『呪術廻戦』「懐玉・玉折」は五条悟にとって過去・いま・未来の物語 第2期のポイントは?
なぜ、五条悟は“最強”なのか。いや、どうやって“最強”になったのか。その過去がついに、7月6日から放送開始されるTVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」にて明かされる。原作でも人気の高い章であり、その後には続けて筆者も含む原作勢が当時、虫の息となった「渋谷事変」編の放送も控えている。どちらの章も映像で観られることに嬉しさを感じると同時に、描かれるであろう辛くて哀しい展開に向き合うため、心を構えておきたくなる。そんな『呪術廻戦』第2期は具体的に何が期待できるのか。
劇場版と五条悟、夏油傑、家入硝子の解像度が上がる重要な章
「懐玉・玉折」は『呪術廻戦』の主人公・虎杖悠仁をはじめとする呪術高専の生徒たちを率いる“最強”の先生・五条悟と、劇場版に登場した五条の“親友”・夏油傑、そしてアニメ第1期から顔を覗かせていた家入硝子が高専2年生の時を描く。日々、呪霊討伐の任務についていた五条と夏油が“天元様の指名で受けた”特別な任務「天元様との適合者<星漿体>である少女の護衛と抹消」。これを巡り、伏黒恵の父親・伏黒甚爾をはじめとする暗殺者と会敵するのだ。
夏油といえば『呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校』(以下、『呪術廻戦0 』)に登場した“悪役”。劇場版では「懐玉・玉折」編にあたる五条と夏油の昔のやり取りが少しインサートされている。新宿の人混みの中で、「君は五条悟だから最強なのか? 最強だから五条悟なのか?」と問う夏油。そして周りを気にせず「茈」を撃とうとし、(他人を巻き込むからではなく)夏油を殺すことを躊躇って撃たなかった五条。あの一瞬だけでも、二人の関係性が読み取れる素晴らしいシーンだったが、「懐玉・玉折」はそんな彼らのあまりにも辛い“青い春”を映し出す。
そこで注目してほしいのは、夏油が呪術師から呪詛師に転向した、その離反の真相。そして、アニメ版では登場回数が少ない家入のキャラクター性や、“さしす”トリオの関係性そのものだ。劇場版での夏油はニヒルな笑みを浮かべて人を「猿」呼びしていた印象が強いが、「懐玉・玉折」編ではボンタンのようなズボンを履いたヤンキーみたいな出立ちなのに実は優しく、逆に五条の方がヤンキーよろしく気性の荒い性格で、大人になった時と大違い。そんなふうに“過去”と“いま”の違いを知ることができるが、それと同時に繋がりも感じられる。
「懐玉・玉折」で描かれる五条、そして夏油の物語は決して“過去”ではない。『呪術廻戦0』そして「渋谷事変」編に向かう“いま”であり、現在『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて展開されている“未来”なのだ。そこが最大の魅力であり、より『呪術廻戦0』そして五条悟という人物像を紐解くうえで必見のエピソードとなっている。作者の芥見下々は、よくアニメ放送回と本誌の展開をリンクさせることでも知られており、すでに最新話まで読みこんでいるファンにとって放送は見逃せない。