『御上先生』松坂桃李が提示するそれぞれの正義 生徒に決定ゆだねる官僚教師の新しさ

ただし、若干の危うさも感じた。作品を介して、作り手の考えが視聴者全体の意見とされてしまわないか。第4話で原爆に関する意見を聞かれた倉吉が、自分の考えが日本人全体の意見になることを危惧して躊躇したと話したが、同じ構造が作品の内と外にも存在する。“正しさ”を無批判に受け入れることは思考停止に近い。多分に思考実験的な本作で、ポリティカルな問題を扱うときにパーソナルな決定権がないと、違う形の抑圧になる可能性は肝に銘じたい。
第3話ラストで職員室に届いた怪文書について、是枝(吉岡里帆)が秀逸な考察を披露した。送り主「倭建命」は官僚で(ただし御上自身は否定)、ヤマトタケルの辞世の句をもじっている。霞が関には外敵の侵入を防ぐ関所があり、江戸城の反対側の平川門は位置的に裏門に当たる。「まほろば」は「真秀ろば」とも表記され、理事長の古代(北村一輝)の名前「真秀」と重なる。
第4話で新たに届いた文面からは不正を暴き、罰する意志を読み取ることができる。裏口から入ったのは教職員あるいは生徒なのか。古代はどう関わっているのか。隣徳の内部事情を知る人間が復讐を企てているとも考えられる。わざわざ自身の存在を知らせるのは、警告を発することで災厄を防ごうとしているように見えなくもない。御上の兄・宏太(新原泰佑)も次元(窪塚愛流)のリサーチで新事実が判明したようで、まだ多くの伏線がありそうだ。
「日本の教育を変えてやろう」という熱意を持ったエリート文科省官僚が高校教師となり、令和の18歳とともに、日本教育にはびこる権力争いや思惑へ立ち向かうオリジナル学園ドラマ。
■放送情報
日曜劇場『御上先生』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:松坂桃李、奥平大兼、蒔田彩珠、窪塚愛流、吉柳咲良、豊田裕大、上坂樹里、髙石あかり、八村倫太郎、山下幸輝、夏生大湖、影山優佳、永瀬莉子、森愁斗、安斉星来、矢吹奈子、今井柊斗、真弓孟之、西本まりん、花岡すみれ、野内まる、山田健人、渡辺色、青山凌大、藤本一輝、唐木俊輔、大塚萌香、鈴川紗由、芹澤雛梨、白倉碧空、吉岡里帆、迫田孝也、臼田あさ美、櫻井海音、林泰文、及川光博、常盤貴子、北村一輝
脚本:詩森ろば
脚本協力:畠山隼一、岡田真理
演出:宮崎陽平、嶋田広野、小牧桜
プロデュース :飯田和孝、中西真央、中澤美波
教育監修:西岡壱誠
学校教育監修:工藤勇一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/mikami_sensei_tbs/
























