竹内まりや、40年輝き続ける音楽家としての普遍的な魅力 『NHK紅白歌合戦』初出場を機に考える
昨年デビュー40周年を迎え、今年9月にリリースしたベストアルバム『Turntable』がオリコンランキングで1位を獲得、昭和・平成・令和で1位を獲得した初の女性アーティストとして話題になった竹内まりや。『第61回輝く!日本レコード大賞』(TBS系)で特別賞を受賞したほか、『第70回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)では、特別企画「未来へつなぐ命のメッセージ」で紅白初出場。「いのちの歌」をパフォーマンスした。
様々な愛のカタチを歌って女性の恋愛や自立を後押し
今回の紅白で披露した「いのちの歌」は、連続テレビ小説『だんだん』(NHK総合)で三倉茉奈と佳奈の姉妹が歌う劇中曲として2009年に発表、2012年にセルフカバーされた。家族や友だちなどそれぞれの大切な人の存在、出会いの喜び、そして日常への感謝が、シンプルなメロディで歌われた同曲。ここに込められたメッセージは世代を越えて受け継がれ、全国の卒業式や結婚式で歌われているほか、道徳の教科書に掲載もされた。竹内まりやの楽曲の持つ魅力は、この「いのちの歌」に代表されるように、年月を経ても決して色褪せることなく、世代をも問わない普遍性にある。
The Beatlesや60年代の海外ポップス、ウェストコーストサウンドから影響を受けてアーティストを志し、1978年にシングル『戻っておいで・私の時間』、アルバム『BEGINNING』でデビュー。女性らしさがありながら、洋楽から影響を受けた洗練されたボーカルは、シティポップと呼ばれたアーティストの楽曲との相性が抜群で、同アルバムの制作には安井かずみ、加藤和彦、高橋幸宏、大貫妙子、山下達郎、細野晴臣、鈴木茂、杉真理、林哲司ら一流アーティストが名を連ねたことでも話題になった。
彼女の代表曲の一つである「SEPTEMBER」(1979年)は、林哲司による60年代ポップスのテイストの軽やかなサウンドと松本隆の歌詞によって、失恋の情景を彩り豊かに表現。誰でも感情移入しやすいニュートラルな歌声で楽曲に寄り添っている。「不思議なピーチパイ」(1980年)では、作詞を安井かずみ、作曲を加藤和彦が手がけた。The Beach Boysをほうふつとさせる爽やかなコーラスが印象的で、彼女の歌声は、コーラスと引き立て合いながら存在感を発揮。化粧品のCMソングとして大ヒットし、竹内まりやの名前を世に知らしめるきっかけになった。
活動を重ねる中で自身の作詞・作曲の割合も増え、特に女性の気持ちを歌った楽曲は、幅広い支持を集めた。例えば「シングル・アゲイン」(1989年)は、浮気で別れた彼に対する女性の気持ちの機微を切なく歌っている。山下達郎によるシンプルで淡々としたアレンジも相まって、当時オリコンで2位を記録。サックスを取り入れたミディアムバラードのサウンドが秀逸な「告白」(1990年)では、かつて別れを選んだ相手からのふいの連絡に、戸惑いながらも心を揺らす女心を歌った。恋愛曲への支持から“ラブソングの女王”と呼ばれるようになり、これらを収録したアルバム『Quiet Life』(1992年)はミリオンヒットを記録している。
「純愛ラプソディ」(1994年)は、ポップな曲調ながら、愛してはいけない相手への愛情も愛のカタチであることを歌い、同曲を収録したベストアルバム『Impressions』は、350万枚の大ヒットを記録。さらに「カムフラージュ」(1998年)は、切なさがありながら、どこか清々しさを感じるメロディが秀逸。それぞれ恋人がいる男女が、友だちの関係を越えて愛し合うまでの心模様を歌ってオリコンで1位を獲得した。
愛のカタチは様々だが、いずれも女性の恋愛や自立を後押ししている。そんな歌詞が多くの働く女性からの支持を得たことは、今の時代を考えると先鋭的だったと言えるだろう。