『星降る夜に』が描いた“死と隣り合わせの生” 鈴と一星が抱きしめた人生の痛み

『星降る夜に』が描く“死と隣り合わせの生”

「星って生と死の境にあるような、生と死をつなげてるような感じがする。俺たちが見ているあの星のいくつかは今はもう存在しない。何万年も前に放った光がやっと今、地球に届いているから」

 鈴(吉高由里子)と夜空を見上げながら一星(北村匠海)が言った言葉だが、確かに亡くなった愛しい人のことを「お星さまになった」なんていう表現がある。

 『星降る夜に』(テレビ朝日系)では、“死と隣り合わせの生”というものが日常生活の延長として、丁寧に誠実にありありと描かれた。それは“命の始まり”に居合わせる産婦人科医の鈴とその終わりに立ち会う遺品整理士の一星という職業設定によるところもあるのはもちろんだ。しかし、そもそも2人共に人や事象を“正しさ”や“幸不幸”で簡単にラベリングして断罪するようなところがないことも影響しているのではないだろうか。だからこそ日常に転がるリアルな痛みや息苦しさ、違和感が本作の中では一切無視されず掬い上げられる。そして、“生きていると誰しもいろいろあるし、みんな様々な事情を抱えながらそれでも生きている”ということに常に向き合わされる作品だった。

 一星の耳が聞こえないことが何か鈴との関係を深める上で大きな障壁として描かれることもなかった。一星はむしろ目に見えない悩みを抱えている人の方が自分より大変だと事もなげに言うし、深夜(ディーン・フジオカ)の鈴への特別な想いはそのまま恋愛感情とはならない。年齢差もかなりある一星、鈴、深夜は信頼し合って対等に繋がっている。3人はまさに千明(水野美紀)が言う通り「太陽と月と地球みたいな関係」だ。一列に並んだり陰になったり、欠けたり満ちたり、近づいたり離れたりしながら3つは絶妙なバランス感を保ち回り続ける。記号的な名前のつかない関係性、簡単に言葉で規定してしまえない関係こそ人生を豊かに、多面的にしてくれるものだ。鈴が深夜に言った「遠くにいてもそばにいて。深夜先生が辛い時私も飛んでいくから」があまりに素敵だった。

 ラブストーリーとは基本的には主人公の2人が様々な障害を乗り越えながら、くっつきそうになったかと思えばまたすれ違い離れてしまい……という経緯が描かれるわけだが、本作ではかなり安心感を持って鈴と一星の2人を見守ることができた。星降る夜に突然のシャッター音とキスから始まった2人の出会いもその後の再会も必然で、そんな2人が離れてしまうかもしれない不安など1ミリも過ぎることはなかった。ただ2人が心通わせていく様を近くで見ていたい、そしてマロニエ産婦人科医院やポラリスのみんなに会いたい、そんな気持ちで本作に招き入れられ、鑑賞中はなんだか息がしやすくなる感覚をずっと味わっていた。

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