BTS『MAP OF THE SOUL』、前シリーズ以上のインパクト “脱EDM”への回答示すサウンドを分析
BTSのニューミニアルバム『MAP OF THE SOUL: PERSONA』が4月12日にリリースされた。一連の『LOVE YOURSELF』シリーズから『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』と『LOVE YOURSELF 結 'Answer'』がアメリカのビルボードアルバムチャートで初登場1位を獲得し、歴史的な快挙を成し遂げた彼ら。次の一手に注目が集まるなかでのカムバックは、もはや世界的なポップアクトとなったプレッシャーをものともせず、ちょっとした余裕さえ垣間見えるような一作となっている。
オープニングを飾る「Intro: Persona」では、ソウルフルかつロックのサウンドもかけ合わせたビートの上でRMがラップを披露して見せるが、一転してリード曲の「작은 것들을 위한 시 (Boy With Luv)」にはホールジーをフィーチャーし、さらに「Make It Right」にはソングライターとしてエド・シーランも参加。ニッキー・ミナージュの客演が話題を呼んだ前作から一転、ポップス色を強めた印象だ。実際、アグレッシブなサウンドはやや抑えられ、昨今のポップスのミニマリズム志向を踏まえたシンプルなビートが揃っている。メンバーたちの賑やかな個性に彩られたボーカルがよく映えるアレンジだ。メロディアスなトラップ風R&Bバラード「HOME」や、ラップロック的なビートがクライマックスで疾走感あふれるエイトビートに姿を変えるラスト曲「Dionysus」も素晴らしい。K-POPの他のボーイバンド勢にも見られる脱EDMの傾向に、彼ららしい回答を示している。
彼らのこれまでを簡単に振り返ると、ヒップホップ愛を打ち出しラップを軸にしたハードな楽曲でならした初期から、『花様年華』のコンセプチュアルな連続ミニアルバムではポップスとしての洗練を増し、EDM的なサウンドも柔軟に取り入れるようになっていった。このように、ストイックな音楽性から、さまざまなジャンルを飲み込む貪欲なポップスへと転換した彼らの成果が、Gqom(ゴム)のサウンドを取り入れた「IDOL」だったと言っていいだろう。アフリカ発のダークなダンスミュージックをK-POP色に染めたこの曲は、「自分たちは唯一無二のポップアイコンであり、もはやなんと呼ばれようと気にしない」という自己肯定を高らかに宣言するものだった。
とすれば、楽曲の面から言って本作はまさに有言実行。シンプルなリフと控えめな展開をポップに聴かせるプロダクションとパフォーマンス力の高さを存分に見せつけ、ポップスに新しい世界基準をつくりだしそうな勢いだ。