新型コロナウイルスが“会いにいける”アイドル市場に与える打撃 経済学の観点から影響を考える

コロナウイルス、アイドル市場への影響

 現在の最優先の課題は、新型コロナウイルスの感染拡大が抑制されることである。その次に新型コロナウイルスで傷んだ経済の立て直しが必要だ。ここで経済政策が失敗すると、アイドル市場だけではなく、もちろん日本経済に深刻な打撃が襲い掛かる。

 いま国会では令和2年度の予算が参議院で審議されている。まずこれを与野党一致して速やかに可決させるべきだ。政治的闘争をしている余裕はない。この予算の中には予備費が5000億円ある。これを前倒しで感染症予防に使うことができる。さらに第二次補正予算の立案が必要だ。ただし知恵がいる。まず新型コロナウイルスの影響がどのくらいになるのか今はわからない。だが、デフレ経済から脱却していない日本経済は、多めに財政政策を付加してもまったく無問題である。個人的には10兆円から最低でも6兆円が必要だと思っている。この補正予算をできれば3月中に通せないものだろうか。さらに手法も重要だ。最善の政策は、消費税減税である。

 元参議院議員の金子洋一氏はTwitterにて次のように提言している。

「消費税を今すぐ5%に戻し、必要な財源約14兆円は新規国債発行で賄う。さらに最低限で名目3%、実質2%程度の安定的な経済成長が実現するまではあらゆる増税をしないと宣言する。こういう経済のかじ取りが新型肺炎がもたらす不況からの脱却には必要。」

 まったく賛同する。同時に、消費税の税率を引き下げることができればそれにこしたことはないが、同様な政策効果をもつものとしては、嘉悦大学教授の高橋洋一氏が提言している全品目軽減税率がある。これはすべての課税対象の財やサービスに軽減税率を適用する。その税率を5%にすれば、金子案と同じである。よく財源の心配をする人がいるが、心配は無用である。経済が成長し、人々がアイドル市場に安心して通えるようになれば、税収も伸びていく。それで十分だ。

 もちろん経済が本格的にデフレを脱却し、人々の消費が活発化すると、今度は別な試練がアイドルたちを待ち受けるかもしれない。金銭に余裕がでれば、人はいろいろなサービスを購入し、中にはアイドル消費のライバルが生まれるかもしれないからだ。だが、いまはそんなことをいう遥か手前にいる。

 日本経済、日本のアイドル市場を救うために、まずは新型コロナウイルス対策を徹底し、そして緊急の大型補正予算を組んで経済の落ち込みに備えよう。そして様々な決断をした個々のアイドル運営とアイドルを尊重しよう。これが筆者の願うすべてである。

■田中秀臣
1961年生まれ。現在、上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的論客として、各メディアで発言を続けている。サブカルチャー、アイドルにも造詣が深い。著作に、『AKB48の経済学』、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』『デフレ不況』(いずれも朝日新聞出版社)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)など多数。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。好きなアイドルは、櫻井優衣、WHY@DOLL、あヴぁんだんど、鈴木花純、26時のマスカレイド、TWICE、NGT48ら。Twitterアイドル・時事専用ブログ

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