tofubeatsが幅広い音楽ジャンルを横断する理由「自分が変化するのを見て、自分自身が楽しい」

tofubeatsがジャンルを横断する理由

 tofubeatsが、9月16日にメジャー2ndアルバム『POSITIVE』をリリースした。Ami(Dream/E-girls)、岸田繁(くるり)、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)、小室哲哉、KREVA、Skylar Spence、玉城ティナら豪華ゲストを迎えて制作された同作は、全体を通してポップな仕上がりとなっている。今回リアルサウンドでは、tofubeats本人にインタビューを行い、アルバムの制作意図やゲスト陣のブッキング理由、音楽活動を続けるなかで様々なジャンルを作るワケについて、じっくり話を訊いた。

「口に出すことで、実際にポジティブな方向に物事が転がっていく」

――アルバムの前段としてリリースされていた『STAKEHOLDER』は、前回の取材でも「いつものシングル表題曲とは違う形を、自分の作品として出した」(参考:http://realsound.jp/2015/03/post-2849.html)と話していたように、少し捻りを加えたアウトプットでした。ですが今作は『POSITIVE』というタイトルまで付いて、ど真ん中ストレートを投げ込んできている印象です。

tofubeats:そもそも『POSITIVE』というアルバムを出す前提で『STAKEHOLDER』があったのが大きいですね。あそこで毒や怨念のようなものがちゃんと抜けてくれたから、こういうアルバムが生まれたのかなと。あれを出したことで、自分でボーカルを取るような重めの曲は入れなくていいかという気分になったし、ほかに回そうと思えてきた。自分でも結構驚いているんですよ。

――制作のきっかけがレーベルスタッフさんからの「tofuくん、もっとポジティブになりなよ」という一言だったことも大きいのでしょうか?

tofubeats:それもありますし、言葉の力って本当にすごくて、何があっても「まぁ、ポジティブだからね」ってまとめることができてしまうし、口に出すことで実際にポジティブな方向に物事が転がっていくのか、という学びがありました。

――言霊みたいなものですね。そういえば、以前にtofubeatsさんがこの方向へ向かうことをtomadさんが予見していたみたいで(http://www.tofubeats.com/lostdecade/lostdecadetomad.html)。

tofubeats:そういえば書いてましたね。あの人本当怖いなぁ(笑)。

――今回のアルバムを語るにあたって、肝となるのがリードトラック「POSITIVE feat.Dream Ami」だと思うのですが、この曲はどういう経緯で作られたのでしょう?

tofubeats:トラック自体は3割完成くらいで放置していて、ゲストが決まっていないままだったのですが、Amiさんがラジオで僕の「ディスコの神様 feat.藤井隆」を聴いてくれていると言ってくれたという情報を人づてに伺って、チームtofubeatsは「もうAmiさん行くっきゃないっしょ!」というテンションになり、お願いした結果として客演いただくことになりました。

――また新たなファン層が開拓できそうな曲と客演アーティストだと感じました。

tofubeats:そうなればいいですけどね。昨日もLDHの前を歩きましたが、特にどうということはなかったです(笑)。まあ、Amiさんも前回の森高千里さんもそうですが、結果的に向こうに合わせもするけど、こちらにも歩み寄っていただいて、お互いのプラスになればいいよねって感じなので、いつもやっていることとそこまで変わらないですね。その人の中にあるけど、別のものを引き出したいと思っているので、ファンの方がAmiさんに期待していることをやってもらいつつ、E-girlsやソロ作とも違う顔を引き出せるように取り組みました。

――なるほど、それはどのゲストにも言える話ですね。あと、順序は違いますが、冒頭の「Dance Dance Dance」で使っているのは『天』(Martine Records10周年イベント)でのMCですか?

tofubeats:アルバム冒頭に関しては、マスタリング直前のライブ音源を使うのが恒例になっていますね。この曲は、そもそも関西ネットの音楽番組『音力-ONCHIKA【おんちか】』(読売テレビ)のオープニングとして作ったもので、番組タイトルが「音楽の力」を略したものなので、歌詞の内容はそのテーマに沿っています。番組でオンエアしているバージョンには、宇都宮マキさんがタイトルを言っている声ネタが入っているのですが、アルバムにはそれを外したものが収録されています。

――冒頭から<何でも出来るよな気がする MUSIC>と、超ポジティブな歌詞だったのでびっくりしました(笑)。

tofubeats:行き過ぎたかなーと思って、Aメロ、Bメロで整備しました。1曲目の歌詞はすごい上手くいったなと。あと、この曲は制作の終盤も終盤でできた曲なのですが、『lost decade』の「SO WHAT!?」にしろ、『First Album』の「20140803」にしろ、完成直前にできる曲って、程よく肩の力が抜けていて良いなって思うんですよね。前者はアルバム完成直前に「『lost decade』が暗すぎる」という幻想にとらわれて作った曲だし、後者は「アルバム宣伝のためにサンプリングで曲作りしよう」と思った曲だったりするので。

――「名曲は最後にできる説」ですね。あと、『T.D.M.(feat. okadada)』と『STAKEHOLDER』については前回のインタビューでも訊いていますが、シングルの時とアレンジが変わっていますね。

tofubeats:『STAKEHOLDER』は「身内で完結させる」というのがテーマでもあったので、マスタリングを大阪のYoriさんというエンジニアさんにお願いしていました。それが、今回はタイト目に、しっかりポップミュージックとしてスピードの揃った仕上がりにしたかったという意図もあり、全曲を田中龍一(MIXER'S LAB)さんにマスタリングしてもらいました。

――するとスピードが上がり、“ポジティブ”な感じになったと。

tofubeats:そうなんですよね。腰の位置が高くなったというか。

――KREVAさんを客演に迎えた「Too Many Girls(feat. KREVA)」は、本人と直接会わないまま、データのやり取りだけで作ったと聞きました。

tofubeats:KREVAさん、レスポンスが滅茶苦茶早かったんです。最初はトラックを聴いて、良ければご一緒していただけるということだったので、「こんな感じで作りました」とサビだけ入れたデモトラックを送ったら、1時間後には歌詞も乗せた声を録って返してくれて。しかも自宅スタジオで、自分でマイクを立てて録音したっぽいのですが、音もかなり綺麗で助かりました。ラップの部分も<FREE Wi-Fi>というワードなど、僕のことを汲み取ってくれてて(笑)。

――2ndヴァ―ス部分は、KREVAさんのtofubeats像だと思うとまた面白いですね。内容は2人でどこまで詰めたんですか?

tofubeats:内容についてのディスカッションはしていなくて、最初の段階で「“KREVAさんが良い感じでモテていて、僕はその画像をただ保存しているだけ”みたいな歌詞にしようと思います」とはお願いしました。

――日本語ラップの客演としてKREVAさんを呼ぶというのは今回のなかでも豪華な取り組みの一つですが、実際にアルバム13曲のうちの1曲として並べてみて、どうハマっていると考えますか。

tofubeats:自分のアルバムに嵌めてみるというより、KREVAさんに関しては「嵌まる力・技術がすごい」と感じました。トラックもそこまで簡単なものでもなかったですから、純粋にすごいなと。

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