CRYAMY、時速36km、osage......情感豊かなギターロックの新鋭たち ダイナミックなメロディと曲展開を分析

 インディーズバンド、というワードから、あなたはどんなサウンドや歌を連想するだろうか。きっと疾走感のあるメロディックなギターロックを想像する人もいるだろうし、ハイトーンで「甘さ」を全面に出した恋愛歌詞のギターロックを想像する人もいるだろう。そう。きっと多くの人は何かしらのギターロックを思い浮かべると思うし、実際のバンドを見ても、その枠組みに収まっていることが多い。ただし、ギターロックといってもいろんなタイプのバンドがいる。ギターの奏で方やその佇まいにより、バンドの個性や武器は大きく変わるのだ。この記事では、同じギターロックでも、荒々しいノイジーなギターサウンドと感傷的な日本語歌詞が大きな武器になっているようなバンドを取り上げてみたい。

CRYAMY

CRYAMY『#3』

 最初に取り上げたいのは、CRYAMY。ディストーションのかかったギターがずっしりと響くエモーショナルなバンドである。彼らの場合、メロディを歌うというよりも、叫び声も歌にしてしまう勢いがある。秩序のあるバンドサウンドに対してアンチテーゼ的であるCRYAMYは、荒々しさそのものを武器にしている強さがあるし、そういうものを武器にしているからこそ、彼らの歌には多大な情感が宿っているように思う。彼らの代表曲である「月面旅行」でも、“歌う”というよりも“咆哮“に近いようなパートが目立つ。感情を込めて想いを吐露するような歌い方に徹し、その想いにコミットしたような粗さが目立つギターで感情を表現する。また、彼らの楽曲の特徴として、そこまで歌のテンポが速くないところも挙げられる。落ち着いたテンポ感で歌が繰り出されるからこそ、言葉の部分にも脚光が当たるのであり、だからこそ情感の部分が際立ってくるのである。

【MV】月面旅行/ CRYAMY
【MV】物臭 / CRYAMY

時速36km

時速36km『最低のずっと手前の方で』

 次に紹介したいのは時速36kmというバンドだ。彼らもサウンドと歌声からはみ出ている情感の豊かさが大きなウリとなっているバンドである。ノイジーなギターサウンドや言葉の意味をきっちり追えるスピード感で展開される歌の流れ、そしてギターのサウンドとシンパシーを感じさせる表情豊かなボーカルが、彼らの持つ情感の豊かさを潤沢に映し出す。ただし音源を聴いていると、CRYAMYとは異なっている部分も多い。例えば、時速36kmの方が楽曲内のメロディ性は強い。しかし、歌から感じる迫力、いわゆる「エモさ」には通ずるものがある。ナイーブで繊細な日本語歌詞を情動を込めて歌ってみせることで、心のやわらかい部分に突き刺してくる感じが似ているように思うのだ。代表曲である「素晴らしい日々」を聴いても、それは明らかである。きっとこういうバンド音楽って、大多数の人間に共感されるような肌触りの良さはなく、クラスの一人か二人にしか響かなさそうな刺々しさがあるのだろうけれど、故に刺さる人にはどこまでも深く突き刺さってしまう鋭利さがあるのだと思う。両バンドとも、そういう鋭さを兼ね備えているという意味で、すごく似ているように感じるのである。

時速36km / 素晴らしい日々 MusicVideo
時速36km / クソッタレ共に愛を Music Video

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