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ジャズ界の頂点に君臨するベーシスト、アヴィシャイ・コーエンとイスラエルジャズの今

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 昨今、音楽ファンの間で話題になっているイスラエルジャズシーン。現代ジャズにおけるイスラエルジャズの勢いはとどまるところを知らず、もはやジャズの一大勢力といっても過言はないだろう。これまで数多くのイスラエル出身のミュージシャンが海を渡り、ジャズの聖地ニューヨークを目指してきたわけであるが、あらゆる人種背景、生活様式、宗教、文化と伝統を持ち合わせるイスラエルジャズシーンは90年代以降、バラエティに富んだ才能を世界へ輩出してきた。その背景のひとつには、そもそも国民の人口が900万人にも満たないイスラエルの音楽市場は小さく、今まで彼らの多くが音楽大学を卒業すると、生計を立てるべくアメリカに渡るケースがほとんどだったことが挙げられる。中でも70年代前半生まれのいわゆる第1世代がニューヨークで頭角を現し、周囲から一目置かれる存在になったことで、それ以降のイスラエル人ミュージシャンが世に出やすくなったことも、彼らが大きく飛躍した理由のひとつだ。

 世代別に語られることも多い彼らであるが、第1世代のべーシスト、アヴィシャイ・コーエン(1970年生まれ)は、同世代のオメル・アヴィタル(Ba)とアヴィ・レヴォビッチ(Tb)と並び90年代からニューヨークで活躍し、イスラエル出身のミュージシャンたちに道筋を示した一番の功労者といえよう。アヴィシャイ・コーエンの音楽の魅力は何といってもイスラエル由来の哀愁漂う旋律と、変拍子を多用した複雑なリズム、それでいて誰にでも親しみやすいメロディに凝縮されている。ジャコ・パストリアス(Ba)に魅了されてジャズを志した若者は、次第にユダヤ音楽からラテン音楽、中世ヨーロッパの古謡まで多様な音楽文化を飲み込み、アヴィシャイ・コーエンという唯一無二の音楽を生み出したのだ。

 今ではジャズ界を牽引する存在として、世界中を飛び回るアヴィシャイ・コーエンであるが、1992年の渡米時には資金繰りのためにニュースクール大学とマネス音楽大学に通いながら、建設現場で働く毎日だったという。日夜、ストリートやナイトクラブでベースを弾くアヴィシャイに転機が訪れたのは96年。ダニーロ・ペレス(Pf)の紹介でチック・コリア(Pf)に実力を認められた彼はチックのバンド、Originのメンバーに抜擢され、一躍、ジャズ界の注目の的となった。

 その後、チックのレーベル<Stretch>からソロデビューを果たし、『Adama』(1998年)、『Devotion』(1999年)、『Colors』(2000年)、The International Vamp Bandを率いた『Unity』(2001年)とリーダー作品を次々とリリース。2002年には自身のレーベル<Razdaz Recordz>を設立し、2年後の2004年には自らのルーツと向き合うためにイスラエルに帰郷した。若き名匠シャイ・マエストロ(Pf)と米ジャズ界の鬼才マーク・ジュリアナ(Dr)を起用した『Gently Disturbed』(2008年)、ジャズの名門<Blue Note>からリリースした『Seven Seas』(2011年)は、いずれも現ジャズ界における金字塔的作品として高い評価を得ている。2014年には愛娘の名前を冠した『Almah』でストリングスをフィーチャーし、ジャズと室内楽や伝統音楽とのアンサンブルを独創。2019年7月には17枚目のアルバム『Arvoles』を発表し、ホーンセクションを取り入れた静謐かつ洗練された音色は、アヴィシャイの目指す地平が新たなレベルに到達したことを感じさせた。

Avishai Cohen – “Simonero” (‘Arvoles’ – New Album, 2019)

      

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