sumikaが語る、『君の膵臓をたべたい』と築いた幸福な関係「僕らの進み方は間違っていなかった」

sumika『キミスイ』楽曲の制作秘話

自身の青春と向き合った「ファンファーレ」

――今回は劇場版『君の膵臓をたべたい』のオープニングテーマ・主題歌・劇中歌の計3曲を書き下ろしたそうですが、完成した映画を実際に観てどう感じましたか?

黒田:まず「ファンファーレ」がオープニングで流れるんですけど、そのタイミングで絵と曲が一緒になってるのを初めて観て……物語的には何気ないシーンのひとつなんですけど、もう感動しちゃって。こうやって映画と音楽が融合して、ようやく完成なんだなって観ながら思いましたね。

小川:多分、普通のアルバム制作で言う、ミックスが終わった時の感覚だったと思います。絵コンテを全部いただいていたので、どのシーンが次に来るのか、どういう構成で物語が進んでいくのかはもうすべて頭に入っている状態でした。でもいざ映像になって、綺麗な色が入って、動きがあって、なおかつ自分たちの音が入っているのを観たら……簡単に想像を超えてきて。もう自然と涙が出ちゃうくらいの驚きがありましたね。

荒井:感動もしたけど、同時に気持ちよさも感じました。映画やドラマを(視聴者として)観ている時、例えば良い場面が来た時に「自分だったらこういう音楽を求めるなあ」と無意識に考えていたんですよね。漫画を読んでいる時とかもそうなんですけど、良い場面が来たら「あ、ここでこういう曲が流れていてほしい」って、(音楽プレイヤーの再生ボタンを)ポチッて押してからもう1回その場面を読みますね(笑)。

小川:あ~、分かる~!

荒井:今回お話をいただいて、作品としっかり向き合って作った音楽が流れるということは、言ってみれば、自分が来てほしいと思う音楽がそのまま具現化されて流れるってことじゃないですか。それは初めて味わう感情で、変な言い方になっちゃいますけど“気持ちいい”っていう感じでしたね、個人的には。

片岡:この表現が合っているのかどうか分からないんですけど――僕、最近パズルゲームをよくやっていて。“ぷよぷよ”(パズルゲーム『ぷよぷよ』シリーズに登場するスライム)って同じ色が4つ並ぶと消えるじゃないですか。映画制作に関わっているチームのスタッフが3個セットをバーッて作って、映画が始まった瞬間、最後の1個が落ちてきた時に気持ちよく全部ハマって、連鎖して連鎖して、「全消しだ!」みたいな。僕らも3個セットをいくつか作って「これはやりきっただろう」という気持ちではありましたけど、その時点では1個も消えていなかったし、“全消し”している最終的な画は監督にしか見えていなかったんだろうなあと。何ていうか、スッキリしましたよね?

小川:スッキリしたっすねえ……。

片岡:今までの気持ちが全部浄化されたから、自分たちの中に残った“おじゃまぷよ”がいないというか(笑)。絵だけでも声だけでも音楽だけでも成り立たず、全部掛け算として成り立って気持ちよく昇華されていく感動は、なかなか味わえないものだと思います。

sumika / ファンファーレ【MUSIC VIDEO】

――3曲あるうち、オープニングテーマの「ファンファーレ」が最初に取り掛かった曲だそうですね。

片岡:まず、曲を作る前に『キミスイ』チームと打ち合わせをして。まず「病気の女の子がいてどうにかなっちゃうのかな?」というのはだいたい想像がつきました。ただ(原作の小説の)帯コメントに“泣ける”と書いてあったんですけど、その“泣ける”という感情にはどういう過程を経て行き着くべきなんだろう? ということが一番気になって。それを率直に『キミスイ』チームに聞いたんですよ。そしたら、大事な人がいなくなった悲しみではなくて、それを経て一人の人間が泣きながらでも成長していく、次の一歩を踏み出すための涙なんだ、と。特にこの「ファンファーレ」はオープニングなので、「青春のなかで登場人物たちがどう成長していくかを描いてほしい」「そして最後に決意表明をしてほしい」という要望があったんですね。それじゃあまず始めに、自分の青春と向き合おうかって。

ーーだからストレートなバンドサウンドにまとまったんですかね。

片岡:そうですね。この作品の登場人物たちと同じ年齢の頃、僕はバンドをやっていて、ちょうどオリジナル曲を作り始めたぐらいの時期だったんですよ。だから高校生の時と同じように音楽を作ろうと思って。最近のsumikaでは、曲が出来たらデモテープを作ってある程度聴けるような状態にしてから(メンバーに)投げるんです。けど、高校生の時ってそんな効率的なことをやっていなかったし、「イントロはドカンって感じにして、ギターはギャーンと鳴らしてドカーンと行ってからサビで1回キュッとなって、そこからまたパーンって開きたい」みたいな抽象的な言葉で音楽の話をしていたなあと。全力で雑なキャッチボールをしていたというか、だからこそできた化学反応があったし、それが何か良かったなあって思って。だからもう1回同じように曲を作ろうと思って、ドラムの荒井と二人でスタジオに入って「せーのでドンッ」という形で組み上げていきました。「音楽を始めた時と同じような青さと向き合ってほしい」ということはメンバーにも伝えて。

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