『御上先生』松坂桃李が提示するそれぞれの正義 生徒に決定ゆだねる官僚教師の新しさ

『御上先生』(TBS系)第4話では、3年2組の生徒がサプライズを仕掛けた(※本記事には本編の内容が含まれます)。
学園祭「隣徳祭」が近づいてきた。受験を控えた3年生は参加は必須ではないが、東雲(上坂樹里)は教科書検定の展示をやりたいと提案。東雲の実父は中学教師だったが、独自の教材を使った責任を取って教師を辞めた。生徒の発案に、御上(松坂桃李)は教室の使用許可が下りないのではと答える。はたして、私立高校の文化祭で教科書検定を扱うことは適切といえるのか。
多人数で一つの課題に取り組むとき、御上のサポートのやり方は参考になる。御上は生徒と一線を引くが、決して踏み込みすぎず、相手に決定権をゆだねる。それは相手を信頼しているからだろう。独特な距離感は、御上が制度を作る側の官僚であることも関係しているかもしれない。
当初、東雲から「関わらないでほしい」と釘を刺された御上は、倉吉(影山優佳)に話を振った。倉吉は実体験を通して、アメリカの高校で原爆について教わったことを紹介。その話を通して、御上は「人や国の数だけ正義がある。自分の正義だけが通ると信じていたら、誰とも話はできないよ」と語った。
学校側は政治色の濃い企画に難色を示すが、生徒の間でも温度差があった。自習する場所がなくなる、同調圧力がしんどいなど理由はそれぞれ。そんな生徒たちに御上はディベートを提案する。企画に賛成の東雲が反対派に、反対の櫻井(永瀬莉子)が賛成派に回ったディベートで、メリットとデメリットを挙げる中で論点が絞り込まれた。櫻井は企画の必要性を主張し、東雲は勉強に集中したい人の権利を訴えた。
ディベート自体は企画に関する議論の土台であり、意見を交わすための地ならしだったが、先入観で凝り固まった頭を解きほぐす意味があった。ここで大事なのは、どちらが正しいという結論ではないだろう。反対する理由には個人的、情緒的な要素が見られたが、企画を推進したい東雲も自身を省みることになった。
ダミーの企画書など事前規制をかいくぐる知恵比べ(「プラン・オカミ」)があり、文科省副大臣の滝沢(井上肇)にプレゼンして随行の槙野(岡田将生)に冷や汗をかかせる展開は、下剋上ものの学園ドラマとして観ることができた。1人の生徒の家庭の問題は政治と結びついており、本作のテーマ「Personal is political(個人的なことは政治的なこと)」を別角度から浮き彫りにした。