Nissy、“繋がり”で構築された独自のエンターテインメント AAA 西島隆弘としての姿と比較
2015年11月に公開された「Playing With Fire」のMVは、白い衣装に身を包んだNissyがダンスをする内容だ。そして最後にはキャンドルの火を吹き消し、黒い衣装へと変化する。この時に吹き消されたキャンドルの火の粉は、2016年2月に公開された「SUGAR」のオープニングへと繋がれ、衣装も「Playing With Fire」のエンディングで着た黒いものとなっている。
また、MVから他のクリエイティブへの連携を作るのも上手い。2016年に開催された『Nissy Entertainment 1st LIVE』のチケットデザインは、「どうしようか?」のMVに登場するインビテーションのデザインになっていた。
ターニングポイントは、2016年3月24日にリリースした1stアルバム作品『HOCUS POCUS』だった。“Story Maker(ストーリー・メーカー)”として全楽曲をトータルプロデュースした能力の高さに結実した作品だ。楽曲が持つ世界観を物語を通じて、魔法をかけるかのように演じることで媒介となり具現化していく才能の発露。海外でいえば、スタイリッシュな映像の見える作風が魅力のジャスティン・ティンバーレイクや、ジャスティン・ビーバーなどを彷彿とさせるスマートなイメージだ。憂いを含んだ伸びのある美しき歌声が、様々なシーンを鮮烈に輝かせた。
ポップを極め、ビジュアライズされた楽曲が紡ぎ出すストーリーテリングな展開。受け手の想像力を喚起させる、自由度の高い虹色のポップミュージック。作曲家、作詞家、編曲家、トラックメーカー、ミュージシャンなど、様々なクリエイターの力を、役割シェア型の曲作り=“Co-Writing(コーライティング)”としてまとめあげることで、目指すべき作品イメージをプロフェショナルに表現していくのがNissyスタイルだ。自己完結型のオールインワン型のスタイルではないことが、他者を巻き込んでいく“シアトリカル(演劇的)”な作品性と掛け合わさり、さらなる化学反応=可能性を広げている。
タイアップとして楽曲が関わる際の気配りにも抜け目がない。コスメブランドM.A.CのCMソングとして起用された「LOVE GUN」では、M.A.Cのルージュで曲タイトルを書くところから映像がはじまる。最新曲の「トリコ」では映画『あのコのトリコ。』でヒロインを務める女優、新木優子を起用するなど、彼のクリエイションにはすべて“もしかしたら?”と思うサプライズな要素が含まれているのだ。
このように細やかな伏線を仕込むのは、ファンを大切にしているからに他ならない。2016年12月にはファンへ感謝のプレゼントとして「まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL」のMVをクリスマスバージョンで公開。楽しんでくれるファンへ向けて伝達手段を考え抜き、最大限に届けようと努力を忘れない。その姿勢は、ライブパフォーマンスにも表れている。
AAAにおける西島隆弘は、グループ結成当初から圧倒的なセンター兼メインボーカルである。なのに、そのパフォーマンスに傲ったような様子は一切ない。自分が第三者から望まれていることを最大限にギブするということをサラッとやってのけるのがNissyのすごさだ。MCで宇野実彩子をからかってみたり、少年のような表情で日高光啓や與真司郎たちとふざけ交じりにダンスをしたり。伸び伸びとした自由な表情が見られるのが、グループであるAAAでみられる魅力のひとつかもしれない。
一方でソロ活動のNissyは、徹底したエンターテイナーだ。グループとは違い視線を一点に集める姿からは、座長としての確固たる信念を感じ取ることができる。ステージに存在しているのは、変幻自在のポップスターNissyであって西島隆弘ではない。そんな彼の表現を後押ししているのは、数々の演技経験による影響が大きい。2009年に出演した園子温監督作『愛のむきだし』では映画初主演を務め、第83回キネマ旬報ベスト・テン・新人男優賞を受賞した。また、『OK? ~君に贈る24時間~』では監督と主演を務めあげた。作り手として、役者として表現と向き合ってきた彼だからこそ、コンサートにおいてもより没入感の高いステージを作り上げていくのだろう。
プロ意識を高く持ち、己のパフォーマンスを研磨し続けるとともに、プロデュース能力を高め、ファンを大切にし続けるNissy。その姿は、立派な日本を代表するエンターテイナーでありポップスターだ。もはや「AAAのメンバーで、ソロ活動やってる人でしょ?」なんて戯言では済まされない。
(文=ふくりゅう、坂井彩花)