『あんぱん』旅立つ登美子は何を思うのか? 松嶋菜々子の演技が光る柳井家の“閉塞感”

『あんぱん』旅立つ登美子は何を思うのか?

 「正義は逆転する」という言葉から始まった連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)も第1週目の折り返し。4月2日に放送された第3話では、嵩(木村優来)の母・登美子(松嶋菜々子)との突然の別れが描かれた。

 嵩にとって、家族4人で食べた東京銀座・美村屋のあんぱんの味は、家族の象徴であり、幸福だった頃の思い出。しかし、まだ幼かった弟・千尋(平山正剛)はそのことを覚えていない。嵩にとって千尋は叔父の家の子供ではなく、血を分けた弟だ。外で遊びたいと言われれば、嵩自身はそこまで楽しくない体重のバランスの悪いシーソー遊びだって提案する。

 そんな2人の元にのぶ(永瀬ゆずな)が乱入し、3人で遊んでいると登美子が現れる。登美子は、千尋を「大切なおぼっちゃん」と呼び、千尋は登美子を「おばちゃん」と呼ぶ。それに対し、登美子は「お家の人が心配するから帰りましょうね」と声をかける。登美子からすれば、幼い千尋を戸惑わせないために、叔母さんのフリをするのは仕方のないことなのだろう。しかし、千尋は登美子の「大切な息子」であり、登美子自身が「お家の人」だったことを考えると、登美子にとって柳井家が閉塞感しかない環境であることは想像に難くない。

 目の前で見ている嵩も「弟と遊ぶのはアホかな」と、やりきれない思いを抱えている様子。このセリフは、嵩がやっともらした本心のように聞こえた。嵩には、登美子、千尋と一緒に父・清(二宮和也)の死を悲しむ時間がまだ必要なように見える。

 嵩は、慣れない環境で暮らす自分を慰めるように絵を描く。伯父の寛(竹野内豊)は、美村屋の前で家族4人であんぱんを食べている絵を見て、「こじゃんと(たくさん)絵を描け。好きなものはやればやるば、こじゃんと(たくさん)好きになる」と声をかける。しかし、その絵は登美子にとっては戻ってこない幸福の象徴。「でももう前を向かなきゃね」と、ある決心の後押しをさせてしまう。

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