sumikaが語る、『君の膵臓をたべたい』と築いた幸福な関係「僕らの進み方は間違っていなかった」

sumika『キミスイ』楽曲の制作秘話

「春夏秋冬」を15回書き直した理由

――片岡さんからのそういうボールを受け取って、みなさんはどのような気持ちで臨んだんですか?

黒田:いつもはフレーズを付けて、聴いて、直して……っていうふうに作業するんですけど、「ファンファーレ」はほとんど直さなかったですね。難しいことを詰め込むというよりかは、単純に出てきたものを乗っけることを最優先にしました。

小川:個人的には、まずピアノだけで勝負してみようと決めましたね。今はシンセサイザーやオルガンの音色を楽曲中に散りばめることが多々あるんですけど、昔はピアノしかできなかったし、でもそれこそが一番だと思っていたなあって。あと、「昔のことを思い出した上で今の自分がどうするか」というところに答えを出そうと思ったので、決して難しくはないんだけど当時の自分だったらできなかったであろうメロディラインを入れてみました。

荒井:あの時の自分を思い返してやってみても、いろいろな変化を経て今の自分があるから、あの時と全く同じにはならないだろうとは思ったんですよね。だから“あの時のようにやる”というよりも、“あの時の気持ちを思い出してやる”ことが大事なんだろうなって。

片岡:レコーディングするタイミングで「高校生にコピーしてほしいね」という話もしたよね。

荒井:したした。

片岡:やっぱりそういう精神性になっていったんですよ。

黒田:簡単そうに聴こえるけど、実は弾くとちょっと難しいんだよね……(笑)。

小川:いやらしい大人だな!(笑)。

――「ファンファーレ」は勢いに乗って、わりとすんなりできたんですか?

片岡:これはもう、本当に何にも悩まなかったですね。1ミリも悩まなかった。

――次に取り掛かったという「秘密」(劇中歌)はいかがでした?

小川:絵コンテをもらうまでは全く答えが出なかったですね。劇中歌を作るのは僕の夢だったので、すぐに着手して何曲か作ったんですけど、自分の中でなかなか答えを見つけられなくて。それで監督に相談をさせていただき、打ち合わせをし、絵コンテをもらった瞬間に、急にすべての謎が解けていったというか……そこからは早かったですね。絵コンテを見た瞬間にイントロのピアノの音も出来たんですよ。だからもう、そこに込められた監督や制作チームの熱と想いが(曲を)連れてきてくれた感覚がありました。

――で、主題歌の「春夏秋冬」は15回書き直したと。

片岡:死ぬほど悩みました……。「ファンファーレ」、「秘密」とすごく順調にいって、『キミスイ』チームともいい関係性を築けて、かなり良い進み方だったんですよ。でも、ホップ、ステップときたら最後はジャンプしなきゃ! みたいなプレッシャーがまずあって。

――サビがあって、Cメロが来て、転調してからもう1回サビが来て、さらにもう一山あって。もう何回クライマックス作るんだろうっていう感じの構成になっています。この作りからして前のめりな気持ちが出ているというか。

片岡:そうですね(笑)。最初に僕がまるっとデモを作ったんですけど、こんなに出てこないのは珍しいなってくらいサビが全然出来なかったんですよ。全部を無しにしてまた作り直した方が簡単だったかもしれないんですけど、これを崩したくない気持ちがあって。「じゃあどうしようか?」となった時に、僕が個人で足掻くという術もあったんですけど、今回は“作品が連れてきた感情と向き合う”、“自分たちの青い部分ともう1回向き合う”というテーマがあったので、メンバーとスタジオに入って一緒に作り上げるのが、マインド的にも正しいんじゃないかと思ったんです。

――だから作曲者のクレジットが“sumika”になっているんですね。

片岡:うん、そうですね。初のsumikaクレジットです。

――演奏していてもグッと気持ちが入るような曲なのでは?

黒田:『キミスイ』の完成披露試写会で初めて人前で演奏したんですけど、思ったより気持ちが乗っかっていくなって思いましたね。思わず身体が動くような曲だなって。

片岡:それは試写を観た後だからじゃない?

黒田:それもあるかもしれない。

片岡:sumikaの「春夏秋冬」なのか、『君の膵臓をたべたい』の「春夏秋冬」なのかで全然答えが変わってくる。そう考えるタイミングが制作過程であったんですよ。それは、すなわちタイアップとどう向き合うべきかっていう話になってくるんですけど。sumika単体で成立する曲にしてしまったら、それって掛け算を拒絶してることになる。それでsumikaとしては『君の膵臓をたべたい』の「春夏秋冬」を作るべきだっていう答えに行き着いたんですよね。結果的に、隼ちゃんが思わず身体を動かしてしまうような、そして僕が歌いながら泣きそうになるような曲になったんですけど、それはやっぱりこの作品が連れてきてくれた感情だと思うので。

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