なぜ「A Thousand Miles」は再ヒットしたのか? 時代を先導するアーティストらにも影響与えた、色褪せない名曲の力
ヴァネッサ・カールトンの「A Thousand Miles」が今日本でリバイバルヒットしている。全米シングルチャートにて5位になったこの曲は、彼女の2002年のデビュー・シングルなので、18年の時を経ての再浮上となる。
リバイバルヒット自体は珍しくないが、復活の背景にはどんな理由があるのか。人為的に仕掛けられた、映画やテレビの大型タイアップがあるわけではない。背景には具体的に5つの要因があると分析されていて、このうちの3つがSNSに関係している。
ストリーミングの変遷を示すグラフを見ると、今年1月から上昇するポイントが5つ点在している。順番に見ていくと、
①都庁ビルに設置されたピアノで、男性が「A Thousand Miles」を演奏する動画が投稿され、120万回以上の再生数を記録
②ラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM/JFN系)で、シンガーソングライターのEveが受験生に贈る曲として紹介
③2014年9月に横浜アリーナで行われたONE OK ROCKのライブで、ボーカルのTakaが「今のところ、俺とRyotaが世界で一番好きな曲」として紹介しアコースティックカバーを披露。ファンが歌詞を付けて投稿したこのカバー映像が、現在までに再生回数が1380万回以上を記録
④音楽番組『Love music』(フジテレビ系)で、声優の蒼井翔太が「影響を受けた曲」として紹介
⑤TikTokにて「A Thousand Miles」の早回し音源を使った動画が人気となるなかで、一般から投稿された歌詞付のMVが24時間で再生100万回を突破する
この5番目のTikTokでのアクションが決定打となり、ストリーミング回数が急上昇。それらがきっかけとなり、日本独自企画アルバム『ピアノ・ソングス』のリリースが急遽決定したわけだが、今この曲に惹かれている人は、きっと2002年当時のヒットのことはあまり知らないだろう。私自身は、18年ぶりのリバイバルヒットに驚きつつも、久しぶりに「A Thousand Miles」を聴いて思うのは、全く色褪せていないということだ。その魅力は、どこにあるのだろうか。最新インタビューと、18年前のインタビューでの彼女の言葉を引用しながら、それを紐解いていきたい。
その前に気になるのはこのリバイバルヒットを本人がどう思っているかだ。
「A Thousand Miles」が日本でそんな状況になっているなんて、全然知らなかった!!驚きだわ。私が音楽をやっていて一番ワクワクするのは、誰かと歌を通してつながることなの。音楽というアーティスティックな表現で、人と通じ合うことこそが私の愛すること。だから、再注目されていると聞いて、とっても嬉しく思うわ」
この曲の魅力は、ひとつにイントロのまばゆい光のようなキラキラとしたピアノの響きがある。たった10秒足らずのイントロが鮮烈なインパクトをもたらし、聴く人を虜にする。ヒットした当時、22歳だった彼女は、この曲の誕生秘話をこう明かしている。
「イントロのピアノの部分は、ある日の午後、ほんの数十秒で出来てしまったんだけれど、それに続くメロディも、同じくらい良いものじゃないといけないと、自分で自分にプレッシャーをかけてしまったので、どこか怖さもあって、ずっと後回しにしていたの。でも、そろそろ書き上げないといけないと、ある晩に書き始めたら、すごく集中できたみたいで、1時間ほどで書けてしまったのよ。ただ、1年間放っておいたことで、完成までに1年なんて言われたりしているのよね」