嵐は世界中を巻き込み新たな道を開拓し続けるーー新曲「Turning Up」配信リリースなどから考察
11月3日に嵐がCDデビュー20周年を迎えた。今や誰もが認める国民的アイドルとなった嵐だが、デビュー間もないころから彼らの姿を見てきたファンにとっては、苦節の末の現在の華々しい活躍であることは想像に難くなく、記念すべき日を格別の想いで迎えたという者も少なくないことだろう。
現在、グループ史上最長であり、前人未到のドーム50公演に及ぶ全国ライブツアー『ARASHI Anniversary Tour 5×20』の最中である5人にとってももちろん、今年の11月3日という日は特別以外のなにものでもなかったはずだ。ここ最近では音楽番組への出演の際にデビュー当時の楽曲や、結成10周年前後のリリース曲をフル尺で披露したことなども話題を集めていた嵐だが、これもこの日を迎えるまでの道のりに必要なプロセスのひとつだったように思う。
11月2日発売の『日経エンタテインメント!』に掲載されたロングインタビュー内で、櫻井翔は音楽番組でのフル尺での楽曲披露や完全オリジナル振り付けでのパフォーマンスに関して、「ただ歌うだけじゃなく、ここ最近見てもらってなかったものを発売当初のオリジナルの形で届けるっていうのが趣旨」と語っている。現在ではバラエティやドラマをはじめ、さまざまなフィールドでの活動を展開している嵐ではあるが、その根底には常に「5人で作り出した/“嵐チーム”で作り出した作品を世に放っていく」という意識が存在しているようだ。
同インタビュー内では、二宮和也が嵐の一部楽曲で作詞・作曲を手掛けていることに関して相葉雅紀が「曲を作れる人が嵐ではニノしかいない。それを5人で歌えるっているのがいつもうれしい」と発言したり、櫻井の代名詞ともいえる“サクラップ”に関して、松本潤が「5人で曲作ろうって時に、自分たちと同じ時間、同じ景色を共有してきた人が書いた詞は、グッとくる感じが一味違う」と発言する一幕もあった。楽曲の振付を担当することも多い大野智に関して、松本が「俺らの細かい心情も理解した独特の間が、リーダーの振りにはある」と評したのも印象的だ。
どのデビュー組グループよりも5人で出演する冠番組が多く、かつては民放3局で冠番組を持っていた時期もあったほどの嵐。ファンのみならず今や周知の事実となったメンバー同士の仲の良さはもちろんだが、おそらくそれ以上に表現者としての5人がとても相性が良かったことが、“5人で空間を作り上げる”ことに長けたグループである現在の嵐を作り上げた大きな要因だったのではないかと思う。そして、そんな5人の相性の良さが凝縮されているのが、数々の名曲たちなのではないだろうか。
キャリアの長いロックバンドなどでは珍しくないことだが、楽曲がバンドメンバーの手を離れ、バンド名とともにひとり歩きをして思いもよらない層のリスナーへと届くことがある。今の嵐、および彼らの楽曲はまさにその境地にあって、“嵐”という存在自体が、メンバー5人含め世界中の共有財産のようになってきているのではないだろうか。その事実がよく表れているのが、10月に突如開設されたYouTube公式チャンネル、そして各種ストリーミングサービスでの過去作品の配信開始だ。
これにより、YouTubeチャンネル開設やストリーミング配信によって、これまでテレビなどで嵐に親しんできたがCDを購入する機会がなかった/ライブに足を運ぶ機会がなかった、いわば潜在的ファン層へ訴求することが可能になった。これまでのように楽曲をCDでリリースする→ライブで披露するという流れで充分なセールスを記録している嵐なだけあり、ファンのみならずこの試みに驚いたというリスナーも多かっただろうが、これはメンバー自身が「5人で作ったものを少しでも多くの人に届けたい」という想いを、国民的なグループとなった今でも強く持ち続けているということの証左に違いない。CDデビュー20周年を迎えた嵐がこれほど大きな存在になったにも関わらず、5人の中にはデビュー当時から変わらない、ごくごく素朴な誇りがあり続けていることを改めて実感させられる取り組みである。