嵐、ファンと共に歩んだ20年 ビデオクリップ集『5×20』で振り返る“国民的アイドル”に至るまで

 10月16日、嵐の20周年を記念したビデオクリップ集『5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019』が発売されました。シングル表題曲のビデオクリップが63本、アルバム曲やカップリング曲のビデオクリップを収録した初回特典を合わせると、実に72本におよぶビデオクリップが収録されています。発売初日のオリコンDVDおよびBlu-rayデイリーランキングでも、それぞれ1位を獲得しました。先日、累計売上200万枚を達成したベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』同様、記録的な売上が期待されます。

 嵐は、10周年の際にもビデオクリップ集『5×10 All the BEST! CLIPS 1999-2009』(以下、『5×10』)を発売しました。今回の『5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019』(以下、『5×20』)でパッケージに描かれた絵は、『5×10』のパッケージで描かれていた自然の中を走るバスをモチーフにし、さらに曲がりくねった道を抜けて、虹のかかる高台までやってきたバスが描かれています。まさにこのパッケージの絵が示す通り、『5×10』にも収録されていたビデオクリップを含む形で、嵐20年分のビデオクリップが一気にまるごと楽しめる内容となっています。

 私も本作を通じて、63本のビデオクリップすべてを一気に鑑賞しました。朝の10時頃に「A・RA・SHI」から観はじめて、収録最新曲「君のうた」にたどり着く頃には時計が15時を示していました。Blu-ray本編ディスクだけで時間にして289分、初回特典ディスクを含むと327分に及びます。『5×10』も幾度となく鑑賞し、シングルやアルバムが発売されるたびに初回盤付録ビデオクリップも合わせて観てきた私にとっては、今作『5×20』収録のビデオクリップはどれも馴染みのあるものばかりです。しかし、20年分のビデオクリップを改めて順に1つ1つ観てみると、さまざまな喜びや発見がありました。自分でも驚くほど新鮮な気持ちで、時の経過を忘れる5時間余でした。

 鑑賞する中で、私自身の気持ちが高揚するポイントがいくつもありました。発売元がJ Stormに変わり、MVの演出も個人の魅力が大きくクローズアップされたことに気づいた「a Day in Our Life」。そして、あれだけ何度も、それこそ今ならYouTubeでも観たはずなのに、あの淡いパステルカラーのショーウィンドウとキラキラしたイントロが流れて来た瞬間に、愚直に心がときめいたことに驚いた「Love so sweet」。

嵐 - Love so sweet [Official Music Video]

 今作『5×20』から収録されている「Everything」に到達したとき、まだ31曲目で、実は全63本の半分にも達していないということに気づき、ここからの10年が本当に長かったんだな、と気づいたこと。「Monster」「ワイルド アット ハート」「Breathless」あたりの多種多様な曲を通じて、歌やダンスで1フレーズ1シーンの印象を残すことで、世の中のあらゆる雰囲気を映画やドラマや歌番組やバラエティで嵐は作ってきたんだな、と感じたこと。「誰も知らない」や「Sakura」のように、映像のハイレゾリューション化とともに、色彩鮮やかな演出が増え、ビデオクリップの楽しみがまた一段上がったこと。「愛を叫べ」や「夏疾風」には一般の方がビデオクリップに出ており、“国民的アイドル”と言われるようになってからこういうシチュエーションが本当に増えたな、そういえば『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で重要な役割を担うようになったのもこの10年だな、と考えが巡ったこと。

 「GUTS!」を観て、『弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』(日本テレビ系/二宮和也主演のドラマ)からもう5年が経つんだなあ、とか。「I seek」を観て、『世界一難しい恋』(日本テレビ系/大野智主演のドラマ)の恋模様がかわいかったなあ、とか。「Daylight」を観て、『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS系/松本潤主演のドラマ)の松潤のビジュアルが大好きだったなあ、とか。こんなに自分はドラマに思い出があるんだなあ、とか。ああ、そういえば当時は何となく観ていた『木更津キャッツアイ』シリーズも『花より男子』シリーズも『山田太郎ものがたり』(すべてTBS系)も、嵐を好きになってから見返して、それから「a Day in Our Life」も「Love so sweet」も「Happiness」もコンサートで観て、もっともっと嵐を好きになっていったなあ、とか。

嵐 - Happiness [Official Music Video]

 ファンでなくても、嵐の楽曲を何かしらで聞いたことのある方は、きっと多いでしょう。そんな方々それぞれにとっても、この『5×20』のビデオクリップ63本のどこかに、おそらく気持ちが高揚するポイントがあるはずです。それは、嵐そのものに対する思い出かもしれないし、その頃の自分自身の思い出かもしれません。ビデオクリップ63本を順に眺めるということは、自分と嵐の歴史を振り返る行為でもあります。その中で、ふと湧き上がる感情や思い出、頭をよぎるシーンが、人それぞれの嵐の歴史を物語ります。好きなビデオクリップをかいつまんで鑑賞するのももちろん楽しいですが、本作を通じて嵐との関わりを振り返ることで、20年という年月を絵巻物を広げるように見つめることができます。20年間コンスタントに作品を作り続けた嵐だからこそ、どのタイミングで好きになったにも関わらずできる楽しみ方です。

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