森七菜×奥平大兼、10代での劣等感や孤独を語る “誰にも言えない”悩みと向き合うには

森七菜×奥平大兼が語る劣等感と孤独

 眠りたくても眠れない。眠れないまま朝を迎えることが怖い。そうした不眠症の悩みを抱えた高校生男女2人が出会い、居場所を見つけていく様子を描いた漫画『君は放課後インソムニア』が実写映画化された。

  石川県七尾市を舞台に、不眠症に悩む女子高生・曲伊咲を森七菜、同じく不眠症の高校生・中見丸太(がんた)を奥平大兼がそれぞれ演じる。役と年齢的に近い森と奥平は、本作をどのように解釈して役作りに臨んだのか。原作に対しての想いから、“誰にも言えない悩み”について、それぞれの等身大の思いまでを聞いた。

奥平大兼「(森七菜は)モチベーションをくれる大事な存在」

森七菜
森七菜

ーーそれぞれ演じられた伊咲と丸太のキャラクター像に共通点はありますか?

森七菜(以下、森):実はあまりないんです。演じながら「伊咲ほど“強い子”っているのかな?」と、ずっと考えていたくらいです。私にはきっとできないことばかり成し遂げる子だから、パワーを使って演じていました。

ーーどのように役作りをしていったのですか?

森:本当に強い子だから「カッコいいな」とはずっと思っていました。自分の中でちゃんと言葉にできるまで掴めていない部分もどこかでありつつ、伊咲への憧れの中でお芝居してた感じが少しあります。私にとって伊咲は伊咲自身として存在していてほしかったし、私とは全く別の人間として存在していてほしかったので、漫画の中での所作や仕草を一つずつ大事に拾っていきながら演じました。

森七菜、奥平大兼

ーー森さんは以前から原作ファンとのことですが、撮影にあたりもう一度読み込まれたのですか?

森:そうですね。でも、どうしても漫画を読みすぎてしまうとものまねになってしまいます。そうならないように、ちゃんと今を生きている人として認識してもらえるように意識していて、撮影に近づくと漫画自体は読まなくなりました。

ーー原作で特に好きなポイントを教えてください。

森:全体的な話になってしまうのですが、高校生という大人と子どもの狭間にあって、周りから「大人になれ」と言われたり「生意気だ」と言われたり、そんな狭間の中で生きるキラキラしたところと、ちょっとジメジメしたところのバランスがすごく好きなんです。決して嘘ではない、劇的ではないからこそ愛せる物語が好きなので、もうドンピシャでした。初めて読んだときからすぐに好きになりました。「もし映像になるとしたらどういうふうになるんだろう」と当時からワクワクを抱いていて。今回その夢が叶うとは思っていなかったので、嬉しかったです。

森七菜

ーー奥平さんは役との共通点についてはどのように考えていますか?

奥平(奥平大兼):まず、丸太が“16歳”であることを強く感じました。この年齢だからこその“周りに対する考え方”とか“物事の受け止め方”があると思います。僕自身もそういう時期があって、周りにムカついたり不満を持ったりしたこともあったのですが、丸太にもそういうものが多少なりともあったんだろうと思っていました。実際には丸太がそうなってしまう原因は少し違うのですが、そういうときに出てしまう態度とか、分かるところがありました。

奥平大兼
奥平大兼

ーー役の年齢ならではの共通する感覚があったんですね。

奥平:あと、お芝居をしていて、丸太として伊咲がすごく眩しく見える瞬間が本当にたくさんありました。たぶん丸太の考え方や行動が変わるきっかけの中に伊咲がいたと思うんです。なので、その伊咲の魅力を観ている人に「どうやったらわかってもらえるんだろう?」と考えていました。丸太目線で“伊咲がどう見えるか”の描写が何回かあるのですが、丸太が自分の気持ちに素直になったときに伊咲の良さが出てくるのかなと個人的に思っていました。別に特別伊咲のことを目立たせるようにしたわけではないですが、伊咲から言われたことやしてくれたことを大事にしようっていうのは、丸太としても、自分としても心がけていました。

ーー奥平さんは今回の出演が決まってから原作を読まれたとのことですが、どのように感じられましたか?

奥平:ちょっとしたキラキラな描写もあるけど、めちゃくちゃキラキラしてるわけではないところが好きでした。漫画って、いわゆる“共感できる”と言われるような作品が多いじゃないですか。派手なバトル漫画でも、心情とかそういうことについては共感できる部分が多い。でも、『君は放課後インソムニア』はそういうものとは少し違っているんです。どちらかといえば、人に言うのが恥ずかしいことや、自分が表に出すのは恥ずかしいようなことそのものに勇気をくれるような作品だなと、最初に思いました。演じているうちに理解が深まってきたとは思うのですが、そういうことが感じられる作品ってあまり多くないですし、大切なものだと感じています。

ーー心に刺さったんですね。

奥平:そうですね。でも本当の最初は「白丸先輩かわいい」とかそういうことしか思ってなかったのですが(笑)。だんだんとそういうふうに思っていきました。

奥平大兼

ーー作中ではお互いがお互いにとって特別な存在で、不眠症で眠れなかったのに相手がいるから眠れるようになる、というような関係性でした。今回森さんと奥平さんは、撮影中はそれぞれどのような関係性だったのでしょうか?

森:撮影は1カ月ほど地方で行われたのですが、それだけ一緒にいるとやっぱり仲良くなるじゃないですか。でも仲良くなった気はしているんですけど、どこかまだ隠してるというか、この1カ月で突き詰められてない何かがあるんだろうな、という感覚があります。

奥平:どういうときにそういうふうに思うの?(笑)

森:何考えてるかわからないときが多いかな。ミステリアスですよね。すごく黙ってるなと思ったら、急によく喋ったりする(笑)。

奥平:めっちゃ怖いじゃん(笑)。でも、気分屋だからっていうのもあるかな。何だろう、喋りたいときに喋るし、なんでもしたいときにする性格だからなのかもしれない。

森:でもちゃんと自分の世界がある人だなと思います。一緒に1カ月撮影していて、いつでも常に新鮮というか楽しかったです。

『君は放課後インソムニア』

ーー奥平さんにとって森さんはどんな方ですか?

奥平:この作品に限らずの話にはなるのですが、初めて会ったのが日本アカデミー賞のときだったんです。同年代の人が多く参加している中で、唯一共演したのが森さんでした。それに一緒にお芝居していて楽しい方です。なので俺も頑張ろうっていうふうに思える、モチベーションをくれる大事な存在だと思っています。

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