SETA、各界のキーマンを魅了する新時代の才能 佐橋佳幸らの証言や2ndワンマンから考える

SETAが持つ、SSWとしての可能性

 シンガーソングライターのSETA(セタ)がワンマンライブ『塩こしょう少々 Vol.2』を都内のピース オブ ケイク イベントスペースで開催した。SETAが情報発信の主戦場としているWebサービス「note」は、この会場を所有する株式会社ピースオブケイクが運営しており、その縁もあってのロケーション。本来は講演会などをおこなうためのイベントスペースであり、ライブ会場然とした造りではないものの、ウェービーなピンク色の髪、真っ白のロングワンピース姿で現れたSETAは、新人らしからぬ堂々とした姿勢を崩さず朗らかに歌い、喋り、その胆力に感心させられた。

SETA

 ライブの開幕を告げた曲は「大人記念日」。両親からの期待に応えようとする幼い子供の心情がテーマの楽曲だ。〈大人になってしまった〉と4回繰り返すサビの歌メロは、3回目で伸びやかに上がり、4回目で下がる。その抑揚が童謡的で、3歳から続けているという声楽の確かな教養を感じさせる歌声も相まって「みんなのうた」を彷彿とさせるような風合いを感じさせる。

 続く「純愛マーチ」では、サビ前のかなりハイトーンで歌い上げる1節が大きな聴きどころになっており、やはり声楽の基礎に裏打ちされた安定感で歌いきる。長年の訓練に裏打ちされた歌唱力と、ストレートな言葉遣いの正攻法にポップな歌詞。「虹色ペダル」「はれるよ」といった、タイトルからして正統派J-POPなポップソングの持ち玉をすでにいくつも持っていて、そのどれもが今回のキーボード/アコースティックギター/ベースというシンプルな編成とよくマッチしている。このライブのアレンジを聴いていると、ストリートでのパフォーマンスにも親和性が高いように思われた(佐橋佳幸(Gt)、有賀啓雄(Ba)ともにJ-POPの歴史において重要な大御所プレイヤーなので実現は難しいだろうが)。

 SETAを取り巻くプロジェクトチームは盤石の布陣だ。そもそも所属する<渋谷のレーベル>は、ギタリスト・佐橋佳幸やベテランA&RらがSETAのために立ち上げたレーベル。佐橋は小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」や藤井フミヤの「TRUE LOVE」など数々の名曲に参加し、多くの人の耳に残るイントロのフレージングは『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)でも大きく取り上げられた。今回のライブで披露された「金魚鉢」も、佐橋のハーモニクスを多用したいぶし銀のフレーズが冴え渡る一曲だ。

 そのほかにもSETAは、電気グルーヴ、松任谷由実、とんねるずらの『オールナイトニッポン』を担当したニッポン放送のプロデューサー、節丸雅矛からもバックアップを得て、インターネットラジオ『オールナイトニッポンi』のパーソナリティにも抜擢された。ライブ中盤ではその公開放送が実施され、彼女の人柄が窺い知れるゆるく和やかな時間が流れた。

 彼女はこのように、日本のポップミュージック史に多大な寄与を果たしてきた業界人や往年の名プレイヤーを惹きつける不思議な魅力を持っている。一体彼女の何が、彼らに可能性を感じさせるのか。佐橋はこう語る。

「輝きを携えながら、どこまでも伸び続けるハイトーンボイス。独特の視点で紡がれる言葉たち。彼女から放たれるものの中から、特に"これは"というものをチョイスするのは僕にとっては簡単なことです。

 それよりも“SETA”という人物そのものに惹かれます。曲を作って歌って……というティピカルな表現だけではなく、アート全般、かつパフォーマンスのすべてが彼女の表現であることに惹かれるのです。ゆえに予測不可能な明日が楽しみでなりません」

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