「I Love」インタビュー
ROVIN × Buddyが明かす、新曲「I Love」で曝け出した己の弱さとリスナーとのつながり「一文字も無駄なフロウなんてない」
JABBA DA FOOTBALL CLUBのROVINと、YouTubeチャンネル:アバンティーズのメンバー・そらであると共に、ラッパーとしても活動するBuddyのタッグによるROVIN × Buddy。今年2月リリースのEP『The Outer Worlds』に続いて、12月23日にシングル「I Love」を配信リリースした。
今年はこのタッグにKick a ShowとSam is Ohmを加えたユニット「B-Loved」でのリリースや、それぞれソロや別働ユニットでの活動も見せた二人だが、改めてタッグを組み生み出された「I Love」は、自尊心や自己愛、肯定といったポジティブで根本的なメッセージを丁寧に折り込み、普遍的なメッセージを通して「王道のグッドミュージック」への意思を感じさせる作品として完成した。
イレギュラーづくしの一年となった2020年に彼らはなぜ「王道」を打ち出したのか、その理由とは。(高木"JET"晋一郎)
ROVIN「ど真ん中を作るのはすごく大変なんです。誤魔化しがきかない」
ーーROVIN × Buddyのお二人には、2月にリリースされたEP『The Outer Worlds』の際にインタビューさせていただきましたが(ROVIN × Buddyが語る、コラボのきっかけとヒップホップシーンに対する思い)、その段階では、いまのようにインタビュー中にマスクが必須になる状況は想像もしていなくて。
ROVIN:ちょうど「あれ、大丈夫かな?」って思うタイミングでしたね。
ーーその意味でも、音楽活動自体が難しくなるような状況下で、このプロジェクトはどう動いていましたか?
ROVIN:ひたすら曲を作りまくってましたね。このタッグに加えて、Buddy、Kick a Show、Sam is Ohm、僕の4人でB-Lovedっていうユニットも作っていて。なにしろライブも出来ないし、本当にみんな暇になってしまったので、もう曲作るしかないね、ってことで毎週日曜日にスタジオに集まってひたすら曲作りしてました。
ーー毎週、Sam is Ohmのスタジオに集まって制作しているという話をインタビューでされていましたね(参照)。
ROVIN:まさにそれです。今回の「I Love」も、B-Lovedも、6月に出た俺のソロ(「Thinking about You feat. Kick a Show」)も、その流れの中で作ってますね。B-Lovedは最初は本当に遊び半分だったんですけど、10曲くらい作っていくうちに、「これちょっと、よくないか?」みたいな曲が何曲か生まれてきて、それで「ちゃんとパッケージした方が絶対いいよね」ってことで、B-Lovedとして『SPOT』をリリースしたり。だから曲を作って、気を紛らわしていた感じですね、ほんとに。
ーー創作に向かう心境ではなくなってしまったという人もいましたが、そうではなかったと。
ROVIN:逆に俺らはそうならないために曲を作っていた感じです。ライブも出来ないし、クラブにも行けない、そういう気持ちをどこに置けばいいのかわからなくて。だからもう曲を作るしかないぞって。
Buddy:だから、今年はほぼROVINくんと一緒にいた感じですね。
ROVIN:そうね、いたね。
Buddy:俺ら二人も、Kick a ShowもSam is Ohmも超フィジカル人間なんで、制作したらそれを出さないと我慢ならないんです、きっと。だから、4人ともすぐ目線が同じ方向に向いたっていうか。何も言わずとも。「これだね、俺ら」みたいな。
ROVIN:衝動的だったと思いますね、かなり。
Buddy:制作に関しても「理由」とかもあまりなかったですね。
ROVIN:Sam is Ohmのスタジオに行ったら誰かしらいて、「あ、いるんだ。じゃあやろっか」みたいな。もう4月からずっとその感じですね。
Buddy:娯楽に近い感じだったかも。ストレス発散でもあるしね。
ーー集まってゲームする、サッカーするみたいな感じが、音楽作るっていうところだったんですね。
ROVIN:あぁ、まさに!
ーーそしてその先に完成した「I Love」ですが、聴かせていただいた感触は、全てにおいての王道、誰が聴いてもいいと思うグッドミュージックを作るっていうのが一個の目標なのかなと。
ROVIN:そうですね、それは間違いないです。
Buddy:親切な曲が作れたよね。今年一年、色々あったから。それらを全部飲み込んじゃって、真正面から取り組んだというか。
ーー本当に「真正面」の曲ですね。どこにもてらいや斜に構えた部分がない。
Buddy:確かに。今年はとんでもなく曲作ったからこそ、この「I Love」ができたみたいなところもありますね。僕もソロで14,5曲作って、作りたい曲とかやりたい手法、エゴも含めてあらゆることをやった上で、小手先みたいなものを取っ払って、根幹を形にしようと思ったら「I Love」に行き着いたというか。
ROVIN:最初はEPで、『The Outer Worlds 2』みたいな形にしようと思ってたんですけど、いろいろあって、シングル一曲勝負になったんですね。その形だったら、どかんとど真ん中をやろうと。そのとき考えたのが、前回のEPに収録された「Have a Good Time」。あの曲は僕らを引っ張ってくれた曲だし、あれを機に全てがつながったと思うから、それを超えるものを作りたいなって。ただ、そのハードルはめちゃくちゃ上げないとな、とも思ったんですよね。それはトラックを作ってくれたJIGGさんにも相談して、ラップも、トラックも、伝えるメッセージも、二人のスタンスも、すべての強度を上げたかった。それこそB-Lovedや自分のソロだったり、生み出してきたものの集大成を、ど真ん中の形でここで見せなきゃ、やってる意味ないよなって。ただ、ど真ん中を作るのはすごく大変なんですよね。誤魔化しがきかないというか。奇をてらったことって、言い方は悪いですけどアイデアさえあれば簡単じゃないですか。でも逆にど真ん中ってなると、かなり覚悟がいるなって、作っていて思いました。
ーーテーマとしても自尊心の曲、肯定の曲、愛の曲、という王道のイメージですね。そこにたどり着いたのは?
Buddy:まず制作の最初の段階でROVINくんから手紙が来たんですよ。
ROVIN:そうだ(笑)。
Buddy:直筆で書かれた手紙が来て、それを読んで俺も感動してこの内容になったって部分は多分にありますね。それ読んでなかったら、もうちょっと強がった内容になっていた気はしています。
ROVIN:手紙ですからね、やばいですよね(笑)。でもこいつに対してはLINEやメールでは伝えられなかったというか。
Buddy:構成的にも、今回は難しいことを何一つしていないんですよね。技法としても語りかけるようなシンプルなラップにして。だから聴く人が聴いたら面白くないと思われるかもしれないけど、この曲にはこの温度のラップが一番伝わるのかなって。
ーー確かに、本当にオーソドックスを追求しているとも感じて。
Buddy:無駄なものも入れていないし、一文字も無駄なフロウなんてないですね。だからこの曲は「すっぴん」って感じです。
ーーそれは怖くなかった?
Buddy:自分の中で、自信が前回のEPの時よりもあったし、強くなれたのかなって。一年通して曲をたくさん作ってきて、その作った音楽が自分たちの中で納得いっていたし、もうなんでもできるっていう。ある程度のことはできるという確信があったから、すっぴんで行けたんだと思います。