Hump Back、TETORA、東京初期衝動、BRATS……圧倒的なフロントマン擁する、次世代担う女性バンド
今、女性バンドマンがアツい――。“ガールズバンド”ブームといわれてだいぶ経った現在だからこそ、あらためてそう言いたい。どこか男性優位のロックシーンの中で生まれた、ガールズバンドやガールズロックという言葉。“ガーリー”、“キュート”、“セクシー”、はたまた“男勝り”だとか、俗にそう言われてきた“女性らしい”ロックの概念はここ数年で変わりつつある。いうなれば、“女性らしいロック”が、“男性にはできないロック”というオリジナリティに昇華されたように思うのだ。
詞、声、メロディ、演奏、感性……、そう思わせる要素は多々あれど、理屈抜きに一聴して感じられるものは“歌”だろう。ボーカリストから発せられるエネルギーこそが聴く者の心を揺さぶるのである。それは単に“歌唱力”といった技術でもなければ、“表現力”というようなセンスとも限らない。聴き手が直感的に受け取る、漠然としたものであり、表面的より内面的、むしろそのボーカリストの存在こそがなによりの説得力であったりする。そんな、圧倒的なフロントマンを擁する、次世代を担う女性バンドを紹介していきたい。
Hump Back
これまでにも、安易にガールズバンドや女性バンドという括りだけで片付けてはいけないと感じるバンドに度々出会ってきたが、そういうバンドがきちんとムーブメントとして確立されてきていることをまじまじと感じたのは、Hump Backを知った時でもある。
少年のようで少女のような林萌々子(Vo/Gt)の歌声。どこかあどけなさが残るような彼女の歌には淡い乙女心などは存在しない。歌に出てくる一人称は〈僕〉。しかし、それは架空の物語ではなく彼女自身のことでもある。カッコつけるわけでもなく、不貞腐れてるわけでもないリアリティ。はじめて聴くはずなのにどこかで聴いたことがあるような感覚に見舞われるのは、普遍的なメロディが、といったもっともらしい理由ではなく、飾らない“人懐っこさ”を歌に感じるからだろう。
2009年大阪にて結成。幾度かのメンバーチェンジ、一時期は林のソロプロジェクトとなってしまった時期もあるというHump Back。2016年に現在のメンバー体制になってからの快進撃は目ざましく、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』、『VIVA LA ROCK』をはじめとした大型フェスへの出演など、その堂々たるライブパフォーマンスともに確実にその知名度を拡げている。まさに次世代を担う女性バンドの筆頭格であり、ロックシーン全体を見回しても今もっとも勢いのあるバンドのひとつだ。
TETORA
こちらも大阪出身の3人組。今年9月から放送されているユニバーサル・スタジオ・ジャパンのCMにおける、魅惑のハスキーボイスが話題のTETORA。元々はタワーレコード梅田大阪マルビル店限定でリリースされたシングル『イーストヒルズ』(2018年10月)が話題となり、人気が拡がったバンドだ。
キュッと締まる語尾と独特の息遣い、高音に向かって声がかすれる瞬間にドキッとしながら胸の高鳴りを重ねてしまう。どこかもの悲しく泣いているような上野羽有音(Vo/Gt)のボーカルだが、ストレートなメロディとともにしっかりと力強く響きわたる。そんな歌であるから、サウンドもアレンジも余計なことはしない、いや、要らないのだ。歌に寄り添っていくようなシンプルなバンドサウンドが叙情的に呼応していく。
特別なメッセージ性があるわけでもなく、共感を呼ぶとか、背中を押す、といったものとも違う。ただ、上野は自分の気持ちに対して真っ直ぐで嘘偽りのない言葉を歌っているだけ。だからこそ、聴く者に響き心を動かされてしまうのだろう。情感と空気感をも飲み込んでしまうこの歌は唯一無二だ。