声優 入野自由にとって“音楽”は自分自身を表現できる場 尾崎雄貴、向井太一、chelmicoら楽曲収めた『Life is…』に表れた感性

 向井太一とCELSIOR COUPEによる「Alive」は、鍵盤楽器とボーカルをメインにしたバラードではあるが、各楽器とボーカルにエコーがうまくかかっていることで立体性や奥行きを感じさせ、16分ないしは32分で刻まれるハイハットなどでリズムキープしていることで、ダルっとした印象を残さない聴きごたえを生んでいる。Kai Takahashiの楽曲とともに、2010年代のR&B〜ベッドルームポップの影響を強く感じさせる楽曲だ。

 女性作家陣に目を向けてみると、chelmico(Rachel、Mamiko)とESME MORIによる「M-9.10」が耳を打つ。押韻、ピッチアクセント、イントネーションがメロディラインの影響でかなり変わるchelmicoのフロウとライミングは、きっと入野も四苦八苦したはずだ。

 「音楽は自分自身として表現できる場ということがあるので、パーソナルなテーマをここに持ってきたっていうのもあります」(参考)と語る入野は、昨年自身が味わったつらい経験や、このコロナ禍という状況を経て、「触れた人がホッとできるような、優しい作品を作りたい」と思ったそうだ。

 そんな思いを作家陣と共有しつつ、入野自身も3曲の作詞を担当している(「確かにそうだ」「どうしようもなく辛い夜は」「優しさは誰のためにあるんだろう」)。いずれの3曲も聴き手に寄り添い、励ますような楽曲であるのは、彼が入野自由らしさを追求し続けてきたからこそではないだろうか。

 実は、今作にはギター中心のロックサウンドはほとんどなく、アタック感が強かったり、強烈に激しいエフェクトがかかったサウンドを中心にした楽曲がないのも特徴だ。おそらく彼のディスコグラフィ史上、もっとも聴き手を温かく迎え入れる作品となったに違いない。

 入野のライブを見た声優の畠中祐は、「これほどまでにレベルの高いアーティスティックなことを、先輩方はやっているんだと衝撃を受けました」と語っていたように(参考)、彼のパフォーマンスや活動には目を見張るものがある。コロナ禍の状況は年明け以降も続く見通しだが、そういった中でもチャレンジを試み、自身の嗜好性と感性を表現しようとする入野自由のさらなる活躍から目が離せない。

■草野虹
福島、いわき、ロックの育ち。『Belong Media』『MEETIA』や音楽ブログなど、様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中。
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