Berryz工房、ラストシングルに見るアイドルとしての誇り つんく♂とメンバーが築いたものとは?
「来年の3月3日、デビュー記念日に日本武道館でのコンサートが決定いたしました。そしてですね、この日をもって、Berryz工房としての活動に一旦区切りを付けたいと思います。」
今年8月2日に「来年春をもって」と突然の無期限活動停止を発表したBerryz工房。先日、池袋サンシャインシティ噴水広場にて行われた11月12日発売ラストシングル『ロマンスを語って/永久の歌』リリースイベントにて、キャプテン・清水佐紀の口からその残りの時間が発表された。
ラストシングルにみる“誇り高きアイドル”
──活動休止まであとしばらくはBerryz工房と共に夢の続きを見させてほしいものです。(Berryz工房 11/12発売 シングル「ロマンスを語って/永久の歌」 - つんく♂オフィシャルブログより)
ファンの声を代弁するかのような、プロデューサー・つんく♂氏の言葉通り、夢の続きを見させてくれるようなラストシングル2曲が「ロマンスを語って」「永久の歌」である。全く毛色の違う2曲ではBerryz工房の振り幅の大きさともいえる二面性を見ることができ、そこに共通してあるものは“誇り高きアイドルの姿”である。自信に満ちあふれた余裕とでもいうべきであろうか、全力・努力などという言葉が似合わない天性のアイドル感。嗣永桃子の言葉を借りれば「生まれながらのアイドル」である。その放たれる輝きは両曲に共通して登場する言葉、“キラキラ”に集約されているようにも思う。
夏焼雅、菅谷梨沙子による低音の歌い出しに始まり、徐々に高音に抜けていく表情豊かな歌とコーラスワークが織りなすレトロ感が絶妙なモータウン調の「ロマンスを語って」。最近のBerryz工房にしては珍しく可愛らしさを全面に出した曲であり、スタイリッシュ、クール指向の強い近年のハロー!プロジェクトの中でも久々の王道アイドル・ポップス。鐘の音で始まる幻想的なイントロとホーンセクションの彩りが神秘性を誘い、今まで夏曲が多かったBerryz工房にはありそうでなかった冬を感じさせる仕上がりになっている。
もう一つのMVとも言われる〈Dance Shot Ver.〉では本編MVでは味わえない彼女たちの魅力の一つでもある、キャッチーでどこかコミカルなダンスによる可愛さを堪能することが出来る。個性豊かなデコボコ感もちろん、ラストを飾る7人で作る印象的な“ハート”型、身長的にももち側が若干いびつに見えるのも、Berryz工房らしいほほ笑ましい一面だ。
「永久の歌」は打って変わって潔さを感じるロックナンバー。明るいはずなのにどこかせつなさを感じるメロディー、突き抜けるようなサビに往年のロックバンドさながらの高揚感を覚える曲だ。彼女たちの真骨頂である、声質も歌い方も一切被らない7人の強力なユニゾンがさらなる高みに持って行く。そして、ライブ感のあるシンプルなMVだからこそ見える各メンバーの表情。決められた感も気負いもなく、お互いを確認しながらただただ楽しんで歌う姿から、個性のバラバラな7人がそれぞれのポジションをしっかりと請け負いながらはじき出されるグルーヴを感じることが出来るだろう。バンドマジックならぬ、アイドルマジックだ。サビで見せる渡り鳥、出航を彷彿とさせるV字など、フォーメーションという言葉を用いるよりも彼女たちには“陣形”という言葉が似合う。横一列に並んだだけで感じる圧倒的な余裕、そして右手を高らかに突き上げれば「我がアイドル人生に悔いなし」と言わんばかりの勝利宣言にすら見えてくる。
ラストシングルといって湿っぽさを感じさせないのは彼女たちらしくもあるが、両曲共通しているのは未来に向かっていることだ。10年かけて積み上げてきたプライドと、近年のアイドルブームとは少し違うところにいたからこそ見えた“これから”があるのかも知れない。
凝った構成、練ったアレンジ、綿密なサウンド構築…… 近年のアイドルポップスでは音楽性の多様化が目立つが、ここまでシンプルにストレートな歌で勝負する曲は珍しいのではないだろうか。細かい音楽分析など必要としない、スッと耳に入って歌詞が残る歌。楽曲と歌い手が合わさることにより生み出される“うた”だ。今回はリアルな歌詞がそれを強調させるが、思えば彼女たちはいつでもそうだった。どんな楽曲でも自分たちのものにするという、決して歌唱力という表面上のスキルだけでは成し得えることのできない力によって、楽曲を何倍もの魅力を放つ”うた”に昇華させるのである。