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『カルテット』吉岡里帆は不穏かつ最強の“ジョーカー”だ! 笑顔の内側に何を秘める?

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麦倉正樹
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 名手・坂元裕二による練られた脚本と、チーフを務める土井裕泰をはじめとする“ドラマのTBS”が誇る優秀な演出スタッフにより手がけられた、ドラマ『カルテット』(毎週火曜日22時~/TBS系)。何よりも、劇中で弦楽四重奏の“カルテット”を組み、軽井沢の別荘で共同生活を営む、主演の4人――松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平という、30代を代表する実力派俳優たちの演技が素晴らしい。このドラマ、ホント毎回ため息が出るほど面白いです。

 「全員片思い。全員嘘つき」、「不器用な大人たちが奏でる、苦くて甘いラブストーリー」というキャッチコピーの通り、ミステリーあり、サスペンスあり、ラブストーリーありという、ジャンルレスな領域を突き進んでいる本作も、そろそろ折り返し地点を迎える。実は、夫が失踪中の真紀(松)、そんな真紀に長らく思いを寄せていた司(松田)、真紀の義母の依頼を受けた密偵だったすずめ(満島)、そして入院中に真紀の夫と知り合っていたことを告白する諭高(高橋)など、“偶然の出会い”が実は“必然の出会い”だったことが、徐々に明らかになってきた本作。しかし、それと同時に、心に“空洞”を抱えた者同士、4人は緩やかな連帯関係を築き上げてゆく――。

 というのが、これまでの流れだが、そんなドラマの中でひとり、4人の関係性を無意識のうちに崩しに掛かっているような、何やら不穏な人物がいる。真紀たちのカルテットが定期的に演奏を行っているライブ・レストラン「ノクターン」のアルバイト店員、来杉有朱(吉岡里帆)だ。出演シーンは少ないものの、“5人目のレギュラー”と言っても良い存在感で、ドラマの重要なスパイスとなっている有朱(ありす)。

 第1話から、彼女は4人に向かって、ベンジャミン瀧田(イッセー尾形)から聞いたという挿話、「音楽っていうのはドーナツの穴のようなものだ。何かが欠けているやつが奏でるから音楽になるんだよね」と語るなど、4人の関係性の本質を、あらかじめ突くような発言をしていた。その後、「私、元・地下アイドルなんですけど、しょっちゅう炎上してました。うふふ」と笑顔で4人に告白。それを聞いた真紀から、「目が笑ってないからかな?」と、これまた本質を射抜いた感想を述べられるなど、序盤から彼女は、ひときわ異彩を放つ人物として描かれてきた。

 そして、第3話では、「告白は子どもがするものですよ。大人は誘惑してください」、「誘惑はまず、人間を捨てることです」、「女からキスしたら、男に恋は生まれません」という秀逸なセリフの連打によって、すずめの心に潜む“想い”を着火。さらには、思わせぶりな素振りで諭高を家に招き入れながらも、そこは父母と祖父と妹が暮らす実家であり、諭高に妹の家庭教師を頼んで自らは立ち去るなど、謎のマイペースぶりを発揮している。その妹が諭高に、「あの人、やめといたほうがいいよ。姉ちゃんのあだ名、“淀君”だから」と語るなど、強烈な存在感を残してきた。

 1993年生まれ、京都府太秦出身の女優、吉岡里帆。2015年公開の映画『明烏 あけがらす』のヒロイン役を見事オーディションで勝ち取り、監督・福田雄一によって、はっちゃけたコメディエンヌとしての才能も開花させていた彼女だが、その名前が広く知られるようになったのは、やはりNHK連続テレビ小説『あさが来た』の出演だろう。波瑠演じる主人公「あさ」の娘の学友で、のちにあさの信奉者となる、丸メガネの“のぶちゃん”こと田村宜子役。それ以降は本作に至るまで4クール連続で連続ドラマに出演を果たすなど、着実にステップアップを果たしている。今、注目の若手実力派女優のひとりだ。

 その中でも、個人的にとりわけ強く印象に残っているのは、昨春放送された宮藤官九郎脚本のドラマ『ゆとりですがなにか』で彼女が演じた教育実習生(悦子先生)役だった。松坂桃李演ずる先輩教師を翻弄しながら、いつのまにか彼を泥沼の三角関係に引きずり込んでいくという役どころ。生真面目さと危うさが同居するこの難しい役を、彼女は見事に演じていた。現在オンエア中の「ゼクシィ」や「UR都市機構」のテレビCMで見せている朗らかな笑顔の内側に秘めた“何か”を感じさせる、実に濃密な芝居。それは、今回のドラマ『カルテット』における有朱役とも、どこか共通しているように思う。

     
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