ALI PROJECT 宝野アリカが語る、『Fantasia』で描いたインディーズ時代にも通じる“創作の原点”

アリプロ 宝野アリカインタビュー

アリプロがファンタジーを作ると、やっぱりこうなります

ーーファンタジーというテーマのせいか、今回、言葉の引用が多いですよね。「BArADiPArADicA」には〈醜いアヒルの子〉〈ガラスの靴〉〈毒リンゴ〉とかが出てくる。

宝野:そうそう。この歌は女の子が主人公なので、子どもの頃に読んだおとぎ話を出そうと思っていました。

ーー〈ゲルダ〉は、『雪の女王』でしたっけ。

宝野:そうです。本当は、そこは「アリス」でもよかったんですけど、アリスは使い古されてる感じがして。私、「ゲルダ」という名前が好きなんです。『雪の女王』のお話も好きだし、『雪の女王』の絵本は絵がとても綺麗なんですよ。美少女だし。なので〈ゲルダ〉を入れてみました。

ーー4曲目「Maison de Bonbonniére」は、お菓子の家が出てくるから、『ヘンゼルとグレーテル』ですか。

宝野:そうです。〈大人になったグレーテル〉という歌詞が出てきますけど、お菓子を食べすぎて、太りすぎてドアを抜けられない(笑)。それでもまだ食べたいから、子どものままのヘンゼルを呼び寄せて、シロップをかけて、食べちゃう。アリプロがファンタジーを作ると、やっぱりこうなりますよ。

ーーホラーですね(笑)。

宝野:お菓子の曲は前にも一個作っているので。「桃色天国」を。お菓子の種類がかぶらないように、全部変えてるんです。

ーーああ、そうか! 今気づきました。

宝野:そういう、くだらないところにこだわってます(笑)。マカロンにするかサバランにするか、迷ったんですけど、サバランは知ってる人が少ないと思ったので、マカロンかなと。そして、全部フランス語にしています。お菓子用語もありますね。Flambé (フランベ)とか。

ーーフランベして、ヘンゼルを調理しちゃうんですよね。〈おしりFlambé〉という。

宝野:〈おしりFlambé〉、可愛い~。怖いけど、可愛い~。

ーーそういう、「本当は怖い童話」的な要素も、たっぷり盛り込まれている。元々『ヘンゼルとグレーテル』の原作も、魔女をかまどで焼いちゃいますからね。

宝野:でも日本の童話は、わざと怖い結末を避けたりするじゃないですか。「みんなで仲良く暮らしました」みたいな。それでいいのか? と思いますけど。徒競走で、みんな一等にするみたいな感覚は、良くないよね。

ーーそれって、西洋と日本の違いかもしれない。勝者は称えられるけれど、敗者には何もやらないような。

宝野:『アリとキリギリス』もそうですよね。あれ、ひどくない? 裕くん(杉野裕/アリプロのサポートバイオリン)がいつも言ってる。すごい嫌なんだって、あの話。

ーー言ってますね(笑)。「キリギリスは遊びでバイオリンを弾いてるわけじゃない!」って。でも結局飢え死んじゃう。

宝野:あの童話も、最後にありんこがキリギリスを助けてあげるバージョンと、見捨てるバージョンと、あるじゃないですか。本当はどっちなんだろう? 可哀そうだと思って助けるのか、そんなの自分が悪いじゃんと言って助けないのか、二通りありますよね。

ーー確かに。読者に考えさせようとしているのかもしれない。

宝野:アルバムで最初に録ったのは「BArADiPArADicA」「Maison de Bonbonniére」で、その次に録ったのが「21世紀新青年」かな。

ーーこの曲かっこいいです。

宝野:ちょっとテクノっぽい感じで、これもアリプロっぽいよね。スチームパンクの世界観にしようと思って、本で調べたり、スチパンに詳しい友人たちに「この言葉とこの言葉、どっちがスチパンぽい?」って聞いたりして。結局、言われたのとは反対の言葉を使ったんですけど(笑)。スチパンって、蒸気じゃないですか。蒸気で動くものとして、列車で時空を移動するイメージがあったので、〈蒸気列車〉という言葉を使ったんですけど、鉄オタの方には正しくないと言われるかも。列車には蒸気機関は付いていないから。でも調べたら、蒸気列車という言い方もするとどこかに書いてあったので、まいっかと(笑)。そんなの、大体聴けばわかっていただけるかと。でも指摘される前に先に言っておきます。

ーーあはは。突っ込むなと(笑)。

宝野:「蒸気機関車」でも良かったんですけど、そのイメージがバン! と出てきちゃうのが嫌だなと思ったんですよ。時空の海を越える「蒸気船」でも良かったかなと、あとで思いましたけど。でも列車の、ガタガタした音が似合うんですよね。この曲には。ねじを巻くような音も入っているし。

ーー未来への冒険的な。

宝野:そうそう。しかも、男の子しか出て来ないんです。少年愛までは行かないけれど、アダムが出てきたりして、ちょっと匂わせたりして。「過去の僕たちと未来の僕たちと、ユートピアで出会おう」みたいな。ああ素敵。

ーー素敵です。メガロポリスという言葉が出てくるので、昔々の「メガロポリス・アリス」をちょっと思い出したりして。

宝野:ああー。そうね。

ーーそう考えると、アリカさんの好きなものって昔から変わっていない。

宝野:そうね。新しく好きになるものってあるのかしら?

ーーどうなんでしょうね。結局、すべてが31年前のインディーズデビュー盤『幻想庭園』の中にあったのではないか? という気すらしますし。

宝野:今回は、そんな感じが特にしますよね。『幻想庭園』もファンタジアですから。

ーー実際、歌詞に出てくるんですよ。「月下、緑雨幻想」の中に、〈幻想庭園〉が。

宝野:それは、わざとです。

ーー原点回帰のような感覚は、二人で話していたんですか。

宝野:私は何も意識していないですけど、片倉さんは意識しているかもね。その時の芸術的なことではなく、音楽を作る気持ちの原点に戻りたいということは言っていました。戻ってその時の気持ちを思い出す、みたいな。昔は、純粋に楽しかったわけじゃないですか。音楽を作ることが。今も楽しいですけど、ちょっと違うじゃない? 何の仕事でもそうだと思いますけどね、音楽に限らず。

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