Berryz工房が紡いできた音楽のグラデーション 全楽曲をジャンル分類で振り返る(後編)

 Berryz工房の総楽曲160曲を、そこに含まれた音楽ジャンル要素に従って分類し、その傾向や聴きどころを振り返る当コラム。ロック系やR&B系を振り返った前編に続き、後編ではクラブミュージック系やワールドミュージック系、バラード系の楽曲を振り返る。(編集部)

クラブミュージック系

<テクノポップ>

・さぼり [2005]
・グランドでも廊下でも目立つ君 / 須藤茉麻・熊井友理奈 [2010]
・ももち! 許してにゃん♡体操 / ももち (嗣永桃子 feat. Berryz工房) [2012] ※カップリング
・世界で一番大切な人 [2013] ※カップリング
・I'm so cool! [2014] ※カップリング

 「テクノポップ」自体は80年代に日本で起こったムーブメントで、90年代に使用されたクラブミュージックとしての「テクノ」とは区別される。なので正確には「テクノポップ」はクラブミュージックではないが、他に入れるところがないのでこの系統に入れた。また、テクノポップの影響を受けた80年代歌謡曲が「テクノ歌謡」であり、そういう意味ではこのカテゴリに選んだ5曲もテクノ歌謡と言えるかもしれない。テクノ歌謡を構成する一要素として「ノベルティ感覚」があるが、それが最も強いのが「ももち! 許してにゃん♡体操」だろう。このテクノポップカテゴリでの最強曲であり、個人的にもBerryz楽曲十指に入るのが「グランドでも廊下でも目立つ君」。メインボーカルの1番を熊井友理奈、2番を須藤茉麻が歌うという構成が面白く、その歌声の違いを聴き比べたい。

<ユーロビート>

・BERRY FIELDS [2004] ※カップリング
・日直 〜芸能人の会話〜 [2004]
・なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW? [2005] ※シングル
・ヒロインになろうか! [2011] ※シングル
・思い出 [2011] ※カップリング

 80年代に欧州で発生したシンセ主体のダンスミュージック。ここから生まれたダンススタイルに「パラパラ」があるが、それを振り付けに取り入れたのが「なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?」。同曲の発展形であり完成形が「ヒロインになろうか!」。いずれの曲も、ユーロビートというジャンルにたびたび連想しがちな「軽さ」「粗製乱造」感は希薄であり、ただ単に歌い踊るアイドルの魅力が高濃度で凝縮されている。「ヒロインになろうか!」は個人的にも十指入り。

「ヒロインになろうか!」

<ハードコアテクノ>

・すっちゃかめっちゃか〜 [2013]
・コイセヨ! [2014]

 90年代にクラブミュージックとしての「テクノ」が勃興したのは先述したが、その中でもより派手な音楽性を持つのがハードコアテクノ。「すっちゃかめっちゃか〜」「コイセヨ!」はBerryz楽曲でも近年の作で、先述の「真面目にふざける」精神が楽曲に反映された形、とも取れる。また、ハードコアテクノのトラックにアニメ・ゲームなどからサンプリングした音素材を組み合わせたものが「ナードコア」として90年代末に日本で勃興し、その発展形が最近では「Jコア」と呼ばれているが、この2曲も「可愛いアイドルの歌声が乗ったハードコアテクノ」という意味ではJコアと言える、かもしれない。

<ハウス>

・サクラハラクサ [2007]
・ああ、夜が明ける [2011] ※シングル
・大人なのよ! [2014] ※シングル

 起源などを端折って音楽的特徴だけ言えば、バスドラムが等間隔で1小節に4回鳴る、いわゆる「4つ打ち」のリズムによるダンスミュージック。派生サブジャンルが多数あり、ここで挙げた3曲それぞれに関連するものは、ボーカル加工などエフェクト多用なところがフィルターハウス的なのが「サクラハラクサ」。TB-303がウニョウニョ鳴りアシッドハウス的なのが「ああ、夜が明ける」。フィラデルフィア・ソウル(フィリーソウル)の影響が強い初期ハウス的なのが「大人なのよ!」。

<ドラムンベース>

・私の未来のだんな様 [2009] ※シングル
・君の友達 [2010]

 ブレイクビーツの方法論による複雑なドラムフレーズが特徴のダンスミュージックで、ジャングルからの発展形がドラムンベース。ジャングルから発展する際、スペイシーかつ洗練された側面が強まってきたところがあるが、その面を取り入れたのが「君の友達」だろう。「でも俺が好きなのは君じゃないんだ」というセリフパートまである同曲は、歌部分だけ着目すれば青春歌謡的だが、そこにクールなドラムンベース・サウンドが上手く融合されている。十指に入る。

<2ステップ>

・ギャグ100回分愛してください [2005] ※シングル

 90年代後半に欧州から出てきたハウスの派生系。ドラムンベースとはまた異なるリズムの複雑さが、この「ギャグ100回分愛してください」に相似していると感じたのだが、どうだろうか。この曲の編曲は高橋諭一だが、やはり同氏が担当した「ファイティングポーズはダテじゃない!」のリズムにも近いものを感じる。とはいっても、この「ギャグ100」という曲の真価はリズムとはあまり関係なく、全体に漂うノベルティ感/ストレンジ感が可愛さに繋がっているところこそ、だとは思うが。

<EDM>

・女子会 The Night [2011]
・サヨナラ ウソつきの私 [2013] ※シングル
・もっとずっと一緒に居たかった [2013] ※シングル
・1億3千万総ダイエット王国 [2014] ※シングル
・恋するテクニック [2014] ※カップリング
・愛はいつも君の中に [2014] ※シングル
・普通、アイドル10年やってらんないでしょ!? [2014] ※シングル

 EDMは「エレクトロニック・ダンス・ミュージック」の略なので、言ってみれば「テクノ」の今日的言い換えだが、実質的には2000年代前半に「ダブステップ」というジャンルが出てきて以降のシンセ様式が反映されたテクノミュージック全般、と解釈している。ハロプロにおいては、モーニング娘。の2012年シングル「恋愛ハンター」以降、この手のサウンドの楽曲がやたらと増え、それはBerryz工房も同様だった。その中でも特に変わった発展を遂げた3曲が「1億3千万総ダイエット王国」「愛はいつも君の中に」「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」。個人的には、EDMを基調としつつカントリーっぽいギターや馬の鳴き声のSEが飛び出し、なおかつ10年間アイドルをやってきたBerryzだからこそ実感を伴って歌える歌詞という、オリジナリティの塊のような「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」が十指に入る。

「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」

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