『風間公親-教場0-』染谷将太が抱える問題の生々しさ “5人目”が与える強烈なインパクト
素行不良と被疑者への暴力が原因となって、所轄署から“風間道場”へと送り込まれた中込兼児(染谷将太)。これまで風間道場に入ってきた4人の新人刑事たちと同様、なんらかの問題や過去を抱えているとはいえ、周囲への攻撃的な態度とどこか古くさい刑事像(これは中込の自宅の本棚にあった『刑事コロンボ』などの推理ものに影響されたものだと推測できる)のインパクトは抜きん出ており、“5人目”にしては想定外の強烈な印象を受ける。
6月5日に放送された『風間公親-教場0-』(フジテレビ系)第9話。今回の事件は大雨の深夜、とある跨線橋の上で起こる。3カ月前にも通り魔事件が起きたというその場所で男が刺殺され、身元を特定できる顔や指、口の中などがライターのオイルで焼かれていた。臨場した中込は、風間(木村拓哉)に言われるまま、犯人が通り魔だと仮定して被害者を刺す動作を試してみるのだが、すぐに違和感に気が付く。なぜ被害者の身元を隠す必要があったのか。やがて被害者の身元がかつて強盗事件を起こして服役していた加茂田(金井勇太)であると判明。中込と風間は、その強盗事件の被害者の恋人であった篠木(早見あかり)の元を訪ねるのである。
ドラマ序盤で、幸葉(堀田真由)と子どもじみた衝突を見せる中込。ストレスで胃が痛くなったという幸葉に付き添うようにして病院に行った中込は、診察室の壁に貼られたカプセル内視鏡に注目する。それがそのまま伏線として機能し、事件解決の糸口となる点はシンプルで申しぶんのない展開であろう。それでも篠木が加茂田を刺したはずみで加茂田の体内にあったカプセル内視鏡が飛び出し、それが篠木の姿をはっきりと記録していた(しかもデータを記録する端末は跨線橋から貨物列車の荷台に落下し、一度広島まで運ばれた後に現場近くの操車場に戻ってくる)という結末は、いくらなんでも突飛すぎやしないだろうか。
もっともそれは、どんなに緻密に練られた犯罪計画であっても思いも寄らないかたちで綻びが生じてしまうということを示すための流れかもしれない。そう考えるにしても、篠木の犯行の一連はかなり杜撰に見える。とはいえ彼女がいささか空虚な“法律のよろい”をまとって中込に食ってかかる点は、中込の持つ暴力性と対になるものとして、どちらも完璧になり得ない無力なものであると示すことになっていると見える。両者の攻防の巧さがあっただけに、やはりすべて吹き飛ばしてしまうカプセル内視鏡の破壊力は、中込のキャラクター以上だ。
この突飛な事件の顛末と真の意味で“対の関係”になりうるのは、もしかしたら中込自身が抱えている“現在”と“過去”の生々しさかもしれない。認知症を抱え、息子である自分のことさえ覚えていない母親と、その介護に辟易とする妻との間で板挟みにされる“現在”と、かつて子どもの頃に誘拐事件の被害者だったという“過去”。前述の病院のシーンで中込は、待合室で注射を怖がる子どもの姿を見て、“過去”がフラッシュバックする。一見するとインパクト重視の中込という新人刑事。なんだかんだで終盤にふさわしい重さをこのドラマに与えてくれる存在になりそうだ。
※記事初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
■放送情報
フジテレビ開局65周年特別企画『風間公親-教場0-』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:木村拓哉、赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太ほか
原作:長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』『教場X 刑事指導官・風間公親』(小学館)
脚本:君塚良一
演出・プロデュース:中江功
プロデュース:渡辺恒也、宋ハナ
音楽:佐藤直紀
主題歌:Uru「心得」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビ
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