Berryz工房と℃-uteはどう切磋琢磨してきたか それぞれの方向性と魅力を分析

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Berryz工房『Berryz工房デビュー10周年記念コンサートツアー2014春~リアルBerryz工房』(ポニーキャニオン)

 ハロー!プロジェクトの中核を担うBerryz工房と℃-ute。9月10、11日に行われた〈Thank you ベリキュー!in 日本武道館〉はそれぞれの魅力を余すことなく凝縮した2日間だった。高度なチアリーディングを思わせる団結・統制力を誇る℃-uteのパフォーマンスと、振り切ったおふざけ、お祭り騒ぎの自由奔放なBerryz工房のエンターテインメント。同じ二度目となる武道館という大舞台で観ることができたのは、ベクトルは違えど、ともに生え抜きの12年選手、真のアイドルの姿である。

 グループとしての活動歴は異なるものの、元は2002年に行われたハロー!プロジェクト・キッズ オーディションに合格した同期。それが故に、良くも悪くも対比されることも多い。 性質、考え方、方向性…どこをとっても対照的であり、魅力も楽しみ方も全く異なる。いうならば、アメコミと朝ドラくらいの違いがある“ベリキュー”。両グループの関係性と対照的な魅力を紐解いてみたいと思う。

それぞれのアイドル像

 キッズの中から選出されたBerryz工房が先に結成〜デビューしている(2004年)。選ばれなかった悔しさを胸に、後を追うようにして翌年活動を開始した℃-uteであったが、重なるメンバー脱退・卒業という事態に見舞われる。それがメンバーの結束を強めていくことになり、「アイドル界随一」とも評されることの多い、一糸乱れぬパフォーマンスを生みだす起因となった。この逆境を乗り越えた苦難のストーリーが多くのファンに共感を呼んだともいえるだろう。

℃-ute 『まっさらブルージーンズ』(2006年)

 一方、Berryz工房が順調だったかといえば、実際はそうとも言えない。今ほど「アイドルを応援すること」が一般に浸透していなかった時代背景を考えれば、“全員小学生のアイドルグループ”は早すぎた。しかし、彼女たちは苦悩や努力を表に出すことはない。あくまで内面を見せないことで自分たちの信念を貫いている。

Berryz工房『スッペシャル ジェネレ~ション』(2005年)

 ハロプロキッズ10周年記念BOOK『RIVAL〜12少女の10年物語〜』(2012年)において、このベリキューの相反する“アイドルの在り方”を垣間見ることが出来る。「日常や素が出ても、ファンがついてきてくれるなら(℃-ute・中島早貴)」「“アイドル=可愛いこと”が大前提だから、ある程度の距離感は大事(Berryz工房・嗣永桃子)」という、それぞれの考え方である。近年における「“応援したくなる”アイドル像」と、普遍的な「“雲の上の存在”のアイドル像」だ。

プロデューサーからみたベリキューの色分け

 プロデューサー・ つんく♂氏が「Berryz工房は公立女子、℃-uteは私立女子」と表現したことがある。作詞における主人公の設定のことだが、捉え方によっては一般的な校風に例えた、グループ気質の違いとも受け取ることもできる。「女性よりも乙女心を衝いてくる」ことで定評のある、つんく♂流女性主観の恋愛ソングを見ても、楽天的な恋愛感情の多いBerryz工房に対して、℃-uteは深層心理を映していることが多い印象を受ける。ただ、意識しているわけではなく、勝手に色分けされていくという。

〈もう全部を捧げたい 大変ツライ 会えないぜ Friday night〉
Berryz工房『Loving you Too much』(2012年)
〈恋する乙女はベットに入って 君の連絡を待つ〉
℃-ute 『会いたい 会いたい 会いたいな』(2012年)

 2012年につんく♂氏によるトリックが仕掛けられたことが話題になった。ベリキューそれぞれの別楽曲を同時再生することで、一つの楽曲が完成する『超HAPPY SONG』である。同時再生という音楽的な評価以前に、メンバーとファンへのサプライズとしての意味合いが強い。メンバー本人たちにすら事前に種明かしすることは無かった。それぞれのアルバム楽曲として収録し、コンサート披露、各楽曲が支持を得る過程を踏み、最終的にファンが見つけたことで、その価値は大きくなった。

Berryz工房×℃-ute 『超HAPPY SONG』(2012年)

 元曲はBerryz工房はディスコサウンドの「Because Happiness」、℃-uteはバラードの「幸せの途中」という全く別タイプの楽曲だったことも、ベリキューの色分けなのかもしれない。

 同じ事務所で、同じプロデューサーが作詞作曲を行ってきた。ほぼ同じ環境で育ってきたベリキューは全く異なるグループに成長した。明確なコンセプトの違いがあったわけではなく、成長過程で自然と色分けが出来てきたというところが興味深い。

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