『Let’s GOAL!〜薔薇色の人生〜』インタビュー
倉木麻衣が語る、“出会い”が育んだデビュー20周年の軌跡「音楽を発信していくことこそ私の使命」
『名探偵コナン』が繋いでくれた海外ファンとの縁
――アルバムの2曲目には、倉木さんのキャリアを語る上で欠かせないアニメ『名探偵コナン』(日本テレビ系)の主題歌にも起用された「きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない」も収録されていますね。
倉木:はい。今までで一番長いタイトルをつけさせていただきました(笑)。略して「きみ恋いつ夢」って覚えていただけたらと思うんですけど。
――史上最長のタイトルになってしまったのには、何か理由が?
倉木:最初は「Eternal Moon」だったんですけれど、それだと恋愛の曲だとすぐにわからないのかなって思ったので。タイトルだけで、恋愛ソングだってわかるような感じにしたいと思った結果、サビのフレーズそのままのメッセージをお伝えしたいという気持ちになり、長くなってしまいました(笑)。
――やはり連想されるのは『名探偵コナン』での、工藤新一と毛利蘭の恋ですね。
倉木:そうですね。アニメでも、胸キュンのポイントがたくさんありましたよね。この曲のテーマも、お互いが本当は好き同士だけど、踏み出す勇気がなくて。じれったい中で、もどかしい気持ちなんですね。相手に告白して恋が実るっていうロマンチックな部分を、どう表現しようかと思ったときに、ストレートに「好きだよ」って伝えるというよりは……って考えたのが、こういうことなんです(笑)。
――日本国内はもちろんですが、中国などアジアでの人気にもつながっているなど、倉木さんと『名探偵コナン』の歩みは、本当に他ではなかなかない形に進化していますね。
倉木:そうですね、ありがたいことに、いろんな楽曲でご一緒させていただいて。気づけば、今23曲目になります。21曲目で「ギネスに認定されました」ってスタッフさんから言われたときには、「えぇ〜っ! そんなことできるんですか?」って驚いたくらい、思いがけない記録で。いろんな人に感謝しながら「これは、みんなでのギネスだね」なんて話してたんですけど。中国では日本のアニメ好きな方も多くて、『名探偵コナン』も知らない人はいないくらい人気なんですね。アジアでテレビ出演させてもらったこともあるんですけど、そこで「『名探偵コナン』のお姉さんって、呼んでもいいですか?」って言っていただいて、もう「ありがたいです、どうぞどうぞ!」って感じでした(笑)。
――「渡月橋 ~君 想ふ~」以降、さらに魅力的な和テイストの楽曲が生まれたという印象です。
倉木:「渡月橋 ~君 想ふ~」は、劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』の主題歌として書き下ろさせていただいたもので、物語の舞台が京都の嵐山ということから、インスパイアされて制作したんです。そこからありがたいことに、京都の観光おもてなし大使に任命していただくご縁に繋がりまして。私自身、改めて日本の美しさだったり、世界中に注目されて愛されている京都の魅力を再確認することができました。京都は学生時代ずっと過ごしていた場所なので、自分にできることを、と活動させていただいています。国を超えてたくさんの人が愛するもの、大事にしている気持ちを受け止めて、手を取り合っていけるようにできたらいいなと思って、幅広いアジアをミックスさせたような曲を作らせてもらいました。
――“多くの人に愛されているものの魅力を再発信する”という意味では、今回のアルバムでは、初回盤ボーナスディスクにZARDの「負けないで」が収録されましたが。
倉木:そうなんです。20年間歌手としてやってきて、ついに「負けないで」をカバーさせていただくことに……と恐れ多い気持ちでいっぱいです。私自身、学生時代に応援ソングとして支えてもらった大切な曲で、事務所の大先輩であるZARDの坂井泉水さんの名曲でもありますし。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でコラボレーションさせていただいたんですけれど、そこでファンのみなさんから思いがけない言葉をいただきまして。「負けないで」っていう楽曲をこれからも大切に歌い続けてくださいってメッセージをいただいたんですね。それが、すごくうれしくて。坂井泉水さんが遺した素敵な楽曲をいろんな方に広めていこうと思ってトライさせていただきました。なんとまた、光栄なことに、ずっとバックバンドとして坂井泉水さんのライブを演奏されていた方々が、参加してくださったんです。
――歌い継がれる名曲ですね。
倉木:本当に、色あせないんですよね。運動会で流れたり、演奏したり、色んなところでカバーされていますしね。大好きな気持ちをギュッとして、「負けないで」を歌わせていただきました。ぜひ、ファンのみなさんにも一緒に歌っていただけたらうれしいです。
「ファンのみなさんの夢を叶えるのが、倉木麻衣の願い」
――「音楽が自分を鼓舞してくれる」というお話がありましたが、20年という長い年月の中では順風ばかりではなかったということでしょうか?
倉木:そうですね。音楽一筋の生活でしたので、一時期いろいろと考え込んでしまって、歌い方で悩んだり、歌ってもしっくりこないということがありました。アルバムを制作しなければならない時だったんですけれど、ちょっと時間をいただいて「1回“倉木麻衣”の生活から離れて、自分を見つめ直してみよう」と。ラッキーなことに、そういう環境をいただけたので、イギリスのほうで語学勉強をしながら、少し音楽と距離をおいたんです。離れることによって、私って音楽が好きだし、もっと自分らしくいられる視点から見つめることだってできるんだと気づくことができました。もう一度、音楽と向き合う自分自身を鼓舞する一曲を作ろうって思って生まれたのが、「Wake me up」という曲だったんです。その楽曲を、イベントやライブでファンのみなさんと歌うことで、元気をいただきましたね。今でも、何かものを作ろうってプロジェクトが動いているときってとても大変で、負けちゃいそうにもなるんですけど、スタッフのみなさんが「運命共同体だよ」って言って支えてくれるので、それはとっても助かっています。
――スタッフのみなさんはどんなふうに倉木さんを元気づけるんですか?
倉木:それが本当にさりげなくて。そっと見守る系とも、「頑張れ!」って盛り上げる感じとも違って、やさしさがしみるっていうんですかね(笑)。この前も、テレビ出演のときに初披露とかプレッシャーを感じて、よく緊張してしまうタイプなんですけど、ふと見たらスタッフさんのTシャツに私の好きな犬がプリントされていて。「ほら、今日生出演だから犬の着てきたよ〜」って。そういう和やかな空気を作ってくださるのが、とてもありがたいんです。お正月には、お煎餅のなかにはいってる小さい七福神のお人形を分け合いっこして。「何かあったら、それぞれ七福神を持って集合しよう!」なんて言いながら(笑)。やっぱり苦しくて大変だってときって、笑顔が減りがちじゃないですか。そういう自然体な繋がりに支えられています。
――20年も一緒に歩んでこられたら、もはや家族同然ですよね。
倉木:そうですねー! マネジメント側もですが、エンジニアさんたちも20年変わっていないんです。私の性格はもちろん、歌い方なども熟知してくださっている方々と一緒に作り上げるので、いい意味で新鮮さを追求できるんですよね。
――チームが安定している分、新しいことに安心してチャレンジできるのかもしれませんね。
倉木:そのとおりですね。戻ってこられる場所があるって思えるのは、大きいです。環境には本当に恵まれました。音楽は120%ピュアであってほしいと思っているんですね。作品にも「大好きだ」っていう気持ちで向き合って、それを聴いたファンのみなさんが「好きだ」って気持ちを返してくださる、そこに信頼できる仲間がいて……っていう環境がありがたくて。こんなこというとおこがましいかもしれませんが、そんな素晴らしいところにいるのだから、音楽を発信していくことこそ私の使命だと思って活動を続けていけたらなって思っています。