フジファブリック、宮本浩次、池田エライザ……アーティストらによるカバーの魅力 これまでの名曲アレンジを振り返る

 そして、リリー・フランキーと共に『The Covers』のMCを務める池田エライザも新世代のカバーシンガーとして動向が気になるところ。米津玄師の「fogbound」に歌唱参加(アルバム『BOOTLEG』に収録)したり、同番組で歌のパフォーマンスを披露したりしているだけに、来年以降に歌手デビューする可能性も十分考えられる。

米津玄師 4th Album「BOOTLEG」クロスフェード

 これまで『The Covers』では、青江三奈「恍惚のブルース」や久保田早紀「異邦人」など、意外な大人っぽい昭和歌謡カバーを披露。色気と陰りを感じさせるしっとりした低い歌声に、オリジナル曲を知るミドル~シニア世代は骨抜きにされただろうし、ティーン世代は彼女の新たな一面にワクワクさせられたに違いない。若者を中心に人気を誇る女優/モデルの池田エライザが、自分が生まれる前の名曲をこんなふうに味わい深く聴かせてくれるのはとても刺激的で、波及力も抜群なので、今後も歌い続けてほしいと切に願う。

 サザンオールスターズ、松任谷由実、山下達郎、細野晴臣らの動きが世を賑わせているとおり、古きよき時代の音楽の再評価が著しい昨今。昭和生まれの世代ならまだしも、当時を知りえない平成生まれのリスナーにとって、それらは聴いたことのない、とても新鮮に感じられる音楽であり、現代のJ-ROCKやネット発の楽曲とはかなり性質が異なるものと言ってもいいかもしれない。本稿で主に取り上げた、即効性の強さではなくじんわりと沁み込むような味わいが魅力の名曲に時を超えて出会わせる――カバーの意義はそこにある気がする。

 また、サブスクの旺盛で多くの音楽が聴き放題にはなったものの、もともと好きな曲ばかりをリピートしてしまいがちな状況も生まれている。だからこそ、アーティストが指南役となって多くの名曲と出会う機会をくれるのは貴重だとも思う。

■田山雄士
フリーのライター。元『CDジャーナル』編集部。日本のロックバンド以外に、シンガーソングライター、洋楽、映画も好きです。

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