『パン恋』の恋愛観は現代に何を問いかけたのか? “本音”が垣間見える貴重な一作に

『パン恋』恋愛の本音が垣間見える一作に

 動物たちの求愛行動から“恋愛”のヒントを学ぶ異色(?)のラブコメ『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ系/以下、『パン恋』)が、いよいよ最終回を迎える。原作は瀬那和章の同名小説で、脚本は月9『ヤンドク!』(フジテレビ系)も手がける根本ノンジ。2026年冬クールは事件ものやサスペンスが目立つなか、『パン恋』のような肩の力を抜いて楽しめるポップなラブコメは、のんびりしたい週末にぴったり。カジュアルに他人の恋バナを聞けなくなった昨今だからこそ、恋愛の本音が垣間見える貴重な一本なのかもしれない。

 瀬那和章による同名小説をドラマ化した本作は、仕事、恋愛、人間関係など、現代人が抱える悩みを“動物の求愛行動”から解き明かし、幸せになるヒントを描く“アカデミック・ラブコメディ”。

 生活情報誌『リクラ』の編集者・一葉(上白石萌歌)は、突然芸能界から姿を消したカリスマモデル・灰沢アリア(シシド・カフカ)の恋愛コラム企画に携わることになる。学生時代からアリアのファンだった一葉は、胸を躍らせながら企画を進めるものの、当のアリアは執筆を拒否。その代わりに、一葉はゴーストライターとして、灰沢アリア名義でコラムを書くよう本人から命じられる。

 コラムの独自性を模索する一葉が訪れたのは、恋愛のスペシャリストとして紹介された大学准教授・椎堂(生田斗真)の研究室。だが椎堂の専門は、動物の求愛行動であり、人間にはまったく興味がない超変わり者だった! ちなみに、タイトルにも登場するパンダは、発情期が一年のうちわずか数日しかないことから、研究者の間では長らく“恋愛不適合”の動物と呼ばれていたそうだ。

 ヒロインが恋愛指南を受けるドラマは、これまでもたびたび作られてきた。ハイスペの中谷美紀が毒舌な藤木直人からシビアな恋愛論を突きつけられる『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(2016年/TBS系)、伊勢谷友介演じるカリスマ編集長のもとで、波瑠が婚活体験記コラムを綴る『サバイバル・ウェディング』(2018年/日本テレビ系)。

 あらゆる生き方が肯定されつつある昨今、恋愛指南ドラマは減ってきたようにも思えるが、2024年にはクズな元彼の幽霊に婚活を見守られる『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)があった。さらに福田麻貴の出演作でいえば、現在放送中の『婚活バトルフィールド37』(テレビ東京系)も、若い頃からそれなりにモテた主人公に、婚活ベテラン勢の同僚(福田)が現代の婚活事情を叩き込むドラマだ。

 これらの作品と比べると、大学が舞台という設定も相まって、『パン恋』にはアカデミックな雰囲気が漂う。動物の求愛行動という具体例から、ロジカルに恋愛を理論立てていく様子には、どこかビジネス書のような趣を感じることもある。自己啓発本やノウハウ本が人気を集める、現代ならではの空気感も関係しているかもしれない。

 そう、恋愛ドラマとは、とりわけ時代を映すジャンルなのである! 『パン恋』を通してあらためて考えさせられたのは、私たちが“恋愛”ひとつ取っても、多種多様な悩みを抱えているということだ。

 たとえば、第2話の「マッチングアプリに登録するとたくさん連絡は来るものの、しばらくやり取りをすると自然消滅してしまう」や、第6話の「結婚を考えている彼女に推し活をしていることを打ち明けられない」といった悩みは、まさに現代ならではのものだろう。パートナーがいても順風満帆とは限らない。第5話では「優しくて気が合う彼氏だけど、激しい感情が湧かない」という悩みも寄せられた。年齢が一回り違う年下の恋人との結婚を反対された一葉の姉・一花(筧美和子)や、同性のパートナーとの関係を周囲に打ち明けられずに葛藤する環希(仁村紗和)の弟・謙太(吉田晴登)のエピソードなど、“両思いのその先”を描いていたことも象徴的だった。これだけ悩みも多様で複雑になってしまっているのだから、シンプルで普遍的な動物たちの求愛行動に、ヒントを求めたくなる気持ちもわかる。

 そして本作を彩ったのは、実力派キャストたちによるコミカルな掛け合いだ。なかでも、トリッキーな生田斗真の変化球を絶妙なタイミングで受け止める上白石萌歌の“レシーバー”としての巧さが際立っていた。序盤はゴーストライターを押し付けられ、元カレの真樹(三浦獠太)にも寄生されたりと、されるがままだった一葉だが、アリアの威を借りながらも、動物たちの求愛行動に感銘を受け、コラムを通して自らの言葉を獲得していくことで、ひとりの人間として立ち上がっていく姿も印象的だった。

 私たちに悩みは尽きないが、悩むこともまた人間ならではの営みなのだろう。それならば、悩み、ぶつかり合い、葛藤した先に得られるものも私たちだけの特権なのかもしれない。最終回では、いよいよ『リクラ』の休刊が目前に迫る。ここまで全力で取り組んできた仕事に、そして椎堂との関係に、一葉はどんな答えを見出すのだろうか。

『パンダより恋が苦手な私たち』の画像

パンダより恋が苦手な私たち

恋が苦手とされるパンダなど動物たちは、実は限られたチャンスを活かす「恋愛上級者」だった。動物の求愛行動から、常識に囚われる現代人がシンプルに幸せになるヒントを解き明かす。

■放送情報
『パンダより恋が苦手な私たち』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00~放送
出演:上白石萌歌、生田斗真、シシド・カフカ、仁村紗和、柄本時生、三浦獠太、片岡凜、佐々木美玲、佐々木史帆、髙松アロハ(超特急)、平山祐介、宮澤エマ、小雪、筧美和子
原作:瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
演出:鈴木勇馬、松田健斗、苗代祐史
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:藤森真実、白石香織(AX-ON)
音楽:MAYUKO
主題歌:生田斗真「スーパーロマンス」(Warner Music Japan)
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/pankoi/
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