『ブギウギ』は女性同士のエンパワーメントを描く “喜劇王”タナケンも怒涛の名言連発
『ブギウギ』(NHK総合)第16週のタイトルは「ワテはワテだす」。1月18日に放送された第75話では、付き人の結婚と舞台俳優の道が一本の線でつながった。
愛助(水上恒司)が連れてきたのは小夜(富田望生)とサム(ジャック・ケネディ)。不意の来客にスズ子(趣里)は驚く。アメリカ行きを反対するスズ子に、サムは小夜の素直で正直なところを愛していると言い、小夜を「私の太陽」であると話した。
スズ子が小夜のアメリカ行きを拒むのは「遠いアメリカで何かあっても、ワテは助けに行かれへん」からだ。付き人を辞めるのはかまわないが、小夜には目の届くところにいてほしい。それは保護者としての感情に近い反面、小夜を束縛するものである。あるいは、スズ子が培ってきた義理と人情のあらわれでもあった。
引き止めようとするスズ子に、小夜は「サムが一緒だと、オレ何でか胸張れんだ」と言い、「どこで何してたってオレはオレだ」と返した。その言葉にスズ子もようやく納得する。小夜は「これからはオレの人生だ。ワクワクしてます」と笑顔で話した。
自分の言葉が相手を勇気づけて、勇気を出して一歩を踏み出した相手から今度は自分が元気をもらう。家族の誰かが悩んでいて自分も悩んでいるとき、必死にもがいている最中はささいなことで衝突したり、相手を疎ましく思ってしまうことがある。一難去って振り返るとどちらも同じようなことで悩んでいて、互いに相手の存在があったから乗り越えることができたという経験はないだろうか。
スズ子と小夜はそういう関係で、姉妹のように二人は支え合いながら戦前戦後を生き抜いてきた。だが、知らず知らずのうちに依存に陥っており、それではいけないと先に小夜が気づいてスズ子の元を去った。誤解が解けたスズ子は小夜の決意に背中を押される。本作が描いてきた女性同士のエンパワーメントをさりげなく盛り込んでいた。
「どこで何してだってスズ子さんはスズ子さんだ。堂々としててください」
スズ子は暗中模索、どん詰まりだ。喜劇王タナケンこと棚橋健二(生瀬勝久)の考えていることがわからない。勝手の違う演技の練習で周囲に遠慮して、スズ子らしいきっぷの良さやはつらつとした魅力は失われていた。小夜の言葉とともにスズ子に気づきを与えたのは恩師の羽鳥(草彅剛)だ。