『フジロック2019』出演アーティストの注目ポイントは? 小野島大が来日61組を徹底解説

『フジロック 2019』出演アーティスト解説

7月28日(日)

[Green Stage]

The Cure

The Cure - Burn (Glastonbury 2019)

 The Cureのフジロック出演は3回目。もちろん私は過去2回とも見てますが、特に印象に残ってるのは2013年です。今回と同じグリーンステージのファイナルアクトでしたが、どうしても裏でやっていたThe xxを見たくて、途中抜けしてホワイトステージに行き、すっかり堪能して戻ってきたら、まだキュアーがやっている! それから軽く1時間以上、たぶん3時間はやったんじゃないでしょうか。それから5年、ロックの殿堂入りも果たし、そろそろ新作の噂も聞こえてきたこのタイミングでの来日。とにかく長丁場になるのは間違いないので、事前の水分は控えめに。

THE CURE Just Like Heaven @ Rock & Roll Hall Of Fame Induction Ceremony 2019
The Cure - A Forest (live at Pinkpop 2019)

Jason Mraz

Jason Mraz - Love Is Still The Answer (Official Video)

 もはや説明の要もない、アメリカを代表するシンガーソングライター、ジェイソン・ムラーズ。最新作『Know.』を引っさげての登場です。

Jason Mraz - More Than Friends (feat. Meghan Trainor) [Official Video]

Hiatus Kaiyote

Hiatus Kaiyote - Nakamarra (Live Alive on Fuse TV) (Live Alive on Fuse TV)

 オーストラリア発のフューチャーソウルバンド。何度か来日していますが、フジロック出演は意外にも今回が初めてで、今までなぜ出演していなかったのか不思議なほど。フェス経験は豊富なので、彼らの自由奔放で開放的なパフォーマンスは、絶対に苗場の空気に馴染むはず。ネイパームのソロ曲もやってくれると嬉しいですが、さてどうなるか。ホワイトステージのInteractivoとモロに出演時間がかち合っているのが個人的には残念。

Hiatus Kaiyote - Breathing Underwater (Live Alive on Fuse TV)
Nai Palm - Homebody (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

Hanggai

Hanggai “ Big Band Brass” Tour, MAO Livehouse Shanghai, 16/03/2019.

 Hanggaiは内モンゴル自治区の6人組。伝統楽器やホーメイの唱法などを取り入れ、モンゴルの伝統音楽とロック、ブルース、パンクなどをクロスオーバーさせた音楽性は雄大にして情感豊か。2008年の1stアルバム『Introducing Hanggai』はピッチフォークで8.0点を獲得するなど欧米でも高い評価を受け、同年フジロックにも出演しました。それ以来の登場となる今回は、大規模なホーンセクションを加えて大幅なサウンド刷新を図った新作『Hanggai Big Brass Band 2019 = 杭盖与铜管』を引っさげての来日。圧倒的なスケールの迫力満点の大陸的ロックが聴けるはず。

Hanggai - The Rising Sun / 初生的太阳
Hanggai - The Vast Grassland / 辽阔的草原
Hanggai @ Fuji Rock, Xiger Xiger

[White Stage]

James Blake

James Blake - Barefoot In The Park

 現代最高峰のシンガーソングライターとしての地位を不動のものにした感のあるジェイムス・ブレイク。フジロック出演は3年ぶり3回目。4作目『Assume Form』を引っさげての登場です。先日のグラミー賞で「最優秀ラップ・パフォーマンス賞」を受賞、今やボーカリストとしてもプロデューサーとしてもトラックメイカーとしても、現代ポップミュージックの最重要アーティストのひとりと言っていいでしょう。『Assume Form』は現在進行形のR&Bやヒップホップに接近して、より開かれたコンテンポラリーなポップミュージックを作り上げました。穏やかな凪のごときサウンドの居心地の良さは、果たしてライブではどうなるのか。見逃せません。

James Blake- Mile High (feat. Travis Scott and Metro Boomin)

Vince Staples

Vince Staples - FUN! (Official Video)

 ヴィンス・ステイプルズは間違いなく最高のヒップホップアーティストの1人でしょう。その誰にも似ていない。誰ともつるまない独自の立ち位置と歯に衣着せぬ発言、コンプトンの荒廃し町並みを体現する冷たくざらりとしたトラックとリアルなリリック、巧みなフロウなど、ケンドリック・ラマーと比肩できるのは彼のほか、ほんの数人でしょう。現代ポップミュージックの最突端。

Vince Staples - Big Fish (Official Video)
Vince Staples - Rain Come Down

HYUKOH

HYUKOH(혁오) - LOVE YA!

 「韓国のサチモス」なんて異名はすでに過去のものになってしまった4人組。内省的で思索的なボーカルと甘く流れるような心地よいメロディ、耳触りが良いだけでなくどこか喉の奥にひっかかるような異物感の残るサウンドなど、どこにもないHYUKOHだけの世界を獲得しています。サウンドプロダクションのレベルは欧米並み、でもアジアの片隅に住む若者の心情をさりげなく描写した歌は、彼らにしかできないものです。フジロック初出演。ぜひお試しを。

HYUKOH(혁오) - Gang Gang Schiele
HYUKOH (혁오) - GOLD (Chet Faker)

Banda Bassotti

Banda Bassotti / Questa Notte

 Banda Bassotti はイタリアのベテラン8人組。フジロック参加はなんと14年ぶり3度目。しかしストリート直結のレベルミュージックのとしての気概を忘れないガッツ溢れるサウンドとストイックな姿勢は健在です。

Banda Bassotti - en vivo @ "Villaggio Globale" (Roma) 17-03-2001 [HQ sound]
Banda Bassotti-Luna rossa

[Red Marquee]

Chon

CHON - Pitch Dark (Official Music Video)

米カリフォルニアのポストロック4人組。超絶技巧による複雑極まりない楽曲を、カラリと乾いた音色で鳴らします。日本にも同じような方向性のバンドはいますが、西海岸らしい明るく開放的なムードが、しかめつらしいストイシズムとは一線を画していて、理屈抜きに楽しめるはず。来日は2度目ですがフジロックは初登場。どちらかといえば屋内のレッド・マーキーより野外の方が向いていそうですが、注目のアクトなのは間違いありません。

CHON - Peace
CHON - Waterslide (Official Music Video)

Phony Ppl

Phony Ppl - Before You Get A Boyfriend [Official Video]

 Phony Pplは「西のThe Internet」と異名をとるブルックリンの5人組。ゆったりしたテンポのメロウでアーベインなR&B〜ヒップホップソウル。The Internetよりもレイドバックしたサウンドで、よりシンプルで飾りがありません。素朴で装飾がない分、生成りの良さがあります。楽曲はポップでメロディアスで、今のシティポップにも通底するメランコリーがあります。さまざまなラッパーのバックバンドを務めてきただけあって演奏力は高く、安定感も抜群。とくに日本で最初にCD化された最新作『mō’zā-ik.』は、すでに70年代ソウルの古典と肩を並べるような風格すら感じられ、素晴らしいですね。この先さらに大きく伸びていくであろう可能性を感じさせる大物。今年初頭の初来日公演に続いての初フジロックです。

Phony Ppl - Way Too Far [Official Video]
Phony Ppl - Either Way | A COLORS SHOW
Phony Ppl: NPR Music Tiny Desk Concert

Stella Donnelly

Stella Donnelly - Tricks

 ステラ・ドネリーはオーストラリアのシンガーソングライター。2017年デビュー、今年になって1stアルバム『Beware of the Dogs』をリリースしたばかりの26歳です。キュートなキャラクター、ウイットに富んだ歌詞、愛嬌のある振る舞い、人懐っこい表情(どことなく宮崎あおいに似ている)、そして男社会の旧弊な価値観や男性優位な風潮に異を唱える姿勢など、どことなく新世代のリリー・アレンといった趣があります。昼下がりのレッド・マーキーに似合いそう。

Stella Donnelly - Die
Stella Donnelly - 'Boys Will Be Boys' (Official Music Video)
Stella Donnelly | Full Set | Live at Sydney Opera House

[Sunday Session]

The Comet Is Coming

The Comet Is Coming - Summon The Fire (Glastonbury 2019)

 The Comet Is Comingはロンドン発のシンセサイザー、サックス、ドラムスという変則3人編成のジャズインストバンドです。今年になって2ndアルバム『Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery』で名門<Impulse! Records>からメジャーデビュー、大きな話題を呼びました。コズミックな立体的音響にサイケデリックでヒプノティックなエフェクトが飛び交い、ファンキーでトライバルなビートとフリーキーなサックスのブロウが音楽全体を力強くリードしていく。ジャズにとどまらずベースミュージックやダブ、ヒップホップ、アフリカまで浸食していく音楽性の広さがポイント。近来にない骨太な大物感があり、ライブが非常に楽しみです。

The Comet Is Coming - Blood of the Past (feat. Kate Tempest)

Quantic

Quantic - Atlantic Oscillations

 ここ数年コロンビアに在住し、かの地の伝統音楽とヨーロッパのダンスミュージックの融合を強力に押し進めてきた英国のプロデューサー/DJのQuanticことウィル・ホーランドがその活動に一区切りをつけニューヨークに移住、発表したのが『Atlantic Oscillations』。ニューヨーク、LA、フィラデルフィア、ロンドン、そしてコロンビア〜中南米のラテングルーヴを血肉にして作り上げた優雅にしてクールな傑作を引っさげてフジロックに帰ってきます。DJではなくソロライヴセットということで、より最近の彼の音楽指向に密着した内容になりそう。3日目の深夜という厳しい時間帯ですが、体力を温存しておきましょう。

Quantic - You Used To Love Me [Official Audio]
Quantic @ The Lot Radio (June 21st 2019)

[Field of Heaven]

Khruangbin

Khruangbin @ Villain | Pitchfork Live

 60~70年代の東南アジアの音楽に影響を受けたというメロウな脱力無国籍サウンドで知られるテキサスの3人組Khruangbin。キッチュで摩訶不思議なエキゾ空間に浸れそうです。27日のTHE PALACE OF WONDERでは、DJ セットで登場します。

Khruangbin - Evan Finds The Third Room (Official Video)

Vaudou Game

VAUDOU GAME 'Tata Fatiguée'

 Vaudou Gameはトーゴの6人編成アフロファンクバンド。フェラ・クティ直系の豪快なオールドスクールアフロビートに、キャッチーで覚えやすくシンガロングできそうな歌謡性の強いメロディが乗り、とても親しみやすい。何も考えず歌って踊りたいならこれ。同じ日のCRYSTAL PALACE TENTにも出演します。

VAUDOU GAME - LA VIE C'EST BON

The Paradise Bangkok Molam International Band

The Paradise Bangkok Molam International Band at Glastonbury 2016

 The Paradise Bangkok Molam International Bandは、タイの6人組。タイやラオスの伝統音楽にジャズやソウル、ラテン、レゲエ、ロックのエッセンスを融合した、これも「ワールドミュージック」と言えるでしょう。非常にわかりやすくノリやすいダンスミュージック。

THE PARADISE BANGKOK MOLAM INTERNATIONAL BAND live @ Hautes Fréquences Festival 2016

 以上、駆け足になりましたが、例年以上に国際色が強くバラエティに富んだラインナップはフジロックらしいと感じました。では、現地でお会いしましょう。

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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