BTS『MAP OF THE SOUL』、前シリーズ以上のインパクト “脱EDM”への回答示すサウンドを分析

 ただ、華やかな楽曲が詰め込まれる一方で、それらの歌詞が伝えるメッセージはやや内省的だ。なにしろ「アーティストと呼んでもいい、アイドルと呼んでもいい、自分を君がどう呼ぼうが気にしない」と歌い、「自分は自分が何者だかわかっているし、何が欲しいかもわかっている。絶対変わることはない」と言い放った「IDOL」から一転、「Intro: Persona」ではいきなり「自分は何者なんだろう?」という問いかけから始まるのだ。“家”につかのまの安息を求める「HOME」にはポップアイコンとしての仮面(ペルソナ)を脱ぎ捨てた彼らの人間的な疲弊が綴られ、小さな個人が世界的なスターになることの困惑がにじむ。一方で「70億の人びとにそれぞれ小さな宇宙が宿っている」と諭す「소우주 Mikrokosmos」や、ギリシア神話に材をとった「Dionysus」が語る壮大なスケールの物語は、このシリーズが単に“スターの素顔”を見せるにとどまらない奥行きを持っていることを予感させる。過去の楽曲からの参照も含みつつ、次のステージにつなげていく周到さも見事。

 BTSはK-POPアイドルとして世界で活躍する道を着々と築いている。『MAP OF THE SOUL』のシリーズは、ともすれば『LOVE YOURSELF』以上のインパクトを音楽的にもコンセプト的にも与えるかもしれない。さきごろ開催された2019年の『コーチェラ・フェスティバル』でも熱狂的に迎えられたBLACKPINKは、K-POPらしいひねりとタフでクールなガールクラッシュ路線をいっそう突き詰め、“BTSの次”となるブレイクが期待される。もっとも、コーチェラでのオーディエンスの狂騒を見るかぎり、すでに期は熟している感はある。活躍のスケールを拡大したあとにどのような道がありうるか、そのロールモデルとしてもBTSからは目が離せない。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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