すべての“戦士”へ休息をもたらした『日曜の夜ぐらいは...』 カフェ大盛況で終幕

『日曜の夜ぐらいは...』は戦士の“休息”

 こんな日が来るなんて。サチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)の3人がコンビニの高級アイスを食べながら、自分たちにこれを食べる資格があるか話し合っている。これまではやるせない現実にぶつかった時の救済とせめてもの抵抗として半ばやけ食いしていたコンビニアイスだが、宝くじ当選という奇跡を引き寄せ、一緒に夢を叶えたいと思える仲間にも恵まれた自分にこれを食べていいのかと。カフェ「サンデイズ」がついにオープンを迎えた『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)最終話は、お腹の底から深くゆっくりとした深呼吸をさせてくれた。

日曜の夜ぐらいは...

 オープン初日、「いいカフェにしましょう。お客さんを幸せに、そしてわたしたちも……幸せになるぞ!」。円陣を組んで迷いなく掛け声を掛け、そしてみね(岡山天音)を含めた4人でドアを開けた先には、開店を待ち望むたくさんの人がそこにいてくれた。彼ら4人を引き合わせたラジオ番組のパーソナリティを務めるエレキコミックの2人を見つけ、なんだかこちらまで安心してしまった。かつては「絶対に絶対に幸せになろうね。不幸になっちゃダメだよ、絶対だよ」と言いながら円陣を組み一度は別れてしまった3人が、そして「こういうのダメなんだけどな」と嬉しいことを素直に喜べないサチが、こうやって多くの人に囲まれ待ち構えられている、祝福されている。そして、それを彼ら4人が臆することなく真っ直ぐに受け止められている。

 高校時代のサチには素直にその心配を受け取れず自ら遠ざけてしまった当時の親友・みちる(日比美思)からもカフェオープンのメッセージが寄せられていた。

日曜の夜ぐらいは...

 とてもリアルなのが、こうやって一つの夢を実現させ、カフェの売上も好調ながらも、サチも翔子も元々のファミレス勤務とタクシー運転手を続けており、みねも会社員との二足の草鞋を継続中だ。地面に足がめり込むくらいに堅実な、堅実にならざるを得なかった彼ららしい。そして一つ夢を叶えたからといって現実はそれで全て良しとはならない。解決できたこと、乗り越えられたことも多いけれど、もちろんままならないことは日常の至るところに転がっている。

 父・博嗣(尾美としのり)は母・邦子(和久井映見)に真正面から叱責されてさすがに改心したのか、サチから借りた3万円を毎月1000円ずつの30回払いで返すという。さらには、サチのバイト先のファミレスで博嗣まで働き始め、サチも上司・田所(橋本じゅん)も迷惑そうだが、なんだかんだバランスの良いおじさんコンビが出来上がった。

日曜の夜ぐらいは...

 おそらく視聴者にとっても最も気がかりだった若葉に付き纏う母親・まどか(矢田亜希子)だが、彼女もまた血も涙もない鬼ではなかったようだ。若葉考案の名前がやけに長いドリンクを初めて注文したのがまどかだった。その理由を「うまそうだから」と言うまどかの言葉に泣きそうになる若葉は、切っても切れない親子の縁のようなものを感じたのかもしれないし、抗えず憎んできたその繋がりを初めて少しだけ認められたのかもしれない。「泣く女は嫌いだ。あのばあちゃんの孫だろ。あんたは泣くな」と言うまどかなりのエールには、自身の母親・富士子(宮本信子)への感服や敬意も込められていたのだろう。「貯金の仕方重いし」と言って若葉から奪い取った通帳も返却して立ち去る。富士子がまどか撃退用に購入したスタンガンは、本来の用途を失い、意外な場面で役立った。

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