『呪術廻戦』「懐玉・玉折」で重要な天元と天内理子の関係 五条悟との化学変化に注目
TVアニメ放送中の『呪術廻戦』「懐玉・玉折」。呪術高専2年生の五条悟と夏油傑が、“天元様”から指名された「星漿体(せいしょうたい)の護衛と抹消」の任を描く章となり、早速「星漿体」の天内理子が命を狙われた。「懐玉・玉折」は若き日の五条と夏油の間に何が起きたのか明かされる過去編であるが、そこで重要なのがこの理子という少女の存在である。
そもそも「星漿体(せいしょうたい)」とは何か。夜蛾が五条と夏油に説明していたが、改めて振り返っておきたい。天元とは不死の術式をもつ術師であり、彼の結界で呪術高専のみならず京都校などの高専各校や呪術界の拠点を守っている。それだけでなく、多くの補助監督らによる結界の強度が、天元の結界術で底上げされているのだ。しかし、そんな天元の結界は外から隠すことに特化して、未登録の呪力が入った場合アラートが鳴るようになっているものの “呪力”がないものや、結界の対象外の存在は検知できない。実際、第1期の「京都姉妹校交流会」で呪霊よりも精霊に近い花御が進入できたのも、天元の結界の対象外だったからであって抜け道はいくらでもあるのだ。
それでも天元を失うことは、呪術界はおろか、人間界の終わりになりかねない。天元が一定以上の老化を終えると術式が肉体を創り変えるーーつまり“進化”が行われ、本人の意思がなくなり最悪の場合は人類の敵となる可能性があると仮定されている。だからこそ500年ごとに「星漿体」と呼ばれる、天元と同化ができる人間を用意して肉体の情報を書き換える必要があるのだ。そして今回、その「星漿体」として選ばれたのが“幼い頃に都合よく両親を亡くし、天涯孤独な”天内理子というわけである。
ミッションスクールの女子校に通う中学生の理子は、本人こそ「天元との同化は“死”ではない」と息巻いていたが、結果的に同化すれば高専の最下層で結界の基となり、もう友人に会うことはできない。言うなれば、彼女の存在は「人柱」なのだ。しかし、4歳の頃から家族のいない理子は自分に与えられた高貴な役割に誇りを持つことで、正気を保っている。そんな彼女を支えるのが、世話係の黒井美里。黒井家は代々「星漿体」に仕えることになっているが、彼女はそれが嫌で短大に進み、一般職に就こうとしていた。しかし、理子に惹かれて黒井家としての任を全うすることに決めた、という裏話がある(原作コミック第8巻参照)。
4歳の時から黒井とともに育ってきた理子は、「星漿体」だからこそあまり勝手に外出ができない。現に、盤星教「時の器の会」と呪詛師集団「Q」に命を狙われている。そのため学校に行くこと、そこで友達と過ごす時間は何よりもかけがえのないものなのだ。アニメ第26話で描かれたクラスメイトと楽しく話す横顔は、とびっきりの笑顔だからこそ切ない。肉体を差し出し、内側に天元が入る彼女の苗字が「天内」なのも、きちんとした子を意味する「理子」という名前も、「星漿体」としての運命を辿る彼女にピッタリなのだ。そんな彼女が五条や夏油との交流を通して、「理子」ではなく「利己」になる過程も「懐玉・玉折」で描かれる大切なヒューマンドラマの一つである。