『日曜の夜ぐらいは...』拡張家族で自分らしさを取り戻す それぞれが“守りたい存在”に
優しくされると泣きそうになる。誰かから自分に向けられる無条件の優しさに不意に包み込まれると、思わず込み上げるものを抑えられなくなってしまう。誰にも見透かされまいとしてきた恐怖心や我慢を誰かが見過ごさず代わりに労ってくれると、急に張り詰めていた気持ちがフッと緩み安堵に包まれる。そんな連鎖が描かれた『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第9話。
血縁関係にかかわらない“拡張家族”は素敵で力強い。4階にサチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)の3人、3階にみね(岡山天音)、そして1階にサチの母・邦子(和久井映見)と若葉の祖母・富士子(宮本信子)が住まう団地生活もすっかり板についてきた。住まいは変わらないのに、そこには自然と生きていくのに大切なお喋りが溢れている。“ここしかない”という閉塞感がなくなり、なんだか流動的で風通しが良い。互いに所属するコミュニティが増え、依存先が分散されているというのは、なんと健全で頼もしいことだろう。依存先=逃げ場とも言い換えられる。そのためか邦子の口癖だったサチへの「ごめんね」が口をついて出ることもなくなった。どんなに大切に想い合っている相手とだって、四六時中一緒にいたならば、互いの重さに耐えられなくなってしまう時があるものだ。
そして、自分のことだとつい後回しにしてしまったり、傷ついていない振りをしてしまう彼らそれぞれが、大切な人のためとなると途端に“目的”がはっきり明確になり「守りたい」と強くなれる。諦めないで怒ることができる。それはまるで、当選金を山分けするとなるとお金を使うことさえままならなかった彼らが、若葉からの「一緒に生きていきたい、一緒に使いたい」というまるで“プロポーズ”かのような言葉を受けて、水を得た魚のように輝き出し急に目的や夢を持つことが怖くなくなったように。「みんな良い子」と邦子が至極当然のように口に出した通り、本来の3人らしさがどんどん引き出されていくのがたまらなく嬉しい。
そして、大切なものを守るべく、サチにとってずっと心に引っかかる存在である父・博嗣(尾美としのり)と面と向かって対峙することにした邦子。邦子の手が怒りに震えているのに気がついた富士子は、ヘルパーの振りをしながら邦子のその怒りをそっと肯定し“大丈夫、間違っていない”と背中を押した。解放されない強い感情はやがて心の奥底に膿のように沈んでいってしまい淀んでしまう。はっきりと“大切なもの”をこの手で守りたいという邦子の決意や覚悟に、少しはあのダメ父の目が覚めるといいのだが……。きっと富士子にとっては、サチのために話の通じない相手に臨む邦子の姿が、あまりに守銭奴過ぎるまどか(矢田亜希子)に向き合う自分自身と重なったのだろう。富士子が「守らないとな、自分の手で」と語気を強めて言っていた通り、おそらくまどか対策用にこっそり購入したのだろうスタンガンの出番がないことを祈るばかりだ。