すべての“戦士”へ休息をもたらした『日曜の夜ぐらいは...』 カフェ大盛況で終幕

『日曜の夜ぐらいは...』は戦士の“休息”

 その一方、翔子の母親がカフェに訪れることはなかった。元通りにならないものだってあるし、一生分かり合えないことだってもちろんある。みねがカフェプロデューサーの賢太(川村壱馬/THE RAMPAGE)に言っていた通り、“みんないろいろある”のだ。それでも、翔子のタクシーにたまたま乗り合わせた女性客がお友達を伴ってカフェを訪れてくれたり、以前車内で号泣していた女性がカフェの日曜の深夜営業に吸い寄せられるようにやって来てくれたり、翔子がもたらし作用したことが確実に巡り廻っている。

日曜の夜ぐらいは...

 皆、誰かに聞いてほしいのかもしれない。自分の中で消化されていない過去の出来事やちょっとした傷、報われない日々や、平凡すぎるくらいに何も起きない日常について。そっと打ち明けて、誰かに笑い飛ばしてもらいたいのかもしれない。“優良ケンタ”こと賢太が“ラジオネーム:キャッチャーぷーくん”として浮かばれない過去の思い出をラジオ番組に投稿したように。理由までは明かさずとも、思わず見ず知らずの翔子が運転するタクシーの中で涙を堪え切れなくなった女性の乗客のように。眠れない日曜の夜にラジオにそっと束の間居場所を与えてもらえた彼らが、今度はカフェを通して眠れないでいる人たちに心地良い場所を提供している。

 そして最後にサチの想像が描かれたが、“こんなことがあったらいいのに”と無邪気に良いことばかり、しかも自分やその家族だけでなく周囲の大切な人の身に起きてほしいことまで次から次に出てくる彼女の様子に胸が熱くなる。幸せって少し先の未来に“希望”を持てることなのかもしれない。そんな想像が途絶えることなくできることなのかもしれない。生まれ変わっても私でいいと思えるくらいに。

日曜の夜ぐらいは...

  “みんな傷だらけで戦ってる戦士”みたいな今、だからこそ、「どんな立場にある人にも辛さはあるわけで、どっちが辛いかとか、そんなの意味ない」し「辛さに資格も順列もない」のだから、少しでもその辛さを安心して吐き出せる場所が、瞬間が誰の心の中にもありますように。辛さ自体がなくなることはなかなか難しくとも、サチが言う通り“せめて日曜の夜ぐらいはみんなが一度深呼吸できますように”。

■配信情報
『日曜の夜ぐらいは...』
TVer、TELASAにて配信中
出演:清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠、岡山天音、川村壱馬(THE RAMPAGE)、やついいちろう(エレキコミック)、今立進(エレキコミック)、椿鬼奴、飛永翼(ラバーガール)、橋本じゅん、和久井映見、宮本信子ほか
脚本:岡田惠和
演出:新城毅彦、朝比奈陽子、高橋由妃、中村圭良
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー    山崎宏太、山口正紘、郷田悠(FCC)、浅野澄美(FCC)
制作協力:FCC
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/drama_22_abctv/
公式Twitter:@nichigura_abc
公式Instagram:@nichigura_abc

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