『日本一の最低男』は強烈な政治風刺作だった “エンタメ化する選挙”に警鐘を鳴らす傑作

『日本一の最低男』エンタメ化する選挙を風刺

 選挙は両陣営が罵り合う泥仕合へと発展。最悪の選挙に区民がうんざりしている中、一平の幼なじみで黒岩の元秘書だった真壁考次郎(安田顕)が立候補を表明する。

 相手を激しく罵るパフォーマンスを繰り返す一平は支持を失い、新区長には真壁が選ばれる。しかしこれは、真壁を区長に当選させるために自身が憎まれ役を演じるという一平と真壁が裏で仕組んだ策略だった。

 2024年の兵庫県知事選で問題になった二馬力選挙を彷彿とさせる展開だったが、選挙戦における一平の振る舞いや、パワハラ報道に対して一平が反論する姿を見ていると、近年話題になった数々の政治的事件を思い出す。

 また、最終話の序盤では、一平が流した動画での問題発言に対するSNS上での無数のリアクションが描かれる。可視化された無数のコメントを見て、北野プロデューサーが手掛けた『フェイクニュース』を思い出した。

 『フェイクニュース』は2018年に放送されたドラマで、劇中で描かれるフェイクニュースに人々が扇動されて社会を混乱に陥れる姿は、タイトルにあるように「どこか遠くの戦争の話」だったが、2025年現在は、日本においても当たり前の光景となってしまったと改めて感じた。

 『日本一の最低男』の選挙編は、『フェイクニュース』に対する2025年現在の解答にも見えるが、現実が何でもありの混沌とした状況になってしまうと、虚構(フィクション)にできることは、性善説を信じて良識の側に立ち、理想を掲げざることだけなのかもしれない。

 第7話で真壁は「最後に人を動かすのは金でも理屈でも思想でも信念でもない。物語だ」と一平に言った。実際、二人が仕組んだ物語によって真壁は選挙に勝利したが、あえて最低の男を演じた一平の本意を理解し、彼の存在を受け入れる正助たちニセモノ家族の姿にこそ、物語の力を感じた。

『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』の画像

木曜劇場「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった」

“日本一の最低男”である主人公・大森一平が、家族を、社会を、そして日本を変えていくために奮闘する姿を描く完全オリジナル作品。

■配信情報
『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』
TVer、FODにて配信中
出演:香取慎吾、志尊淳、冨永愛、増田梨沙、千葉惣二朗、向里祐香、佐野玲於、橋本じゅん、安田顕ほか
脚本:政池洋佑、蛭田直美、おかざきさとこ、三浦駿斗
演出:及川拓郎ほか
プロデュース:北野拓ほか
主題歌:香取慎吾「Circus Funk(feat. Chevon)」(トイズファクトリー)
制作協力:テレパック
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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