吉沢亮&下川恭平、“国宝コンビ”が『ばけばけ』で見せるユーモア トキの恋心は何処へ

松江を襲う大寒波により、気管支を患ってしまったヘブン(トミー・バストウ)。『ばけばけ』(NHK総合)第48話では、必死に看病するトキ(髙石あかり)との間で、切ないすれ違いも起きてしまった。
布団をどんなに被っても寒くて寒くて仕方がない、松江の冬。熱による悪寒もあるのだろう。ヘブンはブードゥー人形を握りしめ、カリブ海に浮かぶ西インド諸島南部に位置する島・マルティニークの浜を思い浮かべて現実逃避していた。ちなみに、温暖な気候の街と海水浴が大好きだった小泉八雲にとって、マルティニークはお気に入りの場所だったそうだ。温かい場所へ行きたいという、ヘブンの切実な思いが伝わってくる。

床に伏せるヘブンを見舞いに、小谷春夫(下川恭平)が訪れる。しかし、小谷の目的は見舞いではなく、トキに会うことだろう。トキとヘブン、錦織(吉沢亮)は知る由もないが、視聴者だけが小谷の本当の狙いを知っている状況だ。「ずっといたよ」と存在を主張する錦織と、「なぜヘブン宅に来たのか」と問われてすっとぼけた顔をする小谷の対比がなんとも面白い。映画『国宝』から続く朝ドラへの出演で注目されている下川だが、コメディに適応した芝居もできるのかと驚かされた。
ヘブンの看病をするトキの頭には、傳(堤真一)を看病していた日々と、看病の甲斐なく彼が亡くなってしまった記憶が、脳裏をかすめていたようだ。そんなトキの不安を聞いて、ヘブンは「死んでも悲しまないで、私は通りすがりのただの異人」と伝える。ビアやスキップ、生け花、三味線を通じて、文化の交流を重ねてきたトキにとって、ヘブンはもう外国からきたただの異人ではなく、“ヘブン先生”というかけがえのない存在になっていたのだろう。ヘブンの言葉には心配をかけないようにしたいという意図があったのかもしれないが、「通りすがりのただの異人」という言葉は、トキの胸に小さな針として刺さってしまったようだ。

寒くて震え続けるヘブンに、トキは今年の冬は特別に寒いのだと大寒波の説明をする。トキは「通りすがりのただの異人」という言葉に対し、意趣返しのように「大変なときに、通りすがりましたね」と呟く。ヘブンはいつかどこかの国に行ってしまう。ずっと日本にいるわけではないというのが、ヘブンにとっても、松江にいる人間にとっても、暗黙の了解だ。それでも、こんなに時間を共に過ごしたのだから「通りすがり」なんて言ってほしくなかった。メジロの世話をするトキの様子からは、そんないじらしさが伝わってきた。
そんなほんの少しの寂しさを覚えるトキに対して、小谷のアプローチは熱烈だ。これ見よがしに怪談の書物を読んだり、舞台に誘ったり。そして、そんな熱い思いを知っているサワ(円井わん)は、小谷の恋心を松野家に伝える。ペリーの子分であろうと、家を継いでくれるのであれば、松野家にとってありがたい存在だ。

第8週、第9週と2週間かけてトキとヘブンの穏やかな交流を描いてきたが、第10週ではその交流はいつまでも続かない「通りすがり」のひとときだと提示されてしまった。そして、トキには、新たな相手の予感も。
ヘブンの風邪をきっかけにトキの心に生まれてしまったヘブンへのいじらしい思いと、小谷からトキへの恋心が、ヘブンとトキの関係性の発展にどのように作用するのだろうか。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















