『クジャクのダンス』は松山ケンイチの“考察”も楽しかった 作り手とSNSの距離感を考える

 3月28日に最終回を迎えたドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)は、ミステリとしての構成、原作漫画からの脚色の巧みさが相まって、大好評のうちに終了した。

 また、作品外でも注目されていたのが、主要キャラを演じる松山ケンイチのSNS投稿だ。作中で描かれる殺人事件の犯人候補を、アンケート機能などを用いて視聴者を巻き込みながら考察を盛り上げていた。多くの謎と伏線がちりばめられている本作を楽しむうえで、松山の発信は相乗効果を産んだ。

 この松山の振る舞いがエンタメとして多くの視聴者に受け入れられたのはなぜなのか。また、作り手がSNSで視聴者に介入するうえでの適切な距離感はどの程度なのか。ドラマライターの明日菜子と、アニメライターのストロングユニバースに話を聞いた。

「松山さんのSNSの使い方は本当に秀逸だったと思います。いち発信者として勉強になりました。『クジャクのダンス』は撮影中は出演者の方にも黒幕の正体が明かされていなかったからこそ、松山さんも視聴者と同じ目線でいたのがとても面白かったです」

松山ケンイチ公式X(旧Twitter)より

 松山の投稿がエンタメとして受け入れられた理由は、すべてを「話しすぎない」点にあるという。

「松山さんの投稿は、作品との距離の取り方がとても上手い。あくまでも作品を楽しんでもらうための補足であって、深刻なネタバレを絶妙に回避しているところがポイントだと思います。『松山さんが説明してくれるから本編は観なくていいや』ではなく、あくまでも『ドラマを観たい』と思わせてくれる、視聴欲のようなものをかき立てられました。もう一つは、視聴者との一体感が生まれていたこと。2019年の『あなたの番です』(日本テレビ系)以降、テレビドラマとSNSの親和性はどんどん高まっています。配信ドラマが話題になることも増えましたが、テレビドラマは同じ時間を他人と共有できることが強み。メインキャストである松山さんとその感覚を味わえるのは、とても嬉しいですし、なによりも、ドラマはリアルタイムで観るのが一番楽しいんだということを改めて気づかせてくれました。

 逆に、製作陣が作品の情報を明かしすぎることには功罪があるという。

「ただ、誰もが松山さんと同じことをすればいいというわけではなく、なかには『このSNS担当者、しゃべりすぎでは?』と思うこともなくはない。朝ドラの場合、本放送は朝8時からの枠ですが、視聴者のライフスタイルによって、視聴する時間もさまざま。家に帰って見ようと思っていたら、作り手のポストでうっかりネタバレを踏んだこともあり、SNSを投稿するタイミングも難しいだろうなと思います」

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