『Let’s GOAL!〜薔薇色の人生〜』インタビュー
倉木麻衣が語る、“出会い”が育んだデビュー20周年の軌跡「音楽を発信していくことこそ私の使命」
倉木麻衣が20周年YEAR記念オリジナルアルバム『Let’s GOAL!〜薔薇色の人生〜』を、8月14日にリリースした。国内のみならず、世界を舞台に活躍している彼女を象徴するかのように、初回盤は5大陸をそれぞれイメージした、Blue、Yellow、Black、Green、Redの各色盤が登場。2020年に向けて盛り上がる東京から、世界規模の夢を発信する倉木麻衣らしい、アニバーサリーアルバムに仕上がっている。
16歳の全米デビューから、20年という年月を駆け抜けてきた倉木。常に新しいことへの挑戦だった月日が、ギュッと詰め込まれたかのような本作。ダンサブルな応援ソングから、うっとりするようなバラードなど、宝石箱のように色とりどりの楽曲が耳に飛び込んで来くる。なかには、レディー・ガガのプロデューサーとしても知られるフェルナンド・ガリベイも参加した楽曲も。
8月17日からは、全国15カ所を巡るライブ『20th Anniversary Mai Kuraki Live Project 2019 "Let’s GOAL!〜薔薇色の人生〜』をスタートさせるなど、精力的に活動を続ける倉木にインタビュー。20年を振り返り、ファンや仲間との歩み、音楽との距離に悩んだ日々、そして20年前の自分にかけたい言葉……率直な想いをたっぷり語ってもらった。(佐藤結衣)
「20年分の感謝の気持ちをお返ししていく」
――まずは、デビュー20周年という節目を迎えての心境は?
倉木:あっという間という感じですね。まだまだこれから何かが始まるんだというくらい、自分としては新鮮な気持ちでいます。デビューは高校2年生のときで、振り返ってみると、1年1年新しいことにチャレンジさせていただきながらアルバムを出していて、ライブツアーも毎年テーマを決めて発信していて……1つのプロジェクトが終わって「また次!」って走り続けてきたので。常に新しいというか、フレッシュな気持ちでいます。
――ファンのみなさんとも20年一緒に走ってきたということですもんね?
倉木:そうですね。ライブに「0歳だった子が20歳になって来ました!」っていうお客様もいらっしゃってくださるくらい(笑)。ファンの方とも家族のような感じというか、みなさんと一緒に成長させていただいたなという気持ちでいます。支えてくださってありがたいなと思うのと同時に、その感謝の気持ちをお返ししていく活動をしていきたいなと思っています。実は、今回のアルバムで参加してくださったアーティストの中に、ハタチの方もいるんですよ! その時その時は無我夢中でしたけど、こうして振り返ってみると、20年という年月って、本当にかけがえのない貴重な時間だったなって。途中いろいろと考えた時期もありましたし、まさかここまで歌手として、こうやって音楽に携われると思ってなかったですし。そうした時期を経て、今があるっていうのはやっぱり、聴いてくださっている方々のおかげだなって思います。
――個人的には、そのみずみずしい歌声やビジュアルの印象がデビュー当初から全然変わらないなと思っていて。「20周年!?」と、驚きが隠せませんでした(笑)。
倉木:ありがとうございます! きっと音楽に対する想いが、変わらないからかもしれませんね。大好きな気持ちだったり、もっといろんなライブを皆さんに見ていただいて、元気をお届けしたいっていう気持ちだったり。やっぱり音楽って日々支えてくれてるじゃないですか。いろんなところで、どんなときも鼓舞してくれる存在が、私の中で音楽なんですね。それを年月を経て、みなさんと一緒に共有してこられたのが、大きいのかなって。
――逆に、倉木さん自身が20年で「ここは変わった」と感じている部分はありますか?
倉木:詞の表現が変わったかもしれないですね。ジャンルを問わずに、いろんな楽曲をトライさせていただいている中で、今から振り返ってみると10代のころは逆にすごく大人っぽい歌詞を書いていたなって思いますね。早く大人になりたいって、思っていたんだなって(笑)。楽曲にもよるんですけど、いつもそのときどきで等身大の気持ちを書いていたんですが、いろんな人との出会いによって、詞の書き方とかも変わってきて。口語調になった時期もありましたし、最近だと比喩表現とかは使わないでストレートに書くようになったなと感じています。デビューする前は、歌詞を書いたことがなかったんですよ。“どうやって書いたらいいんだろう”って戸惑いながらのスタートでした。周りの方に「日記のように書いていったらいいよ」とか、アドバイスをいただきながら。今でさえ、歌詞って難しいなって思います(笑)。今回のアルバムも、すっごく悩んで書いたんですよ!
――そうなんですね。制作活動に煮詰まってしまったときは、どうしているんですか?
倉木:本を読んだり、映画を観たり、仲のいい人と他愛もない話をしながら、フッて思ったことを書き留めておいて、楽曲のメロディに当てはめていくんですけど、また頭の中でハマったかなって思っていても、実際に歌ってみると“おっとっと? しっくり来ないぞ?”っていうときもあって。また、やり直し、みたいな(笑)。でも、そうやって繰り返していると、あっという間に時間がなくなってしまうので、いつも期限との戦いになってくるんですよ。最終的には自分の“これだ!”っていうのを目指して、作ってはいるんですけれどね。
――期限と戦っている倉木さん、全然想像できません(笑)。
倉木:いやー、もうすごい姿ですよ(笑)。曲を聞きながら、紙とペンで詞を書いているんですが、スタッフさんからは「〆切に追われる漫画家さんのようだ」って言われたこともあるくらい! 実は一度、iPadで書いていた時期があったんですよ。“iPadを持ってカフェで書く”っていうのに憧れて(笑)。でも「よし、出来上がった! 明日これで歌入れだ!」って送信しようとした瞬間に、削除ボタンを押してしまったことがあって。バックアップも取ってなかったので、全部真っ白になって、「うわぁぁぁ!」って(笑)。もうそれからずっとアナログでやってますね。パソコンで書くのも試してみたんですけど、やっぱり手書きのほうが、そのまま想いが出てくる感じがします。
――その手書きのメモを、見てみたいというファンの方もたくさんいそうですね。
倉木:ぐちゃぐちゃ〜って書いてあるので、誰にも解読できないかもですけど(笑)。
「出会いによって音楽の幅が変わってきました」
――では、歌詞以外の変化については?
倉木:そうですね。初めてライブをしたときは、ただひたすら“歌って想いを伝えなきゃ”っていう一点だけだったんですけど、回を重ねるたびにファンのみなさんとのキャッチボールができるようになったというか。一緒に楽曲を育てていくという感覚が生まれていきました。思い出に色をつけていく、というか。いろんな会場で歌うたびに、ファンのみなさんに色をつけていただいたように感じています。例えば、ライブでいつも一番最後に歌わせていただいている「always」は、今となっては欠かせない、「倉木麻衣のライブといえばこの曲だ」ってみなさんの中でも大切にしていただいている曲になりましたし、「chance for you」という曲も、イベントなどでファンのみなさんと一緒に合唱して、希望とか前向きな思いっていうのを共有できました。そういう曲が、生まれたというのは私の宝物ですね。それから私の楽曲はR&Bとかロックテイストなものが多いんですけれど、シンフォニックライブを経験して、こういう感じもしっくりくるんだなって発見しました。曲調に合わせて歌い方もクラシックよりに変えてみたりとか。アジアンテイストだったり、洋楽っぽいものだったり……私の場合は、様々な出会いによって音楽の幅が変わってきていると思います。
――確かに、今回のアルバムを聴いてみても、この20年で広がった表現力が凝縮している印象ですね。
倉木:そうですね。実は、このアルバムの中に入っていない候補の楽曲も、たくさんあったんです。アルバムを作るときにはいつも、バラードがあって、ミディアムテンポやアップテンポがあって……って、いろんな楽曲をお届けしようという思いで挑んでいるんですが、今回はこの12曲に絞るのが本当に大変で(笑)。今回『Let's GOAL!〜薔薇色の人生〜』ってタイトルだけ見ると、“もしかして20周年でゴール=締めくくっちゃうのかな?”って思われた方も、いらっしゃるかもしれないんですけれど、そうではないので説明させてください(笑)。
このタイトルには、これまでファンのみなさんといろんな夢を共有してきて、目標を1つ1つ達成してこられたなっていう想いがあったんです。そこで気づいたのが、前向きな気持ちは、夢や目標に向かっていることそのものなんだということ。だから、これからも「ゴールを目指して一緒に頑張っていこうよ」っていうメッセージを込めて、『Let's GOAL!』にしました。そこに『〜薔薇色の人生〜』とつけたのは、やっぱりみなさん幸せになりたくて日々一生懸命頑張っているじゃないですか。なので、それぞれの場所で辛い時、苦しい時があるけれど「笑顔を忘れないでいこうよ」って、これからも共に歩んでいきたいという想いを込めました。
――20周年のゴールを走りきったというよりは、むしろスタートラインに立ったような。
倉木:そうですね。私自身にとっても、新しいスタートですね。あと、『Let's GOAL!』ってよく見ると、Let's GO+AL(アルバム)に見えてきませんか(笑)? これは完全に後付けなんですけれども♪
――うまいこと見つかりましたね!
倉木:はい(笑)。実は、このアルバムの制作段階でいろいろとチャレンジしすぎてしまって、それこそ締切に追われる場面もたくさんあったんです。スタッフさんと「このアルバムを完成させる」っていうゴールを目指して「JUMP!JUMP!」を収録したときには、何より自分自身が楽曲に励まされました(笑)。2020年も近づいていますし、2030年までに国連の『SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)』を達成しようよ、というメッセージもあわせて、多くの方にとっても応援ソングになったらうれしいなと思います。
――出会いといえば、今回のアルバムにはレディー・ガガのプロデューサーを務めたフェルナンド・ガリベイも「body talkin’」で参加されていますね。
倉木:最初は、事前情報を何も知らずに選曲をしていて。洋楽テイストだけど、どこか懐かしくて、“あー、これ作ってみたいなー”と率直に思って選んだのが、フェルナンド・ガリベイさんの楽曲だったんです。でも、洋楽テイストの楽曲って、日本語歌詞がつくとまた印象が変わってくるので、聴いたときのサウンドとか、言い回しをこだわって作っていった感じです。
――こだわり抜いて作ったアルバムだと思うんですが、その中でも「ここに注目してほしい」というポイントはありますか?
倉木:そうですね。まずは曲順からですかね。1曲目から「スタートしていこうよ!」という気持ちから始まって、徐々に加速していくんですけど、ちょっと休憩があって、また盛り上がって、最後「もうひとふんばりだ!」っていう……あれ、これは私がアルバムを作ってたときの心境かな(笑)? で、一番最後に「みんな幸せの扉を開けたよね」っていうことで! とはいいながら、みなさんの好きな順番で聴いていただけたらうれしいです。あくまで、倉木麻衣オススメの順番ということで参考にしてください(笑)。