『日曜の夜ぐらいは...』に込められた“労り”への願い 現代人の日常に寄り添う岡田惠和脚本

『日曜の夜ぐらいは...』“労り”への願い

 日常を丁寧に描写するドラマ。『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の第1話はそんな印象だった。

 サチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)のどうにもままならない生活を丁寧に切り取った映像。言葉にしていなくても、それぞれが自分の人生に満足していないことがわかる表情。そして、サチは地元のファミレス、翔子はタクシー運転手、若葉は地元のちくわぶ工場で働いており、生活の変化の幅は小さく、どこにでもいるような人物が描かれていることが印象的だった。すごく不幸なわけではないが、幸せなわけでもない。現実を生きる私たちにも、思い当たる節がある人生を送っている主人公たちだ。

 本作は、岡田惠和が脚本を担当している。2020年に放送された『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)、2022年に放送された『ファイトソング』(TBS系)などの岡田惠和脚本作品と比べると、より現代人の細かな感情を汲み取った作品になっていると感じた。『日曜の夜ぐらいは...』では、人生に対するどうにも言葉にしにくい想いが繊細に描かれ、より日常に寄り添ってくれる作品になっている。

 2020年に放送された『姉ちゃんの恋人』は、交通事故で両親を亡くし、残された3人の弟たちを養う桃子(有村架純)が、職場であるホームセンターで出会った前科がある真人(林遣都)と恋に落ちる話だ。困難な状況にも強く立ち向かう姿がわかりやすく描かれ、女手ひとつで弟3人を養う“肝っ玉姉ちゃん”という強い女性が主人公だ。

岡田惠和は“小さな幸せ”を大事に育てる 『泣くな、はらちゃん』と重なる『姉ちゃんの恋人』

「コロナを描くか・描かないか」という点で大きく二分される2020年のドラマ。その中で、何らかのウイルスの脅威があったらしい、現在…

 2022年に放送された『ファイトソング』は、児童養護施設で育った空手の日本代表を目指す花枝(清原果耶)が、交通事故に遭い、後遺症で耳が聞こえなくなる可能性があることを告げられる。売れないミュージシャンの春樹(間宮祥太朗)と、育ちも置かれた状況も特殊な女性が、切ない期間限定の恋に落ちていく。

 2作ともにわかりやすい困難な状況が描かれ、その状況のなかで運命的に出会った男性と恋に落ちていく姿が描かれている。懸命に生きる姿、恋に落ちた後の切ない表情。視聴者はラブストーリーの行く末を見守る傍観者として、ドラマを楽しむことができた。

 一方『日曜の夜ぐらいは...』では、過去の2作とは違った女性の人生が描かれている。サチは車椅子で生活する母と共に暮らし、アルバイトで生計を立てている。翔子はタクシーの運転手として働いており、家族とはほぼ縁が切れ、友人もいない。若葉は母親のせいで地元では肩身の狭い思いをし、社長から嫌がらせを受けながら工場で働いている。主人公の3人は、身動きもとれないような困難な状況に陥っているわけでも、そこに立ち向かおうとしているわけでもない。ただ不幸でない代わりに、幸せでもない。自分の人生に対して感情を動かすことをやめて、満足できない日常を諦めたように生きている。

 そして物語は、3人がラジオ番組のオフ会ツアーを通して友人となり、宝くじ当選により3000万円を手にするところから動き出す。これまでの2作のように、男性と恋に落ちていく様が描かれるわけではない。友情という関係を結ぶことで3人の人生が好転し、希望を感じる物語になっていく。

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