緑黄色社会、信頼重ねた4人の新たな王道宣言 『CDTVライブ!ライブ!』披露「Mela!」が示した“大切な居場所”
そして7月13日、緑黄色社会は『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)に生出演してライブを行った。披露したのは「Mela!」。印象的な歌い出しやホーンを大胆に取り入れたアレンジなど、『SINGALONG』収録曲の中でも一際新しいチャレンジに満ちており、「開始2秒で心を掴む」と話した小林の言葉にも納得できる1曲である。公開されていたアニメーションMVのインパクトが強かっただけにどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、ワクワクしながらテレビの前で待った。
演奏の直前、長屋は「誰もが誰かのヒーローになれる。そんな気持ちを込めて」と語った。この曲には〈こんな僕も君のヒーローになりたいのさ〉という歌詞があるが、これは緑黄色社会らしさ満載のパンチラインだと感じた。〈ヒーローになりたいのさ〉の前に〈こんな僕も〉とつくところーー100%明るい風景を描こうとしても、どこか憂いのあるニュアンスが混じるのが緑黄色社会の楽曲に通底するものであり、それは誰もが持つ、日常の中で拭い去れない不安や孤独の表出でもある。一人で生きていける人なんていないし、心の奥底では誰もが誰かに頼っているからこそ、自分だって誰かのヒーローになれるはず。それを〈僕にちょっと預けてみては?〉と、差し出すように歌っているのが「Mela!」の素晴らしさだ。
まず、長屋とpeppeがアイコンタクトを取りながら、ピアノとボーカルが静かにフェードイン。間もなくして「ラララ」のコーラスに3名のホーン隊も加わり、華やかな雰囲気を纏いながら一気に演奏が加速していく。1番では緊張しているようにも見えた長屋だが、サビを歌い切ってメンバーとの手拍子を交えることで、少しずつリラックスした表情も覗かせ始めた。
中盤では小林のギターソロが光ったかと思えば、〈信じてばかりの僕と/信じることが怖い君と/どちらが正しいのかなんて/誰にも分からないさ〉のパートではpeppeのピアノだけで歌を美しく演出し、直後にヘビーな間奏へと展開して穴見の野太いベースラインも火を吹く。こうして聴くとかなり様々な要素を入れ込んだアレンジになっているのだが、それでも一切過剰に感じられないのは、その緩急自体が“味”になっているからであり、長屋の歌声が引けを取らないほどしっかり前に出ているからでもある。終盤に向けて長屋はさらに凛々しい表情へと変化。大サビでステージ上の8名の音がより強く一体になったところで、幸福感に包まれながら演奏が終了した。一筋縄ではいかない展開を有する楽曲だからこそ、たった4分の演奏を通して一段とバンドがたくましくなったように思えた。とても不思議で素晴らしい音楽体験であった。
ふとクレジットに目を落とすと、「Mela!」は4人によるコライト曲である。作詞は長屋と小林、作曲はpeppeと穴見。メンバー全員がクレジットされているのはアルバム内でこの曲だけだが、4人が知恵とアイデアを出し合って完成した楽曲に、〈どうしようもない衝動に駆られて/ほら気付けば手を握っている〉〈補い合えた暁には同じ夢を見たい〉と歌われているのはとても素敵なことだと思う。ただでさえあらゆることを一人で完結させられてしまう現代社会において、手を取り合って何かを成し遂げることの喜びと、信頼関係を育める仲間の大切さを感じられる「Mela!」。また、聴き手にとってそんな居場所のような存在であり続けたいという決意にも聴こえるし、ポップスの王道を突き進む緑黄色社会が、そこに対してメラメラと気持ちを滾らせているというのが頼もしい。“本当は一人じゃない”“素直であろう”“互いに違っていても手を取り合えば大丈夫”というのは、「想い人」「愛のかたち」「Brand New World」「冬の朝」などをはじめ、『SINGALONG』全体で歌われていたメッセージでもり、もっといえばバンドの歩みそのものでもある。今回の「Mela!」のパフォーマンスで、改めて実感できたリスナーも多いはずだ。
緑黄色社会はこれからも誰かにとってのヒーローであり、大切な存在になっていくことだろう。しかし、歩幅が違うからこそ互いに手を取って理解し合い、誠実な歌を届けようとする姿勢はきっと変わらない。まだまだ道の途中。歩み続けるリョクシャカから目が離せない。