細野晴臣『HOSONO HOUSE』なぜ海外で再評価? “観光音楽”がいま注目集める理由を考察
また“Hosono had a concrete belief in the plasticity of genre.”(細野はジャンルの可塑性を堅く信じていた)との一節も。解釈を加えるとすると、“ひとつのジャンルに深く傾倒し、それを取り入れることで、自分の音楽の形に変えることができる”というニュアンスだろうか。この一文もまた、変遷を続けた細野の音楽キャリアのある部分を捉えていると言えそうだ。
さらに『はらいそ』『CHOCHIN MOON』『フィルハーモニー』『オムニ・サイト・シーイング』について言及した後、「これらのアルバムの再発によって、ジャンルの境界性を緩やかに壊してきた細野の歴史の一部を垣間見ることができる」と締めている。インターネットの普及により、すべての地域、あらゆるジャンルがフラットに存在している現在において、数十年前に細野が提示した“観光音楽”ーー世界各国の音楽をまるで観光するように探求し、自らの音楽に取り入れ、独創的なポップミュージックへと昇華するーーが世界中の音楽ユーザーに注目されるのは、当然の結果なのかもしれない。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。