ゆずはルーツを重んじながら未来へ進む 新曲「SEIMEI」と弾き語りドームツアーのメッセージ
また、「SEIMEI」のリリースと同時に、これまでリリースされた全楽曲310曲(一部楽曲を除く)がストリーミング解禁されることも大きな話題を集めそうだ。1998年デビュー曲「夏色」から最新曲「SEIMEI」に至る22年の軌跡を追ってみると、ゆずの音楽が“変わらないもの(ルーツミュージック)”に根差しながら、その時期のトレンドを効果的に取り入れながら、常に“新しいポップミュージック”を体現してきたことがわかる。軸になっているのは、アコースティックな響きをたたえた二人の弾き語り。そこにロック、エレクトロ、EDM、ラテン、歌謡曲、R&B、ヒップホップなどのテイスト(“匂い”と言ってもいだろう)を加えることで、“らしさ”と“新しさ”を共存させてきたのだ。
そのスタンスは、サウンドだけではなく、歌詞にも共通している。デビュー当初は自分たちの身の回りにある風景、そのなかで生まれる感情を抒情的に描くことが多かったが、活動の規模の拡大、リスナーの数の増加とともに楽曲のメッセージ性も自然と大きくなり(その最初の集大成が「栄光の架橋」だろう)、今回の新曲「SEIMEI」にまでつながっている。どんなに広大で深遠なことを歌ったとしても、“等身大の目線で描く”という姿勢を貫くことで、リスナーの心をしっかりと掴み、揺さぶる。この一貫したスタイルもまた、ゆずの変わらない人気の理由の一つなのだと思う。
『ゆず弾き語りドームツアー2019 ゆずのみ~拍手喝祭~』で彼らは、これまでのキャリアを網羅するようなパフォーマンスを見せてくれるはず。その根底にあるのは、「SEIMEI」と同様、“ルーツを大事にしながら前に進む”という意思だ。弾き語りの路上ライブからはじまったゆずが、その根本のスタイルを変えず、日本最大級の会場で高らかに歌とギターを響かせる。それは二人の歴史にとって、きわめて大きな意味を持つことになるだろう。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。
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※Apple Music独占先行にて5月10日(金)スタート、他サービスは5月15日(月)〜