『フジロック2019』出演アーティストの注目ポイントは? 小野島大が来日61組を徹底解説
今年もフジロックの季節がやってきました。いよいよタイムテーブルも発表され、行動予定表作りにとりかかった人も多いでしょう。例年通り、主な洋楽アーティストを日別・ステージ別に紹介していきます。今年は英米日以外のアジアやオセアニアのアーティストが多いのが特徴。
7月26日(金)
[Green Stage]
The Chemical Brothers
もはや説明の要もないエレクトロニックミュージックの大御所が8年ぶりのフジロック帰還。3年9カ月ぶりの新作『No Geography』を引っさげてのライブです。照明、映像、演出、音響、音楽、すべてが高次に、完璧に融合したスペクタキュラーなショーは、絶対にオーディエンスを裏切りません。彼ら自身もフジロックでのライブを収録した映像作品『Don't Think』をリリースするほど思い入れのある舞台。間違いなく今年のフジのハイライトになるはず。
The Chemical Brothers - Eve Of Destruction
The Chemical Brothers - MAH
The Chemical Brothers - We've Got To Try
Janelle Monae
今年のフジロックの最注目アーティストのひとりが、このジャネール・モネイ。ソウル、R&B、ファンク、ポップ、エレクトロを融合したモダンでキッチュでオルタナティブでハイブリッドな新世代シンガーソングライター。映画女優としても活動する全方位型のアーティストでもあります。奇抜なパフォーマンスにも定評があり、絶対に楽しめるはず。最新アルバムは『Dirty Computer』(2018年)。見逃し厳禁です。
Janelle Monáe - PYNK [Official Music Video]
Janelle Monáe - Screwed (feat. Zoë Kravitz) [Official Music Video]
Janelle Monáe - I Like That [Official Music Video]
Anne-Marie
英国期待の女性シンガーソングライター。エルトン・ジョンからエド・シーラン、RudimentalからClean Banditといった人たちにフックアップされ、特にEDM界で多くフィーチャリングされて名をあげて、2015年にソロデビュー。2018年には1stアルバム『Speak Your Mind』をリリースしています。キュートなルックス、確かな歌唱力。9歳の頃から学んでいる空手では国際大会で優勝するほどの腕の持ち主だそうで、2015年のデビューEPのタイトルは『Karate』です。
Marshmello & Anne-Marie - FRIENDS (Music Video)
Anne-Marie & Ed Sheeran – 2002 [Official Acoustic Video]
Clean Bandit - Rockabye (feat. Sean Paul & Anne-Marie) [Official Video]
Anne-Marie & James Arthur - Rewrite The Stars [from The Greatest Showman: Reimagined]
Red Hot Chilli Pipers
「英国のレッチリ」は各国のフェス常連のバグパイプバンド。3人のバグパイプ奏者とロックバンド、ダンサーまで交えてのステージはまさにお祭り向き。フェスのオープニングを楽しく盛り上げてくれるはずです。
Red Hot Chilli Pipers - Insomnia LIVE
Red Hot Chilli Pipers - Fat Bottomed Girls (Official Music Video)
[White Stage]
THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES
Radioheadのトム・ヨークのソロプロジェクト。盟友ナイジェル・ゴッドリッジと、映像作家タリック・バリの3人編成による音を映像を融合したライブです。4年前の『SUMMER SONIC』でもこの名義でライブを行っていますが、今回はライブツアーの中で曲を育てていったというソロ新作『ANIMA』のリリースを受けてのもの。これまでになく肉体的で躍動的な新作の作風を受け、あの幽玄でアブストラクトでエクスペリメンタルなライブがどんな変化を見せるのか。Netflixで限定公開のポール・トーマス・アンダーソン監督の短編映画も注目。絶対見逃せないライブになりそうですが、悩ましいのがケミカル・ブラザーズとのカブリです。さてどうしたものか。
ANIMA | Paul Thomas Anderson | Thom Yorke | Teaser | Netflix
Tycho
米カリフォルニア在住のスコット・ハンセンのプロジェクト。バンドを率いてのライブとなります。オーガニックで洗練されたアンビエント〜チルウェーブ〜ダウンテンポ〜ポストロックが持ち味ですが、新作『Weather』では、女性ボーカリストのセイント・シナーが加わって、ドリーミーでノスタルジックな甘さを含んだシンセの音や空間的なサウンド構成に、ある種の官能性やエモーショナルなドラマ性が付加されることになりました。フジではそのセイントも加わり、従来の楽曲に加え、『Weather』の世界もたっぷり再現してくれるでしょう。
Tycho - Pink & Blue (Official Music Video)
Tycho LIVE @ Sziget 2017 [Full Concert]
Gary Clark Jr.
テキサス出身の新世代ブルースマン。豪放磊落なギタープレイと、エモーショナルなボーカル、エネルギッシュなライブが魅力です。ファンクやR&B、ロックの要素も加え伝統的ブルース形式をモダナイズした最新作『This Land』を引っさげてのフジ登場。ライブではまず外しがない人。ビール片手に盛り上がりましょう。
Gary Clark Jr - This Land [Official Music Video]
Gary Clark Jr - What About Us [Official Music Video]
Gary Clark, Jr Live at Glastonbury 2016
King Gizzard & The Lizard Wizard
オーストラリアのサイケデリックロックバンド。轟音ヘヴィロックから、ブルース、カントリー、ジャズ、テクノポップ風、グラムロック風まで雑多な音楽性を内包した新作『Fishing For Fishies』を引っさげての来日です。エネルギー溢れるライブパフォーマンスがかなり面白そうです。
King Gizzard & The Lizard Wizard - Fishing For Fishies (Official Video)
King Gizzard & The Lizard Wizard live, Øya Festival 2018
[Red Marquee]
Mitski
日本生まれブルックリン在住のミツキ・ミヤワキ。自主制作でリリースを重ね、3作目『Bury Me At Makeout Creek』(2014年)が各メディアで絶賛され一躍知名度を上げました。Dirty Projectorsで知られる<Dead Oceans>と契約し、4作目『Puberty 2』(2016年)、昨年リリースされた5作目『Be The Cowboy』が最新作です。自らのアイデンティティを問う歌は生々しくエモーショナル。毅然としたクールネスを感じさせるたたずまいも魅力的。
Mitski - Geyser (Official Video)
Mitski - Happy (Official Video)
Mitski - Your Best American Girl (Official Video)
Mitski - Full Performance (Live on KEXP)
Toro Y Moi
現在のAORやメロウソウル再評価の源流と見なされることも多いトロ・イ・モアことチャズ・バンディック。メランコリックでメロディアスでソフィスティケイトされた音楽性、温かみのある開放的でフレンドリーな雰囲気は、苗場の空気感にとてもよく合います。フジは2013年以来の登場ですが、なんとなく学生っぽい垢抜けなさが微笑ましかった前回に比べ大きく成長した姿を見せてくれるはず。最新作は『Outer Peace』。
Toro y Moi - "Freelance" (Official Music Video)
Toro y Moi: NPR Music Tiny Desk Concert
Sabrina Claudio
エキゾティックな美貌と22歳とは思えない色気が目を惹くマイアミ生まれのR&B〜ネオソウル女性歌手。17歳の時にYouTubeにビヨンセのカバー「Heaven」を発表したのをきっかけに注目されるようになり、EPやミックステープを経て去年、正式な1stアルバム『No Rain,No Flowers』をリリースしました。歌唱力と魅力的な声を兼ね備えた実力派ですが、やはりその華やかなビジュアルに注目が集まります。
Sabrina Claudio - "Unravel Me" (Official Video)
Sabrina Claudio - Belong To You (Official Video)
Sabrina Claudio / Heaven (Beyoncé Cover)
Shame
サウス・ロンドンの5人組。Dirty ProjectorsやMitskiなどが所属する<Dead Oceans>と契約し、昨年1stアルバム『Songs of Praise』をリリースしました。ワイルドでエネルギッシュでゴロゴリのカッティングエッジなポストパンクを身上とします。昨年には初来日公演も。ライブでより一層本領を発揮するタイプなので期待大です。
Shame - Concrete (Official Video)
Shame | Juan's Basement Live
[Planet Groove]
Kaytranada
ケイトナダはハイチ出身カナダ拠点のプロデューサー〜DJで、2010年ごろから活動を始め、やがてモブ・ディープやOdd Future、The Internet等のプロデュースを手がけるようになり、2016年に<XL Recordings>から1stアルバム『99.9%』をリリースしています。J・ディラの影響を感じさせるアブストラクト〜エレクトロヒップホップ〜R&Bは才気に富んでいますが、DJプレイのドープで繊細で都会的なソフィスティケイトされたサウンドも素晴らしい。深夜のレッド・マーキーの劈頭を飾るに相応しいショーが見られそうです。
KAYTRANADA - GLOWED UP (feat. Anderson .Paak)
Nicola Cruz
フランス生まれのプロデューサー〜DJで、南米の民俗音楽やデジタルクンビア、スローハウスやミニマルテクノを融合した独自のミクスチャーサウンド「アンデスステップ」で知られるニコラ・クルース。この手の「エレクトリック・フォルクローレ」と言われるエキゾティックかつトライバルなダンスミュージックは世界的なブームの兆しを見せていますが、その第一人者がこの人です。モダンかつトラディショナル、グローバルでありながらリージョナルなグローカルビーツの進化形であり、「ワールドミュージック」の最新型でもあります。かなりのイケメンですね。27日のDay Dreamingにも出演。
[Field Of Heaven]
The Lumineers
米デンヴァーの3人組。ウェズリー・シュルツの力強く情感豊かなボーカルを中心としたフォーキーなサウンドです。フィールド・オブ・ヘヴンという場はぴったり。2016年の2ndアルバム『Cleopatra』以来の新作『III』を9月に控えての2年ぶりの来日です。「Gloria」はそこからの先行シングルですが、覚えやすくキャッチーな楽曲で、ライブでは盛り上がりそう。
The Lumineers cover Creedence Clearwater Revival "Have You Ever Seen The Rain?"
The Lumineers - Sleep On The Floor (Official Video)
The Waterboys
英国スコットランド出身のマイク・スコットを中心に1983年に結成されたのがThe Waterboys。トラッドフォーク、カントリー、ジャズ、ゴスペル、ロックンロール、パンクなどの影響を受けたソウルフルで熱い音楽性、リリカルで美しい歌詞などで熱狂的な人気を誇っています。2014年のフジロックで初来日を果たし長年のファンを狂喜させたのは記憶に新しいところ。マイクは2016年に日本の漫画家ろくでなし子と結婚したことでも話題となりました。新作『Where The Action Is』には、日本にインスパイアされた「代々木公園にて」「下北が好きです」といった楽曲が日本盤ボーナストラックで収められています。
The Waterboys - Ladbroke Grove Symphony (Official Video)
The Waterboys: "Fisherman's Blues"
NST & The Soul Sauce meets Kim Yulhee
韓国発のレゲエ〜ダブ8人組。韓国の伝統音楽パンソリとレゲエを合体させた2ndアルバム『Version』は日本を代表するダブ・エンジニア内田直之がミックスとプロデュースを担当しています。K-POPだけが韓国の音楽ではありません。27日のCRYSTAL PALACE TENTにも出演。
뺑덕~중타령 - 노선택과 소울소스 meets 김율희(NST & The Soul Sauce meets Kim Yulhee) LIVECLUBDAY
[Gypsy Avalon]
Upendra and friends plus Mr. Sunil
2007年結成のネパールのバンド、Upendra and friends plus Mr. Sunilは、ネパールの民俗音楽を西洋楽器とモダンなポップ感覚で演奏します。2017年にもフジロックの木馬亭に出演。澄んだ自然の空気を吸い込むような清冽で美しいサウンドを聴かせてくれました。今回共演するミスター・スニールはネパールのフルート奏者。こういう音楽がさりげなく鳴っている光景こそが、フジロックです。
Upendra and Friends | Hits FM Music Awards 2075
[The Palace of Wonder]
Matador! Soul Sounds
今年のフジロックでも屈指の注目と言えるのがこのMatador! Soul Sounds。The New MastersoundsとSouliveのメンバーが組んだジャズファンクバンドです。シーン屈指の実力者ががっぷり四つに組んだ切れ味鋭いグルーヴが素晴らしい。2人の女性ボーカルも華やかでソウルフルでご機嫌です。27日のフィールド・オブ・ヘヴンにも出演。
Matador! Soul Sounds *1st ever show* (full complete show) - Ardmore, PA - 9/22/2017
CUMBIA KID meets CHONTA DJ
クンビア・キッドとはギャズ・メイオールの弟/ジョン・メイオールの息子ジェイソン・メイオールのこと。屈指のクンビアコレクターとしての彼の顔を表す。共演するチョンタDJことアレハンドラ・ゴメスはコロムビアのプロデューサー。2人によるカリビアンダンスミュージックのDJです。27日のBLUE GALAXYにも出演。
EL HIJO DE LA CUMBIA a.k.a EGO.360
エル・イホ・デ・ラ・クンビアは、ブエノスアイレス出身のデジタルクンビアのプロデューサー/DJ。昨年リリースの最新作『GENERO GENERO』を引っさげての、これが初来日。ニコラ・クルーズあたりと比べるともっと下世話で庶民的なエネルギーが感じられるのが特徴と言えるでしょう。今回はバンドライブではなくDJセットでの演奏と思われますが、深夜のパレス・オブ・ワンダー、お酒も入ってかなり盛り上がりそう。
El Hijo de la Cumbia (Live Act) / Huepaje - @BuenosAires
ZOO
ZOOと書いてソオーと読む。スペインはバレンシアの6人組ヒップホップ〜ミクスチャーバンド。地元では圧倒的な人気を誇り、ライブは相当に盛り上がる様子。ストリート直系の荒々しくメッセージ色濃いサウンドは、まさにフジロック好みと言えそうです。27日のホワイト・ステージにも出演。
ZOO - KARRER DE L'AMARGURA ft. Fermin Muguruza, Xabi Arakama eta Zo-Zongó!! (Basque RMX)
ZOO - CANÇONS D'OFRENA ft. JazzWoman
ZOO - Vull (Live - Rabolagartija 2018)
[Cafe de Paris]
Ouzo Bazooka
Ouzo Bazooka はイスラエルの5人組で、メンバーには日本人女性もいます。レトロなサーフロックとサイケデリッ・ロックを融合し中近東ムードを振りかけたような音楽性ですが、それにギターポップを掛け合わせて「渋谷系」に近づけたような曲もあって面白い。その曲「Falling」は、日本の若者の日常風景をモノクロで捉えたMVです。単独公演もあり。
Ouzo Bazooka - 1001 Nights (Official Video)
Ouzo Bazooka - It's A Sin (Official Video)
[オールナイト・フジ]
Jeff23
ロンドン出身ベルリン拠点のDJ/プロデューサー、ジェフ23は、アンダーグラウンドなレイヴパーティーの伝説的クルー、Spiral Tribeの一員だった男。その後もハードなミニマルテクノやディープテクノをスタイルとしていて、その徹底してアンダーグラウンドでストイックな姿勢とサウンドには、緩むことのない強固な意志を感じます。深夜のオールナイト・フジ。絶好の舞台が整いました。
Jeff 23 & Crystal Distortion - U Boat