が自分のために必死に頑張る。どこがで見ている人が自然に勇気づけられる」というか。誰かを勇気づけようと頑張ってるわけではなく、自分のために頑張っている姿が、結果的に誰かの光になっているような。実際、ORANGE RANGEとJABBAの関係もそうだと思うんです。ORANGE RANGEは誰かのために音楽をやってきたんじゃなくて、その姿だったり、楽曲を聴いて、僕らは勝手に刺激を受けてきたので。

ーーそのことに気付いてから、音楽への向き合い方も変わった?

NOLOV:そうですね。ずっと「誰かのために何かやらなきゃ」という気持ちでしたけど、もっと自分のためにやっていいんだなって。その感覚を“星”に例えて楽曲にしてる「*〜アスタリスク〜」めちゃくちゃお洒落じゃね!?って思いました。

NAOTO:いまのコメント、ボーカル陣にも聞かせて答え合わせしたいです(笑)。

NOLOV:「*〜アスタリスク〜」はバンドを始めたかなり早い段階からあったんですよね?

NAOTO:そう、作ったのは高校生のときだから。

NOLOV:ですよね。こんな発想ができるなんて、どういう高校生だったんですか?

NAOTO:歌詞のことは詳しくわからないから、何とも言えないんだけど(笑)。僕自身は「あれもやりたい、これもやりたい」という感じでしたね。やりたいことが多すぎて、ちゃんと判断できていなかったというか。

NOLOV:その感じ、メンバーのみなさんとどうやって共有していたんですか?

NAOTO:そのとき自分としてはよくわかっていなかったけど、後々聞いてみると、だいぶ意識のズレがあったみたいです。「あのときはキツかったよ」って。こっちとしては「えっ、早く言ってよ」って感じだったけど(笑)。

NOLOV:なかなか言えないですよね…!

ーーORANGE RANGEにもいろんな時期があったと思いますが、メンバー間のバランスが上手く取れないこともあった?

NAOTO:よくありますよ、それは。1年に2回くらいあるかな。

NOLOV:そうなんですか?

NAOTO:うん。そのことについて話すこともあれば、話さないこともあって。5人いれば、細かいことを含めるといろいろありますからね。JABBAと一緒で、みんな個性的だし。

ーーバンドやグループで音楽を作るというのは、そういうものだと?

NAOTO:そうですね、少なくとも僕たちはそういったこともありますよね。

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