Berryz工房が歩んだ11年のアイドル道ーー個性派集団はいかにして熱狂的支持を集めたか

 見た目はデコボコ、中身はバラバラ。今春に無期限活動停止を迎えるBerryz工房とは、自他ともに認める「個性派集団」だった。個性はどうとでも取れる表現ではあるが、彼女たちを指すその言葉は、時に“バカ”ですら賛辞になる“キャラの濃さ”を外向けに婉曲した表現ではないだろうか。「バカな事して絵になるのはBerryzだけ!(須藤茉麻)」と自ら言い切れる振り切った個性と魅力は並べるほど、現在のアイドルに求められているものとはほど遠いものになるのだが、それ以上に強い意志と自信を感じるのである。「歌やダンスは出来て当たり前、努力アピールをするものではない」という内面を見せないスタンスも、本来であれば人前に立つ者としての普遍的な美意識であり、物語性を重視する近年のアイドルシーンに対する問題提起でもあったように思えてくる。

Berryz工房が貫いたもの

 ハロー!プロジェクトには定型化されているものがある。リリース、コンサート、プロモーション、ウェブサイトは統一化され、アーティスト写真の構図もMVの構成も、グッズまでも……どのグループも基本的に同じフォーマットだ。悪い意味ではなく、ブランドカラーとしての形式美でもあり、ファンにとっては安心感もある。そうした枠の中での活動で、Berryz工房が見いだした答えは“個性”であり、“ふざけること”だということが興味深い。作られたコンセプトもなければ、どこか既成概念が出来上がってしまった近年のアイドル像に応えるわけでもない。時代や流行に流されることのない、自分たちのスタンスを貫いてきた。反面、握手会での対応が人気を左右することも少なくない昨今のアイドル市場に馴染めなかった節もある。だが、時流に乗れなかったのではなく、表現者のプロフェッショナルとしての確固たる矜持を示してきたともいえるだろう。

「ダンスがちびっ子にも真似しやすい」。新曲プロモーションの度に夏焼雅がよく語る言葉である。子供好きとも取れる発言であるが、自分が小さい頃にモーニング娘。に憧れてオーディションを受けたように「アイドルは子供にとって憧れの存在でありたい」という意識がどこかにあるのだろう。目の前の実人気に固執することもない彼女たちなりのアイドル像が垣間見えるようにも思える。

遊園地感覚のエンターテインメント

 個性は歌においても発揮される。声質も歌い方も7種7様、一切の被りはなく、7声が重なった強靭なユニゾンはパイプオルガンさながらの重厚さである。主軸となる歌唱メンバーも楽曲ごとの世界観とともに変更されていく。楽曲がバラエティに富んだ印象を受けるのは楽曲自体の幅の広さもあるが、彼女たちの“歌”に起因するところも大きい。一節、一語ずつリズミカルに変わっていく歌割りはハロプロの醍醐味の一つでもあるが、そこに量の差はあれど、ここぞという詞にこのメンバーの声、という印象的でカラフルなフレーズの数々は、Berryz工房楽曲の魅力である。

 そこから生まれたジャンル無双というべき楽曲群に楽曲群に、ライブにおけるお決まりの“定番セットリスト”は存在しない。攻守を代えながら様々に対応できるいくつものパターンを生み出し、派手な演出に頼ることのないコミカルな工夫で、最初から最後まで見るものを飽きさせない。メディア露出の少ない中、興行主体の活動で生まれた「何度でも行きたい」遊園地感覚のエンターテインメントは、ハロプロの強みでもあり、それを11年間に渡り存分に体現してきたのがBerryz工房だ。同じ内容の公演に観客が何度でも脚を運びたくなることは、演者にとっても主宰者にとっても最高の誇りだろう。

 そうした個性的でクオリティの高いエンタメ性は海外にも波及した。プロモーション目的で海外公演を行うグループが多い中、Berryz工房の場合は、Japan Expo(2014年 フランス)での主賓である“Guest Of Honor”を始めとし、そのほとんどが招聘・誘致によるもの。タイでは2010年の初公演が2年越しのオファーによって実現し、昨年は彼女たちを題材にした映画『The One Ticket』が作られるほどの人気だ。

The One Ticket (Official Trailer 1)

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